恋するリバウンド 10 | 可愛い君に愛を囁きたい

ただココロにだけは見えていた。

奇跡の瞬間の真実のすべてを。

「ねえ、あれって隼人じゃない?」

最初、みんなにも見えてると思ってた。

「ゴール下に立ったるでしょ」

「何言ってるのよ。隼人は病院じゃない」

それは分かってる。

乃亜には見えてないのだ。

いや、誰にも隼人の姿は見えてないのだ。

でもココロには見えるのだ。

そう、あれは事故の起こった日からだ。

試合のたびに幽霊選手がいる。

幽霊部員の隼人が幽霊になって、試合に出ている。

相手のゴール下にいつも立っている。

そして隆平の遠投のすべてをリバウンド。

ダンクシュートでゴールを決めていた。


幽霊となった隼人の姿が見えてないみんなには、

隆平のはなったシュートは魔球に見える。

曲がり方が不自然でも、受け入れてしまう。

どんな3ポイントシュートだって決まってしまう。

隆平の投げたボールは、

すべてがまるで意志を持っているかのようにゴールする。

成功率100%の3ポイントシュート。

いつしか隆平は有名になっていった。

そしてそこそこイケメンな隆平は

学園のヒーローになっていた。

女子たちも隆平を羨望のまなざしで見るようになっていた。

なんということだ。

ブサイクな隼人だと誰も応援しないというのに。

隆平のシュートが決まるたびに、

悲鳴にも似た声援が起きている。

隆平はその声援にまんざらでもない顔をしてる。

乃亜はそれに嫉妬するわけじゃなく、

自分のことのように喜んでいる。

そして県大会で初勝利。

それをきっかけにチームの快進撃が始まった。

今度の恋は乃亜にしては珍しく長続きしている。

一人、浮き気味で、「女、松岡修造」とあだ名をつけられても、

くじけることなく隆平を応援し続けていた。

隆平の変貌はすべて恋の力だとみんなは思った。

隆平が変貌したのは乃亜と付き合い始めてからだ。

みんながそう囁き始め、乃亜はご機嫌だった。

これこそが乃亜の恋の長続きの原因だろう。

隆平が活躍すればするほど、乃亜の評価も上がってる。

それに乃亜はまんざらでもない表情をしてる。

確かに認めるよ、乃亜の恋はいつだって一生懸命だ。

周りを振り回しても、貫き通す姿は賞賛ものだ。

だからこそ今度こそ長続きしてほしいとココロは思った。