タイトル「森ガールと盛りあガール」 52 | 可愛い君に愛を囁きたい

「でもさ、思うんだよ。プロ目指すなら、やっぱ日本語で歌わないと」

熱く語るメンバー。

「日本語で歌えば、いけるって」

「大樹がプロになれたんだぜ。俺たちだって」

 三人とも目をギラギラさせていた。

 そのギラギラが音楽に向ける熱い瞳なのか、モテ期の訪れを期待してのギラギラなのか、見分けがつかなかった。

「嫌よ」

 桃花はいきなり出鼻を挫いた。

どうしてという失望の顔。

熱いギラギラが、明らかに氷結するかのような冷たく痛い空気に変わった。

しばらくの沈黙の後、長政がもう一度目を輝かせ、熱い情熱をぶつけてきた。

「分かった。英語の歌詞でいいから、とにかくもう一度バンドやろうぜ」

「無理だって」

 桃花はそう言うしかなかった。

「無理なもんか、プロ目指そうぜ」

「大樹が歌ってるのって、アコースティックじゃない」

とっさに桃花は言い訳を探した。

「だからうけたんだって」

「絶対、違うって」

 長政の熱気が押し寄せてくる。

「ロック系のコンテストなら、グランプリじゃなくても、プロの目に留まるかもしれないじゃないか」

「お前のギター、イケてるって」

 政宗は同じギタリストとして、本気で思っていた。

 桃花はギターがかなりうまい。

「それにさ、女子ってーのが、武器になるって」

 元就がフォローした。

 しかしそれは桃花へのアシストだった。

桃花は絶対に嫌だった。

ヘビメタ姿をルカに見られたくなかったのだ。

それは例え、売れると分かっていても嫌だった。

売れる売れないの問題じゃないのだ、桃花にとって一番大切なのはルカなのだ。

「女子が武器になるって嫌な言いかた」

 桃花はわざと冷たく罵った。

女の武器って、涙だったり、体だったり、まあ、ひどい言い草だ。

「私も軽く見られたもんね」

「そういう意味じゃないって、ごめんよ、謝るよ」