「でもさ、思うんだよ。プロ目指すなら、やっぱ日本語で歌わないと」
熱く語るメンバー。
「日本語で歌えば、いけるって」
「大樹がプロになれたんだぜ。俺たちだって」
三人とも目をギラギラさせていた。
そのギラギラが音楽に向ける熱い瞳なのか、モテ期の訪れを期待してのギラギラなのか、見分けがつかなかった。
「嫌よ」
桃花はいきなり出鼻を挫いた。
どうしてという失望の顔。
熱いギラギラが、明らかに氷結するかのような冷たく痛い空気に変わった。
しばらくの沈黙の後、長政がもう一度目を輝かせ、熱い情熱をぶつけてきた。
「分かった。英語の歌詞でいいから、とにかくもう一度バンドやろうぜ」
「無理だって」
桃花はそう言うしかなかった。
「無理なもんか、プロ目指そうぜ」
「大樹が歌ってるのって、アコースティックじゃない」
とっさに桃花は言い訳を探した。
「だからうけたんだって」
「絶対、違うって」
長政の熱気が押し寄せてくる。
「ロック系のコンテストなら、グランプリじゃなくても、プロの目に留まるかもしれないじゃないか」
「お前のギター、イケてるって」
政宗は同じギタリストとして、本気で思っていた。
桃花はギターがかなりうまい。
「それにさ、女子ってーのが、武器になるって」
元就がフォローした。
しかしそれは桃花へのアシストだった。
桃花は絶対に嫌だった。
ヘビメタ姿をルカに見られたくなかったのだ。
それは例え、売れると分かっていても嫌だった。
売れる売れないの問題じゃないのだ、桃花にとって一番大切なのはルカなのだ。
「女子が武器になるって嫌な言いかた」
桃花はわざと冷たく罵った。
女の武器って、涙だったり、体だったり、まあ、ひどい言い草だ。
「私も軽く見られたもんね」
「そういう意味じゃないって、ごめんよ、謝るよ」