両親の恋愛話を聞くのは初めてである。
「お互い同じ大学だったし、
いつも一緒だったから、
どこからが恋愛か線が引けなくて、
まあ……」
小春は当時のことを思い出しながら、
物想いに耽っていた。
「相手の都合で
自分を押し殺したりしなきゃいけなかったり、
いろいろ我慢したり、
面倒で面倒で、嫌になったりしたわけ」
母ならそうだろう。
きっと父の方がもっと我慢したに違いない。
「その時はっきり思ったわ」
母は断言した。
「恋愛なんて面倒くさいことは、
一度だけで十分だって」
何と言う幻滅するような言葉だろう。
「まして好きでいられる相手なんて、
一人でいいわけよ」