タイトル 「天使の羽」 1014 | 可愛い君に愛を囁きたい


 両親の恋愛話を聞くのは初めてである。


「お互い同じ大学だったし、


 いつも一緒だったから、


 どこからが恋愛か線が引けなくて、


 まあ……」


 小春は当時のことを思い出しながら、


 物想いに耽っていた。


「相手の都合で


 自分を押し殺したりしなきゃいけなかったり、


 いろいろ我慢したり、


 面倒で面倒で、嫌になったりしたわけ」


 母ならそうだろう。


 きっと父の方がもっと我慢したに違いない。


「その時はっきり思ったわ」


 母は断言した。


「恋愛なんて面倒くさいことは、


 一度だけで十分だって」


 何と言う幻滅するような言葉だろう。



「まして好きでいられる相手なんて、


 一人でいいわけよ」