そして付き合い始めたのだ。
絵に描いたような森ガールと。
なんでも、その女が徳永英明が好きで。
小田和正が好きで、親父好きな女だったわけよ。
だから、文化祭で弾き語ってたわけよ。
その女にむかってね。
バカじゃないの。
「エアロスミスのことをエアロビクス?って聞き返した子よ、あんなのがいいわけ」
女のためにメタルを捨てるのか。
魂をそんなにやすやす売り渡せるのか。
その時はそう思ったわけ。
「ずいぶん、森ガールって感じよね、大樹の彼女」
友人の美羽がその女を見て、そう言った。
その時初めて森ガールという言葉を知ることになる。
でもね、その日から森ガールが気になってしょうがないわけ。
森ガールって何。
桃花は森ガールと聞いて、すぐに赤ずきんちゃんが思い浮かんだ。
だから狼たちに狙われるのか。
森ガール。
狙われるのは、そんな隙だらけの格好だからでしょ。
誘ってるってことじゃない。
尻軽女よ、きっと。
本屋に行くと森ガールという文字が目に飛び込んできた。
そして森ガールをなんとなく調べてる自分がいるわけ。
そんな自分が情けなかった。
森ガールについてインターネットで調べてみた。
そのサイトに行けばなんとなく詳しくなれそうだな……。
そんなこと、チラッと思った自分が嫌になった。
負けてる気がした。
フラれた男の趣味を追いかけようとしてる。そんな気がした。
それからと言うもの、森ガールを意識しつつ、遠ざけていた。
もう、これ以上知りたくないと思ったわけ。
でもなんとなく森ガールのイメージみたいのは掴めた気がした。
自分が絶対にしないような服装を着てる。
森ガールを知ると、今まで気にならなかったものが見えてくる。
私を応援する女子たちにもいっぱい森ガールがいる。
実は結構流行ってるらしい。
森にいるような女の子。
それが森ガールの定義らしい。
芸能人で言うと蒼井優らしいけど、蒼井優は森に住んでるわけ。
住んでたら、いなかっぺじゃないの。
大体、誰よ、蒼井優って。
子供の頃、おはスタに出てた子でしょ。
子供じゃない。小学生でしょ、どうせ。
それしか知らない。
いいじゃない、興味ないんだから。
憎い。憎いわ、森ガール。
大体、森ガールの格好で森にいたら、妖精と言うより幽霊に見えるに違いない。
私の天敵。森ガール。
森で猟師に撃ち殺されたらいいのに。