最後に小春は笑いながら、こう言った。
「でも拓海って、
若い頃の父親、そっくりなのよね」
「えっ?それって、あの紳士……」
「石渡冬樹さん……、いや、社長ね」
「知り合いだったの?」
「昔の見合い相手」
「エエエエー」
みさきは思わず声をあげた。
あの社長が母の昔のお見合い相手?
「危なく、結婚されそうだったわ」
一緒じゃないの、私と。
「あいつ、威張ってて好きになれなかったのよね」
そんな想いをしておきながら、
娘に政略結婚を……。
この鬼!
「大金持ちのおぼっちゃまをふって、
貧乏だった駆け出しの医者だった
お父さんを選んだのよ」
意外すぎる。
母がお金に転ばなかったなんて。
「私がお金持ちにする自信があったからね」
「そうなんだ……、
純愛ってきれいなものばかりじゃないのね」
「あんたの口の悪さ、私に似てるわよ」
母の一言はみさきの心をうちぬいた。
ショック。
「だから拓海も分からないわよ。
あの親の血をひいてるからね、
化けるかもよ」
ハハハ……。
それこそ苦笑いだ。