タイトル 「天使の羽」 1072 | 可愛い君に愛を囁きたい

 最後に小春は笑いながら、こう言った。


「でも拓海って、


 若い頃の父親、そっくりなのよね」


「えっ?それって、あの紳士……」


「石渡冬樹さん……、いや、社長ね」



「知り合いだったの?」


「昔の見合い相手」



「エエエエー」


 みさきは思わず声をあげた。


 あの社長が母の昔のお見合い相手?


「危なく、結婚されそうだったわ」


 一緒じゃないの、私と。


「あいつ、威張ってて好きになれなかったのよね」


 そんな想いをしておきながら、


 娘に政略結婚を……。


 この鬼!


「大金持ちのおぼっちゃまをふって、


 貧乏だった駆け出しの医者だった


 お父さんを選んだのよ」


 意外すぎる。


 母がお金に転ばなかったなんて。


「私がお金持ちにする自信があったからね」


「そうなんだ……、


 純愛ってきれいなものばかりじゃないのね」


「あんたの口の悪さ、私に似てるわよ」


 母の一言はみさきの心をうちぬいた。


 ショック。


「だから拓海も分からないわよ。


 あの親の血をひいてるからね、


 化けるかもよ」


 ハハハ……。


 それこそ苦笑いだ。