「病院に電話があったのよ。
拓海の父親からね」
あの加熱なマスコミ報道だ。
冬樹の耳にも自然と入ってきたのだろう。
「それでも最初は確認の電話だったのよ」
冬樹は病院に入院しているのが、
自分の息子の拓海かどうかを確かめた。
そしてそれが間違いないと分かっても、
入院費を振り込むだけで、
会いにくることはなかった。
「だから私が電話したわけ、
ちょうど孫にあたる沙希ちゃんも入院してるから、
見に来られたらってね」
母にしては人間味溢れる行為だ。
「そしたら、最初は沙希ちゃんの入院費が
一気に振り込まれたわ」
なるほど週刊誌の写真を見て、
ニヤけてた頃の話ね。
足長おじさんは拓海の父親のことだったのか。
