夏休みになると、故郷に戻った。
もちろん、ピンクのかつらをかぶって、レザーに身をくるみ、地元に凱旋よ。
地元に戻るのは楽しみ半分、心配半分だ。
森ガール化してる自分を、いきなり180度元に戻さなきゃいけない。
今でも方言がたまに出るように、森ガールが地元でも出るかもしれない。
そして一番落ち込むのはルカに会えなくなることだ。
ルカがいなかったら、きっと夏休み中実家で過ごしたかもしれない。
でもスカイプ使えば、テレビ電話で顔見ながら話せるし、実家にどれくらいいるか、正確には決めていなかった。
水着を着たくないということもあり、夏はなるべく実家に避難しておきたい気持ちもある。
でも所詮テレビ電話はテレビ電話だ。
パソコン上じゃ、温もりも伝わらない。
キスがしたいと思った時、触れられないなんて。
そう思うと、今すぐにでも戻りたい。
パソコンの電源を入れる前に、桃花は森ガールに変身した。
まあ、ルカの前だけはブリブリに切り替えないとね。
部屋に籠もってこっそりやり取りしないと。
まるで鶴の恩返しだ。
パソコンのモニターを通して、キス顔をしていると、母が呼ぶ声がした。
いきなり、昔のバンドメンバーが尋ねてきたのだ。
慌てて、ルカに「友達が来たから、後で会おうね」とパソコンを切った。