「どうしてって?」
「普通、デートって言ったら、ディズニーランドでしょ」
私は何を言ってるんだろう。
「えっ、ああ、ディズニーねえ……」
ルカは微妙な反応をした。
何かディズニーランドに嫌な思い出でもあるんだろうか?
「どうしてディズニーランドじゃないわけ。どう考えたって、あっちの方が近いでしょ」
「何、怒ってるの」
怒ってる、私が……。
そんなことはない。
ただ、そう、私に疾しい気持ちがあるからだ。
「ディズニーって、なんか嫌いなんだよね」
なに、なに、ディズニーランドが嫌いな人がいたのか。
「どうしてよ、夢の国じゃない」
「だって……」
ルカはなんか言いにくそうに口ごもった。
「何、ディズニーランドの何が嫌なの」
「だって、ヤンキーの親子を見てみなよ。みーんな、ミッキーのペアルックじゃないか。公園で金髪のヤンキーあがりみたいな母親はみーんな、ミッキーマウスだ」
はあ……。
そこなんだ、引っかかってるところ。
「ディズニーランドなんか、ヤンキーだらけに決まってる。あそこはヤンキーランドだ。絡まれたらどうするんだよ」
なんだ、このヤンキーに対するトラウマは。
そんなにヤンキーが嫌いなんだ。
情けない。
あんた、男でしょ。
「僕はあんなヤンキーの巣窟なんかいかないから」
「じゃあ、いい、おろして」
「えっ?」
「ここでおろして」
思わず、ルカは車を止めた。
桃花はカーナビで現在地を確認した。
用賀だ。
田園都市線に乗り込めば、今からでも間に合う。
「私も湘南平なんかいかないから」
そう言って、桃花は車を降りた。
そして、後ろを振り返りもせず、駅へ走った。