ここの場面は「旧約聖書外典(下) 新見 宏訳」関根正雄(編)の訳の方が理解しやすいのでそちらを載せておきます。

 そこでエノクは出て行って言った。
「アザゼルよ、お前に平安を得ることが出来ない。お前を縛ってしまえという厳しい判決が下されたのだ。お前は赦免も休息も与えられない。お前が不義を教え、人々に不義と罪の仕業を示したからだ。」
それから私は行って彼等にすべてを語った。彼等は皆恐れ、恐怖と慄きが彼等を捉えた。そこで彼等は私に求めて彼等のために赦免をうるため嘆願書を書かせようとし、またその嘆願書を天の御前で読み上げてもらおうとした。なぜなら、その時以来彼等は主に向かって直接語ることはもとより、彼等が訴追された罪を恥じるあまり眼を天に上げる事すら出来なくなっていたからである。 

 (略)

 すると私は夢を見た。夢の中で私は異象を見たのだが、それは刑罰に関する異象であった。やがで一つの声が聞こえ、その幻を天の子等に伝え、彼等を訓戒するようにと命ずるのだった。……私は夢に見た事を今この肉体の舌と私の口と息を用いて語ろう。これらの舌と息は、大いなる者がそれを用いて互いに語り合い、心で悟るために、人々に与えられたものである。主が人をつくり、知恵の言葉を悟る力を与えられたように、私にも天の子等、見張りの者を訓戒する力をお与えになった。

 私はお前達の嘆願を書き留めたが、私が幻に見たところによると、お前達の嘆願は永遠に聞き届けられないと思われる。それどころかお前達に対する判決は既に下された。
……今から後永遠にお前達は天に上がる事を禁じられ、この世の続く限りお前達を地上の鎖に繋ぐことが命じられた。お前達は愛する子供達の滅亡を見、もはや子等を楽しみにする事は出来なくなる。彼等はお前達の眼の前で剣に掛かって倒れるだろう。彼等のための嘆願も、お前達自身のための嘆願も聞き届けられない。いくら泣いて祈っても、私が書いた嘆願書のすべての言葉を語っても聞かれないであろう。

 私に示された異象はこうである。
幻の中で雲が私を招き、霧が私を呼び出した。星と稲光の軌道が私の動きを早め、幻の中の風が私を飛ばせて上に引き上げ、天へと運び去った。私は天に入って水晶で作られ、火の舌に囲まれた壁の近くまで行った。私は次第に恐ろしくなった。やがて私は火の舌を通り抜けて、水晶で出来た大きい家に近づいた。その家の壁は水晶であったが、まるでモザイクの床のようであり。家の土台も水晶であった。

 天井は星や天体の通る道のようであり、その間には火と燃えるケルビムがおり、彼等の上の天は水のように透き通っていた。燃え盛る炎が壁を取り巻き、玄関も火に輝いていた。私は家の中に入ってみたが、そこは火のように熱く、また氷のように冷たかった。そこには命の喜びは無かった。私は恐怖に包まれ、慄きに捉えられた。私は震え慄いてひれ伏した。

 ……この家は火の炎で出来ていた。それはあらゆる点で到底言い表す事の出来ないほと美しく壮大であり、大規模なものであった。その床は火であり、その上に稲光と星の道があり、天井も炎であった。家の中に高い玉座があったが、その外見は水晶のようであり、その車輪は輝く太陽のようであった。そこにもケルビムの姿が見えた。玉座の下からは燃える火が流れ出ていたので私はそれを見つめるのに耐えられなかった。

 大いなる栄光の主が玉座の上に座っておられ、その衣は太陽よりも明るく輝き、どんな雪よりも白かった。その栄光とあまりの荘厳さに天使達も一人として家の中に入って御顔を見ることは出来ず、人間はもとより誰も見ることは出来なかった。……何千万という大群が主の御前に居たが、主は一人の助言者も必要とされなかった。主に近く侍る最高の聖者達は、夜もそこを去らず、御前を離れることはしなかった。


 私は震えながらひれ伏していたが、その時主は自ら口を開いて私をお召になった。
「エノクよ、わたしの言葉を聞け。」
すると聖者のうちの一人が私に近寄り、私を起こした。……すると主は言われた。私は主の御声を聞いた。

「義人エノクよ、義の書記よ。恐れなくても良い。近く寄ってわたしの声を聞け。行って、あのお前を遣わしたて執り成しをしてもらおうとした天上の見張りの者等に告げるが良い。
お前達こそ人間のために執り成しをすべきであって、人間に執り成してもらおうなどとはもっての他である。お前達が高く聖い永遠の天を離れ、女と交わり、人間の娘らによって身を汚し、妻を娶り、地上の子等と同じように振る舞い、巨人を生んだのは一体何の為なのか。
お前達は聖なる霊的な存在であって永遠の命をもっているにも関わらず、女の血で自分の身を汚し、肉なる者の血によって子供を生んだ。そして人間の子等としての巨人達は、あの死んで滅びる者等と同様に血肉の欲に憧れた。それ故にわたしは彼等にも妻を与えて、彼等が妻を身籠らせ子供を得て、地上の生に不足のないようにさせた。しかし、お前達は元々霊であり永遠の生命を持つもので、この世の続く限り死ぬことの無い者だったのだ。だからお前達には妻は定めていない。元々天上の霊については、天こそその住むべき場所なのだから。
さて、霊と肉から生まれた巨人達だが、彼等は地上の悪霊と呼ばれ、地上に住む事が定められている。悪霊は彼等の体から出てきた。彼等が人間から生まれ、しかも聖なる見張りの者に本来の源を持っているからである。
彼等は地上の悪い霊となり、悪霊という名で呼ばれる。天の霊達は天に住まいが与えられるが、地上で生まれた地上の霊は地上に住む。
巨人の霊は地上で災いを起こし、抑圧と破壊と攻撃と戦いによって地上を打ち壊し、騒がす。彼等は食物を取らないが、にも関わらず飢え乾いており、攻撃をしかける。これ等の悪霊共は人間の子等と、女に立ち向かう。彼等が女から出て来たからである。
巨人が殺戮を行い、破壊と死をもたらす時代から、その霊共は肉の塊から出てきて、審判を受ける事なく破壊を行うが、その日にはあの見張りの者等と不信な者等は確実に精算されるであろう。」


 
 以上ここまでが、天上に居て神に使えていた天使達「見張りの者達」が、人間の娘に恋をして過ちを犯し、神から叱責を受け、天上界から追放されるまでの内容でした。




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 「聖書外典偽典 第4巻」より続きですが、こちらには神近く使えている天使達の名前が紹介されています。「旧約聖書外典」には20章が省かれ、名前が載せてないのでこちらを引用しました。


 第20章

 軍団の天使達は以下のとおり。

ウウリエール
聖なる天使達の一人。世界と奈落に配置されている者。

ラパエール
聖なる天使達の一人。人間共の霊達に配置されている者。

ラグウエール
聖なる天使達の一人。光輝く者達(phoster)の世界に復讐する者。

ミカエール
聖なる天使達の一人。民人の善き者らに配置されている。また混沌を司る者。

サリエール
聖なる天使達の一人。霊に対して罪を犯すような霊達に配置されている者。

ガブリエール
聖なる天使達の一人。楽園と竜達とケルウブ達とに配置されている者。


 以上が天使達7人の名前である。

❲※※ここには6名の名前しかないが、別の写本には、レメイエール。聖なる天使の一人で、神はこれを反抗者達に向けて配置した。とある。❳



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 再び「旧約聖書外典(下)」より引用します。

 ⚫エノク、地上と陰府をめぐる

 第一の旅(17~19章)

 やがて天使達は私をある処へ連れて行ったが、そこにいる者達は燃え盛る火のようであり、彼等の欲する時には人間の形を取って現れるのであった。次に天使達は私を暗闇の場所へと、頂上が天に達する山に連れて行った。
私は天体のある場所を見、星と雷の庫を見た。その最も底深い処には、火の弓矢と扉、また火の剣、及び稲妻等があった。それから彼等は私を活ける水のほとりに連れてゆき、また太陽がいつもそこに沈む西方の火に連れて行った。
私は火の川に行ったが、それは火が水のように流れて西方の大海に濯ぐ川であった。私はいくつかの大河を見、大河と大きな暗闇の地に達し、生きものが一人も歩いていない処に行った。私は冬の暗闇の山々と、深い流れがすべてそこから流れ出る水源とを見た。

 私はあらゆる風を収める宝庫を見た。そこで神がその宝庫の中に一切の作られたものと、大地の堅固な基礎をどのように収めたかを見た。また私は地の隅の頭石を見、地と天の蒼穹(そうきゅう)を支える四方の風を見た。これ等の風がどのように蒼穹を四方に張り拡げ、天と地との間に位置を保っているかを悟った。これ等は天を支える柱なのである。

 私は太陽を運行させ、星々をおのおのの位置に置く天の風の動きを見た。また雲を運ぶ地の風を見た。私は天使達の通う道を見た。

 私は更に進んで、夜となく昼となく燃え続ける場所を見た。そこは巨大な岩石の山が7つあり、そのうちの3つは東を向き、3つは南を向いていた。
東を向いている山の内一つは色どりのある岩であり、一つは真珠、残りの一つはヤキント石で出来ていた。南向きの山はみな紅岩であった。しかし中央の山は神の玉座のように天まで達する雪花石で出来ており、玉座の頂上はサファイアであった。
それから私は燃え盛る火を見た。これ等の山の向こうには大地の果てる処があり、天もそこで尽きていた。

 私は深い淵を見たが、そこには天の火の柱が立ち並び、その中には高さも深さも計り知れないほどの火の滝の列があった。淵の向こうに見える場所は天に蒼穹も無く、しっかりとした地面も無いところであった。そこには水も無く、鳥も住まず、ただ荒れ果てた恐ろしい処であった。
私は燃える巨大な山のような7つの星を見た。そして私の問いに答えて、天使が言った。
「ここは天と地の果てである。この場所は星と天の群の牢獄となったのだ。火の上に転がっている星は、その昇る時に主の戒めを冒した者達だ。彼等は定められた時に出て来なかったからだ。そこで主は彼等を激しく憤り、彼等の罪が総決算される時まで一万年もの間彼等を縛っておかれるのだ。」

 ウリエルは私に言った。「ここには女と交わった天使達が立つであろう。彼等の霊は色々な形を取って人間を汚し、人間を迷わせて悪魔を神々として拝むようにさせたのだ。彼等はこの処に大いなる審判の日まで立たされ、その日に彼等は裁かれて滅ぼされるであろう。そして天使と交わって迷っていった女共も人を惑わす魔女となるであろう。」

 このすべての者の終末の幻を見た者は私エノクただ一人である。私が見たものを見る者は一人もいないであろう。

 
 第二の旅(21章)

 私は更に進んで行って、あらゆるものが混沌としている処に来た。そこには恐ろしい事が起こっていた。上には天も見えず、確固とした地も見えなかった。ただ混沌とした恐るべき場所であった。私はそこに天の7つの星か大きな山のように一つに縛られ、火に燃やされているのを見た。

 (略)


 陰府(シェオール)(22章)

 私は更にそこから別の処に行った。彼は西方にもう一つの巨大な高い山と堅い岩を見せてくれた。そこには4つの空洞が口を開け、その穴は深く広く、非常に滑らかであった。
なんと滑らかで、深く暗い光景であろうか。

 私に付き添っていた聖天使の一人ラファエルが言った。
「これ等の空洞は死人の霊魂を集めて入れるために、正にその目的をもって作られたのだ。
人間の子等の霊魂はすべてここに集められる。これは彼等が審かれる日、大いなる審判に定められた日まで彼等を収めておく為に作られたのだ。」

 私は死んだ人間の子等の霊を見た。彼等の声は天に向かって訴えていた。そこで私は傍らにいた聖天使ラファエルに尋ねた。
「この霊は誰のものですか。誰の声が天に向かって訴えているのですか。」
彼は答えた。
「これは兄カインに殺されたアベルの霊である。アベルはカインを訴え、カインの子孫が地上から絶ち滅ぼされ、人間の子孫の中から抹殺されるまで叫び続けるのだ。」

 私はこれ等の空洞について尋ねた。
「4つの内の一つが他と区別されているのはなぜですか。」
すると彼は答えた。
「これ等の3つは、死者の魂を区別する為に作られた。この一つの部分は義人の魂の為に設けれたので、そこには光輝く水の泉がある。
こちらの方は罪人の為に作られたもので、彼等は死んで地中に埋められたが、生きている間には審判が施行されなかった。彼等の霊はここで区別され、審判の大いなる日まで苦しむ。その日は刑罰の日であり、永遠に呪う者の苦しみの日、彼等の霊の受ける報いの日である。主はこの処に彼等を永久に縛っておかれる。
この区分はまた訴える者の霊の為に作られた。彼等は罪人等が我が物顔に振る舞った時代に殺されたのだが、その死の有様を公に示すのである。
この区分は不義な罪人の魂の為に置かれている。彼等は全くの罪人であり、罪人の友であるが、彼等の霊魂は審判の日に滅ぼされる事も無く、またそこから蘇る事も無い。(※罪人はシェオールで永遠に苦しめられる)」

 そこで私は主の栄光を祝福して言った。
「我が主に祝福あれ。主こそは義の主、永遠に治めたもう御方。」


 

 以上途中まで