聖書は神の霊感によって書かれたものであり、この聖書の言葉を人間が勝手に付け加えたり削除することを神は厳しく禁じています。

 ❲テモテ第2❳ 3:16 聖書全体は神の霊感を受けたもので、教え、戒め、物事を正し、義にそって訓育するのに有益です。

 ❲ヨハネ啓示❳ 22:18 私は全てこの巻物の預言の言葉を聞く者に証する。これらのことに付け加える者がいれば、神はこの巻物に書かれている災厄をその者に加えるであろう。また、この預言の巻物の言葉から何かを取り去る者がいれば、神は命の木から、また聖なる都市の中から、すなわちこの巻物に書かれているものから彼の分を取り去られるであろう。

 しかし、実際は正式に世に出回る聖書はその内容に省かれた書がいくつも存在しており、一般的には「聖書外典」として扱われています。
この外典は、勿論いくつかの年代で分かれていますが、特に有名な書として知られているのが「エノク書」です。このエノクという名の人は、アダムとイヴの息子、最初のアベルとカインの後に生まれたセツの家系の7代目の子供です。彼は神に愛され、生きた様で天上の神の住む世界へ取り去られました。

 他の聖書外典には、(旧約)「第一マカベア書」「ユデト書」「トビト書」「ソロモンの知恵」「第4エズラ書」他…、(新約)「ヤコブ原福音書」「トマスによるイエスの幼児物語」「ペテロ福音書」「ニコモデ福音書」「ヨハネ行伝」「ペテロ行伝」「パウロ行伝」「アンデレ行伝」「パウロの黙示録」他…があります。

 外典のいくつかの一部をまた紹介したいと思いますが、外典には神学研究者や、ユダヤ教、キリスト教の聖職者、様々な分野において批判的にとらえられたり(つまり神の霊感もなく勝手に書かれた書ではないか?)、好意的、もしくは聖書そのものとして捉えられたり、陰謀論的には、神の大切な書をわざと民に読ませないように隠されてきたのではないかなどの意見があります。
という事で、外典が本物か偽物かについては結果、どちらとも取れるので判断は読者に任せたいと思いますが、個人的には読んで良かったと思っています。

 あと、前回の「医療殺戮」の著者のユースタス・マリンズの「カナンの呪い」も間に紹介できたらと思っています。

もし、ブログを読んで下さってこの残り少ない世紀末に皆さんの心に何か感じいる所があれば幸いです。



 外典の「エノク書」に入る前に、エノク書は、旧約聖書外典のうち最大のもの(108章)で、元はアラム語又はヘブル語で書かれていました。紀元前1世紀頃アラム語「エノク5書」が存在していたと言われています。多くの黙示録と同様に紀元2世紀頃までは、ユダヤ教会の間で広く読まれていましたが、ユダヤ教の正典決定と伴に異端視され、反対にキリスト教会で重視されたと言われています。
「エノク書」の紹介は、「旧約聖書外典(下) 新見 宏訳」関根正雄(編)と、「聖書外典偽典 第4巻〈旧約疑典Ⅱ〉村岡崇光訳」の2つの書籍から抜粋します。



「旧約聖書外典(下) 新見 宏訳」
 関根正雄(編)より
 【エノク書】

 ⚫第1~5章

 エノクの祝福の言葉。これはエノクが災いの日、すなわち邪悪で不信仰な者共がことごとく取り除かれる日に生き残る選ばれた義人達を祝福した言葉である。
彼は例えを用いて語った。義人エノクは神によって眼を開かれ、天上の聖者の幻を見た。その幻は天使が私に示したものであり、私は彼から全ての事を聞き、彼等によって私が見た事をことごとく悟ったのだが、この幻はこの今の世の為ではなく、遠い将来に来たるべき世の為である。選民については私は例えを用いて語った。

 聖なる大いなる者がその居住から出、永遠の神が知識に、シナイ山に足を降ろされる。そしてその御力の勢いをもって天から姿を現される。

 すべての人は恐怖にうたれ、「見張りの者」等は慄き、大いなる怖れと慄きが地の果てまで彼等を捉える。高い山々は震え、高い丘は低くされ、炎の前の蝋のように溶け去る。

 大地は真っ二つに裂け、地上の一切の物は滅びる。そして万人の上に審判が臨む。
しかし、義人に対しては神は和平を結び、選ばれた者等を神は守る。彼等の上には慈しみが与えられる。彼等はすべて神の所有となり、彼等は栄え皆ことごとく祝福を受ける。

 神は彼等すべてを助け、光が彼等に表れる。神は彼等と和平を結ぶ。みよ、神は千万の聖者を従えて来る。すべての人を裁き、不信者をことごとく滅ぼすために。また、神をないがしろにして犯した不信の行為ゆえに、不信な罪人が神に逆らって語った雑言ゆえに、あらゆる人を罪に定める為に来る。

 天上に起こるすべてのことを注意して見よ。天体はその軌道を変えず、天にあって光を発する者達は定められた時に従って上り、また沈むではないか。彼等は定められた秩序をおかすことはない。地上を見て、地上に起こる事柄を初めから終りまで注目するがよい。いかにそれ等が着実で、何一つ変わらないかを見よ。

 すべて神の御技がどのようにお前の眼に映るかを見るがよい。夏をよく見、冬を見なさい。地上は水に満たされ、雲や露、雨などはその上に留まっているではないか。
よく注意しなさい。冬になるとすべての木々は枯れたようになり、葉をことごとく散らすが、ただ14種の樹だけは葉を失わず、新しい記事葉が生えて変わるまで2、3年古いものを残しているではないか。また、夏になったらよく注意せよ。太陽が地上高く照りつける。人は太陽の熱さを避けるために日陰や覆いを求める。地は増し加わる熱の為に焼け、人は暑さの為に地や岩の上を歩く事が出来ない。樹々が緑の葉に身を装い、果を結ぶのを注意して見なさい。よく観察して神の御業を知り、永遠に生きておられる方がこのようになさったのだと悟るがよい。

 神の御業はこうして来る年も来る年も永遠に続き、彼等が神の為に果たす仕事は変わる事がなく、神が定められた通りになされてゆくのだ。海も河も同じようにその務めを果たし、神の掟に背くことはない。

 だが、お前達人間はどうだろう。お前達は不忠実で、主の戒めを守らず、背き去って誇らしげに雑言を吐き、汚れた口で大いなる神に逆らう。
心の頑なな者どもよ、お前達に平安はない。

 それゆえお前達は自らの生を呪い、お前達の命は滅びる。その滅びの年は永遠の呪いの内に増し加わり、お前達は憐れみを得られない。
その日、お前達の名はすべての義人にとって呪いとなり、呪う者はみなお前達の名によって呪うであろう。罪人と不信者はお前達の名で呼ばれ、不信なお前達のため呪いがある。

 しかし、すべての義人は喜び、罪の許しが実現し、慈しみと平和と忍耐が表れ、救いと喜ばしい光が彼等に来る。……彼等は地を受け継ぐであろう。その時選民には知恵が授けられ、彼等はみな生きて、再び罪を犯す事がない。不信によっても、誇りによっても罪を犯さない。賢い者は謙遜になり、再び背くことなく、一生の間罪を犯さず、神の怒りによって死ぬこともない。彼等は与えられた命の日数を全うするであろう。

 
「聖書外典偽典 第4巻〈旧約疑典Ⅱ〉」より
【ギリシャ語 エノクの黙示録】

 第6章

 そうして、人間共の息子等がいや増す時になって、その日々に、麗しくも美しい娘達が生まれた。そこで天の息子達である天使達はこれを見て、彼女達に欲情し、お互いに言い交わした。
「さあ、人間共から自分達の妻を選ぼう、そして自分達の生子をもうけよう。」
すると、セミアザスが彼等に向かって言った。彼は彼等の支配者(archon)であった。

「この行為を為すことをあなたが拒み、私一人が大きな罪の責めを負うのではないかと怖ろしい。」
そこで皆が彼に答えた。
「皆で誓いを立て、皆で呪いをかけてお互いに誓いあおう。この目論見(gnome)を達成し、この事を実行する時までは、この目論見を撤回しないと。」

 その時、全員が一緒に誓い、その場所までお互いに呪いをかけて誓いあった。そして以下が、彼等支配者達の名前に他ならない。

 セミアザス、これは彼等の支配者(archon)であった。アラタク、キムブラ、サムマネー、ダネイエール、アレアロース、セミエール、イオーメイエール、コーカリエール、エゼキエール、バトリエール、サティエール、アトリエール、タミエール、バラキエール、アナントゥナ、トーニエール、ラミエール、アセアル、ラケイエール、トゥウリエール。

このうち10人は、彼等の首長(archai)である。

 第7章

 こうして彼等は自分達に妻を得た。彼等のめいめいは自分達に妻を選び出し、彼女達の元に通い、彼女達によって身を汚し始めた。
そして、彼女達に諸々の施薬、諸々の呪文、諸々の薬用のための根の採集を教え、彼女達に野菜を明らかにした。

やがて女達は胎に孕み、身の丈3000ペーキュスある大きな巨人(gigantes)達を産んだ。この者達は人間共の労苦をむさぼり食い、その為人間共は彼等を扶養する事が出来なくなったので、巨人達は彼等に対して大胆に振りまい、人間共をむさぼり食った。

 こうして彼等は羽根のある者等に対して、獣に対して、這うもの等に対して、魚共に対して罪を犯し始めた。お互いの肉までむさぼり食い始め、血を飲んだ。
その時、大地はその無法を訴えた。
 
 第8章

 アザエールが人間共に教えたのは、軍刀(machaira)と武器(hopla)と小楯と鎧の作り方、これが天使達の教え(didagma)であり、彼等に教示したのは、金属とその製法、腕輪と諸々の装身具と、シャドーカラーと瞼を美しくする化粧品と、選び抜かれたありとあらゆる宝石と、諸々の染料であった。

 こうして多くの不敬が生じ、そうして彼等は姦淫し、惑い出て、自分達のあらゆる道において堕落した。

セミアザスは諸々の呪文と、諸々の薬用のための根の採集を教えた。
アルマロースは諸々の呪文の解き方を。
バラキエールは天文学を。
コーキエールは占いを。
サティエールは星辰研究を。
セリエールは月の運行を教えた。 

ところが、人間共が破滅する時、その叫び声が天まで登った。

 第9章

 その時覗き込んだのが、ミカエールとウウリエールとラパエールとガブリエール、この者達は天上から、おびただしい血が地上に流れているのを眼にした。そこでお互いに言い交わした。
地上で助けを求める者達の叫び声が天の門まで届く。人間共の魂達が訴えて言っている。

「私達の審判を至高者の前に持ち出してください」と。

そこで彼等は主に言った。
「あなたは諸々の主の中の主、神々の中の神。永遠❲複数❳の王。あなたの栄光の王座は永遠の全種族に及び、あなたの名前も聖にして偉大。
あらゆる永遠に至るまで祝福される。
なぜなら、あなたは万物をお作りになり、あらゆる権力(exousia)を持ち、あなたの御前に万物は明らかにして隠れることがないから。
そしてあなたはアザエールが何を為したか、万事を眼にしておられる。彼は地上に諸々の不正を教え、永遠の秘儀、天にあって彼等の行う事柄を明らかにし、人間共はこれを知りました。そしてセミアザス、これにあなたは彼と共にある者達を支配する権限を与えられました。
 (略)
そしてあなたは、それが起こる前からすべてをご存知です。あなたはそれを眼にしておられる。彼等を放任しておられる、これについて彼等をどうすべきか私達に言われない。」

 第10章

 その時、至高者がこのことについて言われた。偉大な「聖なる方」が話された。そしてラメクの息子[ノア]の元にイストラエールを派遣なさった。

「わたしの名で彼に伝え、身を隠せと。そして彼に来たるべき終末を明らかにせよ。全地は滅びる。全地に大洪水が起きることになり、そこにあるものはすべて滅び去るであろうと。そして彼に明らかにせよ。脱出するよう、そしてその種子(sperma)を永遠の全世代に留めるようにと。」

また、ラパエールにも言われた。
「アザエールの両手両足を縛れ。そしてこれを闇の中に投げ込め。そしてダドゥウエルにある荒野を開き、そこにこれを投げ込め。そうして剣阻な鋭い石を彼の上に置き、彼を闇で包め。そしてそこに永遠に住まわせ、彼の視界を塞いで光を眼にさせるな。そうして大いなる審判の日に、アザエールは燃え盛る火の中に引きずり込まれよう。かくして、天使達が台無しにした大地は癒やされるであろう。そうして大地の癒やしを明らかにせよ。この打撃が癒やされるように。人間共の息子達すべてが破滅するのでないように。覚醒者達が言いつけ、人間共の息子達に教えたすべての秘儀のせいで。かくして、全地は荒野と化すであろう。アザエールの教えの業のせいで。そしてすべての罪を彼のせいにせよ。」

また、ガブリエールにも主は言われた。
「行け、私生児達に向けて、不義の子達。姦淫の息子に向けて。そうして、覚醒者達の息子達を人間界から破滅させよ。彼等を破滅の戦争状態に送り込め。(略)」

また、ミカエールに言われた。
「行け、そしてセミアザスに彼と共に女達と交わった残りの者達に。明らかにせよ、彼女達によってその不浄さによって身を汚したことを。そして彼等の息子達が殺戮しあい、愛する者達の破滅を見た時、彼等に明らかにせよ。70世代の間、彼等の審判と最後の日まで、永遠の裁きが成就するまで大地の丘の下に置かれることを。その時、火の混沌の中に、責め苦の中に永遠の幽閉の牢獄の中に連れゆかれるであろう。そうして彼は焼き尽くされ抹殺されるであろう。今から、種族の終りまで彼等と一緒に一つのところに縛られるであろう。不義の子等の霊達すべてと、覚醒者達の息子達を破滅させよ。人間共に不正したゆえに。」



 以上途中まで