ユースタス・マリンズ
  Eustace  Mullins

メイフラワー号で米国に渡った名門の家に、1922年に生まれる。ワシントン&リー大学、美術専門学校で学び、作家・評論家・編集者・企業人として活動。第二次世界大戦中、38ヶ月間、米空軍に軍人として服務。世界的に著名な詩人エズラ・バウンドの弟子として、その釈放運動を推進。故ジョセフ・マッカーシー議員が共産主義と闘っていた期間、立法調査員として協力、国会図書館の職員を務める。





 1996年2月22日
 ユースタス・マリンズ

「日本の読者のみなさまへ」

 健康はすべての人々に関心のあるテーマである。しかし、薬を販売したり、医療行為を行うのは、営利を目的とした企業や病院である。私が調べた結果、医療の分野における本当の危機、すなわち世界規模の陰謀がこの領域に浸食していることが明らかになった。陰謀の目的は、人々の健康を計画的に非常に低いレベルまで低下させることにある。
この陰謀は、単に金銭的な利益を増大させるだけでは満足しないが、それでも故意に人々の健康を悪化させて得た利益は、今や一兆ドルにも達している。しかし、彼等にとってもっと重要なのは、悪質にも健康問題を利用して、国際政治上の野暮、すなわち最終的に世界中の人々を冷酷な新世界秩序に服従させることである。

 私が初めて日本を訪れたとき(マリンズ氏は1996年2月に初来日した)、日本の人々は米国人よりも健康そうに見えた。若者も身長が高くなっているようであった。しかし、背は高くなったが、体力は低下したと、同行した日本人から教えられた。 日本の食事は米国の食事に比べて低脂肪で砂糖や肉が少なく、健康食であった。しかし日本は今や有害な添加物により、多国籍企業に侵略されつつあるとも教えられた。
これらの企業は、自分たちが製造している化学毒物の混合物を使えば、食品は永久に腐らなくなると主張している。そして更に彼等は、食品の貯蔵期間を長くするという元々の目的のために、今では食品への放射線照射という安全性の全く分からない方法を使い始めた。これで食品は永久に保存できるというのである。

 このボロ儲けの化学技術は、人々の健康に対する脅威となるが、私が驚いたのはこの技術が既に日本に上陸していた事である。
健康に対するこのような危険を完膚無きまでに暴いた本書『医療殺戮』は、製薬トラストと医療独占体制 Medical  Monnpoly を暴露した唯一の本であると自負する。

 医療独占体制は、世界化学トラストの製造した化学物質を使用しない、医学的治療法のすべてを違法治療として断罪しようと企てている。私は化学トラストを構成する企業の所有者達を調査していくうちに、ロスチャイルドーロックフェラーの世界秩序(世界権力のこと)の一部である中央銀行(米国連邦準備銀行)の黒幕達に突き当たった。
彼等は以前、じわじわ効いてくる化学物質の毒薬で全世界の人々を支配するという悪魔の計画を1925年に具体化した。この運命の年、ロスチャイルド家は世界の化学市場を二つに分割した。
まず、自分達の所有するドイツの化学カルテル、IGファルベンにヨーロッパとアジアの市場を与え、そしてロックフェラーの独占企業スタンダード石油に南北アメリカ市場を割り当てた。

 (略)

 この化学独占企業の研究開発部門は、自分達の製造する死の商品を販売する新たな世界市場を見出した。水はすべての人々が飲む。
彼等は飲料水にこの化学物質を注入し始めたのである。第一次世界大戦後、米国IGファンベン社は、戦時にしか売れない塩素ガスの在庫が大量に残っていることに気がついた。そこで彼等はこの塩素ガスを、飲料水を「浄化」するために利用しようと決定した。しかし実際には、飲料水を塩素処理しても、人々の健康にとって有害なウイルスを殺すわけではない。今日でも、水道から汲んだコップ一杯の生水は、クリーニング店の漂白剤のような臭いがする。中に溶けているものは、本質的には変わっていないからである。

 次に化学トラストが直面した問題は、アルミニウム製造の副産物として出る更に有害な物質の処分に莫大な費用がかかるという事実であった。………問題解決の要請を受けた化学者は、もしこの毒物を水道水に添加すれば、7歳以下の子供達の虫歯を防ぐ効果があるという事実を突如「発見」した。
米公衆衛生局の長官オスカー・ユーイングは、アルミニウム業界から賄賂の頭金として75万ドルを受け取り、水道水は「フッ素添加」すべきであると命令を下した。
この毒物を飲料水に添加すると聞いて、多くの化学者は仰天したが、じきに黙ってしまった。

 化学トラストを支配するユダヤ人にとって、飲料水に毒薬を注入するという誘惑は、昨日今日始まったものではなく、興味深い歴史がある。14世紀、世界の人口のほぼ半数がペストのために死に絶えたが、当時、ペスト蔓延の原因はユダヤ人が井戸に毒を投げ込んだからだと、多くの人々に信じられていた。それから何百年も経った現在でも、ユダヤ人の企業がせっせと水道水に毒薬のフッ化ナトリウムを注入している。昔と何も変わっていないようである。

 (略)

 こうして一世期にも満たない間に、ロスチャイルド医療独占体制の下で、米国民は、健康でエネルギッシュかつ生産性の高い国民から、慢性病に犯され、覇気に欠け、弱々しくいつも健康を気にかけ、いわゆる「特効薬」という名の化学薬品を毎日大量に飲む国民へと変わってしまった。
医師が指摘するように、これらの薬剤が「特効薬」wonder  drug と呼ばれたのは、患者がそれを飲むと、自分の体に一体何が起こるのかとはらはらwonderさせられたからである。

何が起こるのか、誰にも分からなかった。これらの化学薬品には多くの副作用があり、肝臓や心臓、腎臓その他の臓器を痛める可能性があったからである。現在でも、これらの薬のために毎年何千人もの人々が犠牲になって殺されているが、医療独占体制のおかげで、我々はあくまで薬を飲み続けなければならなくなっている。なぜなら「利益がリスクを上回っている」からである。

 これらの危険な医薬品は「政府公認」である。つまり、米国では食品医薬品FDAが医薬品の認可を任されており、製薬会社の新製品を「安全である」と承認するからである。実は、新薬はたいてい刑務所の囚人を使って実験される。囚人達に新薬の効き目がどうだったか聞くまでもない。もし、囚人が新薬の実験台になっても生き残っていれば、政府がこの医薬品は「臨時試験で安全性が認められ、認可された」と発表して、どこからも抗議の声は挙がらないからである。

 ユダヤ人という寄生体は、既に教育制度やマスメディア、政府を操ることで宿主から振り払われないよう万全を尽くしているが、更に加えて、医療システムを支配し、宿主を組織的に弱体化することによって、安心して宿主に取り憑いた状態を保っているのである。危険な医薬品を常に製造し続けていれば、宿主から振り払われることはないと、寄生体は確信している。

 薬漬けになった宿主を奮起させ、危険が迫っていると必死に警告しても、反感を買うだけである。なぜなら、人々は既に一種の麻痺状態に陥っていて、最終的な死を待っているだけの状態にあるからである。


 


 ー1988年2月22日ー
   
   まえがき

 本書は約40年におよぶ私の調査・研究の集大成である。…………

 影の支配者達は、強大な権力をもって事実を隠蔽しているが、すべての米国人に対し生死の宣告をもっているのは、たった一つの集団であることに、私は気がついた。それはわが国の「医師」達である。その医師達も、強い権限をもっているにもかかわらず、仕事上のあらゆる面において、非常に厳しい管理のもとに置かれていることを、私は発見した。しかし、米国人の生活が、医療を除いて、ほとんどすべての面で連邦政府の官僚機構に完全に支配されているにもかかわらず、驚くべきことに、医師達を管理しているのは、いかなる州政府や連邦政府の機関でもない。
医師達には独自の独裁権力が存在する。
すなわち、民間の同業団体である米国医師会AMAである。イリノイ州シカゴに本部をもつこの団体は、次第に権限を拡大し、ついに現在のように大学医学部と医師免許発行の完全な支配権を手に入れたのであった。
私はこれらの支配権を行使する者達を追跡していくうちに、前の著書で正体を暴いた国際的な陰謀家集団が住む同じ隠れ家に辿り着いた。

 私はこの陰謀家集団が既に米国を強奪し、軍事力を危険なほど低い水準にまで削減して、あらゆる米国人に官僚的支配を強要していることを知っていた。そして今、陰謀の魔の手はすべての米国人の健康にもまた直接、およんでいることを知ったのである。彼等のせいで、多くの証拠が示すように、わが国の市民の健康水準は明らかに低下している。今では幼児死亡率などの医学上重要な統計で、わが国は文明諸国の中ではるか下の方に位置しているのである。

 私がこの本で証明することが出来たのは、この冷血な権力者達が、単に飢餓や経済不況・革命・戦争を企てて現実に実行しているだけでなく、我々の医療にまで手を伸ばし、それによって莫大な利益を得ているという驚くべき事実である。

 陰謀家達の冷笑と悪意に満ちた行為は、多くの米国人の想像をはるかに越えている。彼等は「慈善」団体を通じて人々から毎年何百万ドルというカネを計画的に騙し取り、同じ団体を拠点として医療の独占を強化するのだ。
陰謀家達が我々の健康管理を全面的に支配するために使う基本手段は「恐怖」と「脅迫」である。そして自分達の利益を妨げる如何なる競争相手も徹底的に叩き潰すのだ。

 また、医療以外の分野において米国民を「行動管理」するのと同じように、連邦政府の役人や政府機関を陰謀の下手人として利用するのも、彼等の常套手段である。本書でこの陰謀工作の証拠を暴露したことは、これまでの私の仕事のなかでも最も強力に彼等の陰謀を妨害することになるだろう。


【第1章 医療独占支配の犠牲者は誰だ ! 】

 ⚫医療独占支配の企て

 医者という職業は、おそらく世界で一番古い職業ではない。しかし、この職業の本質は、昔からほとんど変わっていないようである。いつも患者は、支払った治療費に見合うだけの治療を得ているのか心配するだけでなく、多くの場合、思いもよらない処置をされて愕然とする。
 
 記録を調べてみると、医学の治療法は太古の昔からほとんど変わっていない事が分かる。最近発見された「エーベルス・パピルス」(紀元前16世紀のエジプト中王国時代の医書)によると、紀元前1600年頃の医師は、鎮痛剤としてのアヘンを含めて900種類以上の薬の処方が可能であった。
1700年頃一般に使用されていた薬の中には、センナ、アロエ、イチジク、ひまし油のような下剤も含まれていた。腸内の寄生虫は綿馬(オシダの根の抽出物)、ざくろの樹皮、駆虫効果のある種子の油を使って治療されていた。東洋ではセメンシナの花がら取った油を、西半球ではアカザの果実や薬を搾って得た油を使った。
鎮痛剤にはアルコール、ヒヨス葉、アヘンが用いられた。ヒヨス葉に含まれるスコポラミンは、現代医学でも「半麻酔状態」を誘発するのに使用されている。16世紀には、アラブ人はリウマチの疼痛や痛風の治療薬に、サフランから派生したコルチカム(別名イヌサフラン)を使っていた。…………およそ200年前、ハンフリー・デーヴィが一酸化ニ窒素(笑気)の麻酔作用を発見して、現代医学の時代が幕を開けた。
マイケル・ファラデーはエーテルを発見し、ヴィルヘルム・ズルトナーはアヘンからモルヒネを分離した。

 19世紀末までは、医者は自由契約で診療していた。これは治療によって万一のことがあった場合、すべての責任を医者がとることを意味していた。医療サービスを受ける者は一般に金持ちや権力者に限れていて、貧しい者はめったに医者に診てもらうことはなかった。
医者は皇帝の病気を治せば莫大な報酬を得ることが出来たが、治さなければ殺される可能性もあった。
……この医療独占支配Medical  Monopolyを打ち立てる企ては、今では様々な現代病を生み出している。その一方で、彼等は医療支配を維持するために、大衆に莫大な費用と犠牲を払わせているのである。

 医療独占支配の最初の企てはおよそ500年まえ英国で始まった。英国のヘンリー8世の署名で制定された「1511年法」である。この法律は「専門委員団」の許可なしに内科や外科を開業することを禁じていた。この法律は1518年に王立医科大学の設立によって形式的にも整ったものとなった。
1540年に国王が理髪師と外科医の組合にも認可を与えたために、彼等も内科医と同様の権限を持つようになった。免許をもった医師達はすぐに、貧しい患者の治療をしていた無免許の医者を排除する運動を開始した。世の中、所変われど品変わらずで、現代の米国でも同じ運動が永い間行われている。
 
 この英国版の無免許医者排斥運動は、彼等の治療を受けていた貧しい患者達に広い範囲で被害を引き起こした為、ヘンリー8世は1542年に「ニセ医者憲章」の制定を余儀なくされた。この憲章は「無資格の医師」の罪を免除し、彼等がそのまま医療行為を続けることを認めるものであった。

 このような法律は、米国では未だかつて一度も制定されたことがない。米国では「ニセ医者 quackは単なる無資格の医者、すなわち米国医師会AMAやその支配下にある政府機関が「認定」していないというレッテルを貼られるだけではない。それだけで即座に逮捕されてしまうのである。

……1617年、英国に薬剤師協会が設立された。1832年には英国医師会が設立認可を受けた。これが契機となって米国でも同様の組織、米国医師会AMAが設立された[1847年]。この組織が設立当初からもっていた唯一の目的とは、米国において医療の絶対的な独占支配を確立し、その体制を維持することであった。

 
⚫アロパシー医学 vs ホメオパシー医学

 設立当初から米国医師会は、アロパシー医学(逆症❲対症❳療法、病気の症状を抑えることを主眼に置いた医学で、日本を含め現代医学の中心的な治療法)を治療の基本とした。
アロパシーは公認の医科大学で訓練を受けた医師が行う治療で、外科手術と投薬に極端に依存する治療法であった。アロパシー医学の指導者達は、ドイツで教育を受けた。彼等は、何かといえば血を流し、多量の薬を投与することにもっぱら精力を費やした。そして、医学会が指定する治療法、あるいは標準的で正統な治療法に従わない医学は、どのような医学に対しても、敵意をあらわした。
19世紀の医学校では、「ホメオパシー」(同種[同毒]療法、健康な人に疾患を起こさせる薬物をごく少量投与する治療法)医学の方が広く普及していたが、アロパシー学派はホメオパシーに対して強力な敵対活動を開始した。

 ホメオパシー医学はサミュエル・クリスチャン・F・ハーネマン[1755〜1843]という医師が提唱したもので、彼の同種療法に基礎を置いている。ホメオパシーの方が、むしろ今の我々の時代にとってはより重要であるといえよう。
何故ならホメオパシーは、病気を引き起こしたものと同種の毒性のない物質を処方することで、体の免疫機能を活性化させて治療する方法だからである。

今日でも英国のエリザベス女王をバッキンガム宮殿で治療しているのは、ホメオパシー医学の医師である。しかし米国では医学団体がホメオパシー医学の信用を傷つけ、撲滅する運動を猛烈に展開し続けている。

 皮肉なことに、1899年から1924年まで米国医師会を支配し、全国規模の権力に仕立て上げたジョージ・H・シモンズ博士は、自分でネブラスカ州リンカーンで開業していたころには、自ら「ホメオパシー医師」であると何年間も宣伝していた。
ホメオパシーの治療は種々の臨床試験の結果、関節炎の治療で一般によく処方されている薬と同じ効果があり、しかも有害な副作用も引き起こさないという点でそれよりもはるかに勝っていることが明らかになっている。しかし、ホメオパシー治療の業績は、歴史から黙殺され続けてきた。

また、たとえそれについて述べられることがあっても、事実を歪曲されて語られたのである。
ホメオパシーの有効性を示す典型的な事件は、英国で1854年にコレラが大流行した時に起こった。記録によると、この大流行の期間中、ホメオパシーの病院では死亡率がわずか16.4%だったのに対し、正統派医学の病院では50%であった。しかしこの記録はロンドン市の衛生局によって故意に隠蔽された。

 (略)

 米国医師会は初めからアロパシー学派という単なる同業者の集まった圧力団体であり、競争相手のホメオパシー派の医師達を妨害し、廃業に追い込むという目的の為に組織されたことは明らかであった。
米国医師会は1900年代の始めにはこの目的を達成し、おかげで米国の医療は暗黒時代に突入した。そして今ようやく、この何十年間もの暗黒から抜け出す兆しが見えてきている。病気を身体の組織全体で捉える新しい動きが起こってきたからである。

 米国医師会のアロパシー医学の特徴は、自分達の治療法のみが唯一効果のある治療法であるという神話をでっち上げ、絶えず大衆に宣伝して売り込む点にある。この悪質な神話はみるみるうちに成長して新たな怪物を作り上げた。それは「医師は絶対に間違うことのない完全な人間であり、医師の判断を決して疑ってはいけない」という神話である。
ましてや、医師の過失についてとやかく言うなどもってのほかである。イヴァン・リッチが『医学のネメシス……健康の没収』❲1976年❳という衝撃的な著書で指摘しているように、アロパシー医学の有効性など、愚にもつかない神話にすぎないことは明らかである。そればかりか、今や医者達が、今までに無かった新たな病気を生み出している。それはイリッチが「病原性の」と定義した様々な疾患からなる現代の疫病「医原病」である。

 医原病は今や米国全体に蔓延していると、イリッチは述べている。また、イリッチは、この「医原病」の定義を「医師が患者の体へ医学的介入をほどこすことによって引き起こされる病気」とし、一般によく見られるものを3つのタイプに分類している。
第1に、医者によって引き起こされる「臨床性医原病」、第2に医学・産業複合体の意図的な策謀が生み出す「社会性医原病」、そして第3に人々の生きる意欲を奪う「文化性医原病」の3つである。


⚫医療独占支配が米国民にまわした「ツケ」

 米国医師会は医学は進歩したとしきりに宣伝しているが、記録をみれば米国人の健康状態は明らかに低下してきていることが分かる。
19世紀の間は、米国人の健康状態は着実に向上していた。これはおそらくホメオパシー医師達のおかげだろう。

 (略)

 1900年には米国人750人に対して一人の医者しかいなかった。……この年、ジョージ・H・シモンズは既に米国医師会誌の編集主幹を務めていたが、彼は、「一人一人の医師会会員がこの仕事で常に儲けるためには、医者の数が制限されなければならない」といって政府権力の行使を呼びかけた。これほどあからさまに独占支配を要求する業界を他で見つけるのは難しいだろう。ではどのようにしてこの目標は達成されたのであろうか?

 魔法の杖をひと振りして医療に大変革をもたらし、このような独占支配体制を確立した魔法使いは、誰であったのだろうか。
それは他でもない、世界一の大金持ちで強欲な独占者ジョン・D・ロックフェラーである。

 ジョン・Dは巨大な石油独占体制の編成にまんまと勝利を収めたが、その勝利たるや古代ローマの勝利と同じく血塗られたものだった。そしてその勝利の興奮がいまだ冷めやらぬうちに、ロスチャイルド商会とウォーター街に遣わされたロスチャイルドの密使ヤコブ・シフとが創り上げたロックフェラーは、医療を独占すれば石油トラストなどよりも更に莫大な利益をもたらす可能性があると思い至ったのである。

 1892年、ジョン・D・ロックフェラーは自分の代理人としてフレデリック・T・ゲイツを指名し「全慈善事業責任者」という地位につけた。ご承知のように、ロックフェラーが世間に宣伝した「慈善事業」なるものはいずれも、結局彼の富と権力を増大させたばかりでなく、裏に隠れていた本当の主人(ロスチャイルド家)の富と権力をも増大するよう特別に仕組まれていたのである。

 フレデリック・T・ゲイツのロックフェラーへの最初の貢献は、米国の医学教育制度全体を支配しようという計画案だった。その第一歩となったのがロックフェラー医学研究所の設立である。

 1907年、米国医師会はカーネギー財団に対して全米にある医学校の全てを実質的に支配しており、以来この関係は現在まで続いている。カーネギー財団(5つの団体からなる)がロックフェラー財団の単なるちっぽけな付属品にすぎないという事実は、財団の世界では常識である。


⚫医学教育が選ばれた
特権階級のみに許されるしくみ

 (略)


……アブラハム・フレクスナーの長兄のバーナードは当時ニューヨークで弁護士をしていたが、この講和会議のシオニスト代表団の公式法律顧問として、ブランダイスに随行するように依頼された。バーナード・フレクスナーはその後、外交問題評議会CFRの創設メンバーの一人となった。また弟のサイモンと共にロックフェラー財団の理事も務めた。 

 (略) 
 
 調査を終えたアブラハム・フレクスナーは、医学教育に関する最終報告書をロックフェラーに提出した。この報告書はロックフェラーにとってあらゆる点で満足のいくものであった。
報告書はまず第一に、医師の数が多すぎるという米国医師会の嘆きに強く賛同していた。そしてこの問題に対するフレクスナーの解決策はいたって簡単だった。 

 医学教育を選ばれた特権階級だけの費用のかかるものにし、教育年限を長くすることで、たいていの学生が医者になろうなどと考えないようにしようというのである。 
フレクスナーは医学教育制度を、4年間の学部教育ののちに、更に4年間の医学教育を受けさせるという制度に変えるよう提案した。また更に大学医学部にも無理な注文を付け、医学部は高額な研究設備や装置を備えなければならないとしたのである。
このようなフレクスナー報告書の要求が効果を表し、医学校は急激に減少していった。

 第一次世界大戦の終わり頃には、医学校の数は以前の650校からわずか50校に激減し、毎年の卒業生の数は7500人だったのが、2500人になっていた。このフレクスナーによる様々な制限が立法化された結果、米国の医療は事実上ごく少数の裕福な家庭出身のエリート学生だけのものとなり、この小さな集団が医療独占体制からの強力な支配を受けるという構図が確立されたのである。

 フレクスナーの報告書のおかげで、平均的な米国市民はどれだけの損害を被っただろうか。最近の統計を調べると状況は朗らかになる。
ニューヨークタイムズ紙によると、米国人の一人当たりの年間医療費は1985年度に1800ドルであった。これに対して、英国では800ドル、日本は600ドルである。しかも、英国と日本の両方とも医療の質では米国に勝っている。例えば日本と比較すると、米国よりも生活水準は高いのにかかわらず、一人当たり年間600ドルで良質な医療サービスを提供している。(物価水準で比較して)これと同じ内容の医療は米国なら一人当たり年間500ドル以下で受けられるはずである。

 この一人当たり1300ドルの差額は何であろうか。米国民全体に換算すると、年間3000億ドルに達するが、これは医療独占支配体制が不当な請求や組織犯罪的活動、製薬トラストの操作などによって、米国民大衆から略奪している金額なのである。




 以上第1章まで
次回は第2章から紹介します。

 この本は20年以上前に書かれたものなので、この第1章最後の話の事情は変わってきていることと思います。それは日本も米国と同じような事態になっていっているのではないでしょうか。今では外国の製薬会社が数多く日本の薬業界に進出していますし、一人当たりの病院に掛かる費用も高くなってきています。
また、病院の人間的な質も、金儲け主義に走り、信頼のおける医師を見つけるのも困難になっているといえます。



※アメーバさんの勝手な一コマ空きや、
段落変えが続いていますね。いくらこちらで編集し直しても変わりません。
なので、ちょっと変に見えると思いますが、筆者ではないので再度読者様にはお知らせしておきたいと思います。