(2024.6.3)
「小児に対するインフルエンザワクチン」についての審議会(5/23)の論点はつぎのとおりです。
○(令和6年5月23日)ワクチン評価に関する小委員会(資料)抜粋要約
▽論点
小児のインフルエンザの疾病負荷、経鼻弱毒生インフルエンザワクチンの有効性・安全性に係る知見等を踏まえ、経鼻弱毒生インフルエンザワクチンについて、どのように考えるか。
⇒上記の小児に対する生インフルエンザワクチンは、令和6年度に発売予定とされており、つぎのとおりです。
○製品名:フルミスト点鼻液/一般名:弱毒生インフルエンザワクチン(3価)
▽添付文書(抜粋要約)
2歳以上19歳未満の者に、0.2mLを1回(各鼻腔内に0.1mLを1噴霧)、鼻腔内に噴霧する。
(重要な基本的注意)
本剤は弱毒生インフルエンザワクチンであり、飛沫又は接触によりワクチンウイルスの水平伝播の可能性があるため、ワクチン接種後1〜2週間は、重度の免疫不全者との密接な関係を可能な限り避けるなど、必要な措置を講じることを被接種者又はその保護者に説明すること。
(授乳婦に関する注意)
本剤は水平伝播の可能性があるため、ワクチン接種後1〜2週間は乳児との接触を可能な限り控えること。
(その他の注意)
海外で実施された経鼻弱毒生インフルエンザワクチンの臨床試験において、接種25日後にもワクチンウイルスが検出されたことから、本剤接種4週間以内はワクチンウイルスが残存している可能性がある。
<その他の副反応>1〜10%未満
インフルエンザ
⇒まず、予防接種法のこれまでの経緯について。
予防接種法は種痘法に替えてに制定(昭和23年)された。
予防接種法が改正(平成6年)され、それまで一般的な臨時の予防接種として行われてきたインフルエンザは、社会全体の流行を抑止するデータは十分にないと判断され、予防接種法に基づく対象疾病から除外された。
除外されたインフルエンザを、高齢者に限定して予防接種の対象疾病とするため、予防接種法が改正(平成13年)され、定期の予防接種において二類疾病(個人の発病、重症化を防止目的)が創設され、インフルエンザをその二類疾病と位置付け、当分の間対象者は、高齢者であって政令で定めるもの、とされた。
⇒「予防接種法の対象疾病からインフルエンザを削除」となった経緯などついて、国会議事録(抜粋要約、時系列)より。
○第129回国会 参議院 厚生委員会(平成6年6月9日)
▽政府委員
今回の法律をつくるに際しましての公衆衛生審議会の意見では、インフルエンザについては病気の重症化防止効果は認められるけれども、「全体の流行を阻止」するという形にはなかなか現在のワクチンではならないんではないか、ということです。
○第129回国会 衆議院 厚生委員会(平成6年6月22日)
▽国務大臣
平成4年12月に集団訴訟として最大規模の東京訴訟につきまして、東京高裁で国側の敗訴の判決がございまして、国としては上告を断念したところでございます。
今回の改正は、そのような判決の趣旨も十分踏まえまして対処した次第でございます。
○第129回国会 衆議院 本会議(平成6年6月23日)
▽議員
予防接種法及び結核予防法の一部を改正する法律案について申し上げます。
予防接種の対象疾病からインフルエンザを削除する。
○第142回国会 衆議院 厚生委員会(平成10年3月11日)
▽委員
予防接種法の改正のときに、今までのインフルエンザ接種は小中学生を対象にインフルエンザを蔓延するのを防ぐという意味で子供たちに打っていた、しかも集団接種であった。
そこで、科学的にその安全性、有効性が証明できないままにしているのはいかがなものかという御指摘を受けて、結局、集団接種がなくなりましたよね。
▽政府委員
今までは、小中学生に集団接種をするということで社会全体のインフルエンザの蔓延を防ぐということでやってきたのですが、いろいろな御意見があり、公衆衛生審議会も、集団に対して、流行を阻止すること、抑制することを判断できるほど資料が十分ではないということで、平成6年に予防接種法改正をいたしたわけであります。
○第153回国会 衆議院 厚生労働委員会(平成13年10月19日)
▽委員
平成6年の予防接種法の改正で、インフルエンザの予防接種は、子供に対する集団接種であったものが、この時点から取りやめになったということでございます。
結局は集団接種は取りやめになったわけでございますが、この取りやめになるまでの間、いつからいつまで何年間続いたのか、この際、明確にしていただきたいと思います。
▽政府参考人
インフルエンザの予防接種は、昭和23年の法制定時から昭和51年改正時まで、予防接種法に基づく予防接種としてではなくて、法的根拠のない勧奨接種といたしまして、乳幼児、小中学校児を対象として実施をいたしておりました。
昭和51年法改正時から平成6年改正時までは、一般的な臨時の予防接種の対象疾病となっておりまして、保育所、幼稚園、小学校及び中学校などの児童を対象とした接種を行ってきたところでございます。
なお、先ほど御説明しましたように、平成6年の改正時に対象疾病から除外した経緯がございます。
これらをトータルいたしますと、インフルエンザの接種期間につきましては、法的根拠のない接種は28年間、法的根拠のある接種の18年間、合わせまして46年間ということになっております。
▽委員
46年間接種をしてきたものが平成6年において取りやめになる、これは非常に不可思議といいますか、異常な事態ではないかなと思うところでございます。
ところで、諸外国の状況でございますけれども、今日時点でも子供に対する集団接種、かつて日本で行われていたようなこういう形で行われている国は確認できない、このようなことを承知しておりますが、それでよろしいでしょうか。
▽政府参考人
私どもの調べたところによりますと、アメリカ、英国、カナダ、ドイツ、イタリア、スウェーデンは、国もしくは州での勧告等によりましてハイリスクの子供を対象として接種を行っておりますが、いずれも健康な小児を含めた集団接種を行っている国はないというふうに承知をいたしております。
▽委員
今、経過を伺ってきたわけでございますけれども、このインフルエンザ予防接種がたどった経過、聞けば聞くほど、極めて異例であり、異常とも言える、こんな気がいたすわけでございます。
⇒冒頭の「小児のインフルエンザの疾病負荷」「生ワクチンの有効性・安全性に係る知見」などについて。
○小児に対するインフルエンザワクチンについて(令和6年5月23日)ワクチン評価に関する小委員会(資料)抜粋要約
▽経鼻弱毒生インフルエンザワクチンの有効性
一定の有効性が期待できるとPMDAにおいて評価されている。
<インフルエンザ疾患に対する有効性>
(主要評価項目)
・本剤接種群595人に対して、発症152人(25.5%)
・プラセボ群290人に対して、発症104人(35.9%)
【発症予防効果】28.8%
▽経鼻弱毒生インフルエンザワクチンの安全性
PMDAによる審査において、安全性に重大な懸念は認められていないと評価されている。
(本剤と関連がある副反応)
本剤接種群 (608人) において、本剤に関連がある特定有害事象及び副反応のうち、本剤接種群のみに見られ、10件以上発現した事象はインフルエンザのみであり、11例(1.8%)に認めた。いずれもPCR検査で本剤由来のインフルエンザウイルスが検出された。7例が軽度、4例(0.66%)が中等度であり、いずれも回復した。
⇒小児のインフルエンザの疾病負荷について。
▽NDBによる年齢階級別のインフルエンザ重症化率と患者数(3年間合算:2017年9月~2020年8月)
⇒年齢階級、受診者、死亡、重症(重症から死亡した場合を含む)、中等症(重症を除く)の順
0~9歳、7467200、156(0.00%)、2152(0.03%)、13383(0.18%)
10~14歳、3725300、36(0.00%)、380(0.01%)、1826(0.05%)
15~19歳、1967100、24(0.00%)、234(0.01%)、898(0.05%)
審議会資料などは以上です。
最後に。
前述したとおり、添付文書においては「その他の副反応」として「インフルエンザ」が明記されており、「ウイルスの水平伝播の可能性があるため…重度の免疫不全者との密接な関係を可能な限り避ける」「本剤は水平伝播の可能性があるため…乳児との接触を可能な限り控えること」「本剤接種4週間以内はワクチンウイルスが残存している可能性がある」 などと説明されています。
例えば、授乳婦や免疫不全者は、この添付文書の内容について、どのように感じ得るのでしょうか。
以上です。
<備考>
○医薬品等行政評価・監視委員会(令和4年12月27日)議事録
▽委員
例えば、仮に感染予防効果が半分になったとしても、それが公衆衛生対策上、このオミクロン株の流行を防ぐのかということです。
それで、一人一人が、自分が感染をするリスクが半分に減るということと、一般的な流行がどの程度変化するかというのは全く別の議論が必要なので、そこをもう一回考える必要があるわけで、そういうことと比較して小児にリスクを負わせるということがどういうことなのか。
今の議論を聞いていると、世間の流行に関して子供に打たせることによってそれを抑えたいというお気持ちなのだろうと思いますけれども、そういうリスクを子供に負わせていいんですかというのが、やはり私は懸念として残ります。
○インフルエンザとは(国立感染症研究所)
流行が周期的に現われてくるところから、16世紀のイタリアの占星家たちはこれを星や寒気の影響(influence)によるものと考え、これがインフルエンザの語源であると言われている。