(2023.9.29)

 

 

⇒国会議事録など(抜粋要約、時系列)はつぎのとおりです。

 

○第201回国会 参議院 総務委員会(令和2年6月2日)

▽委員

 まさか予備費が前例のない10兆円積まれるとは思いませんでした。聞きますと、過去最高の予備費は第一次補正の1.5兆円だと、そのように聞いております。

 

○第201回国会 衆議院 本会議(令和2年6月10日)

▽議員

 今回の補正予算では10兆円という憲政史上例のない規模の予備費を積んでいますが、その使途について政府にフリーハンドを与えるということは、財政民主主義国民への説明責任の観点から、大変問題です。令和2年度当初予算の予備費5000億円からアベノマスク配布に233億円もの費用が充てられたことは、記憶に新しいことだと思います。

 

○第201回国会 参議院 財政金融委員会(令和2年6月12日)

▽委員

 戦時中でも戦前でも、昭和18年に本予算に対して予備費というのは10%、これが最大なんですね。今回のような、まあ30%ぐらいですかね、こういう予備費というのは戦前でさえなかったと。

 

○第201回国会 参議院 本会議(令和2年6月12日)

▽議員

 指摘しなければならないのは、政府支出額約33兆円の3割弱に当たる10兆円が予備費に計上されたことです。コロナ対策とはいえ、予算の執行を政府に白紙委任する形になり、看過できません。明らかに財政民主主義に反します。追加の対策が必要となれば、第三次補正予算案を編成し、国会で審議されてしかるべきです。

 

○第207回国会 参議院 本会議(令和3年12月21日)
▽議員
 会計検査院は、多額の繰越額や不用額を計上したコロナ関連事業の適時適切な実施を求めています。
▽内閣総理大臣(岸田文雄君)
 会計検査院の御報告については、その内容を受け止め、令和3年度補正予算につきましては、盛り込まれた施策を、できるものは年内から迅速かつ適切に実行していくよう、各大臣と連携を図ってまいります。
▽議員
 多額の翌年度繰越金と不用額が生じたということは、そもそも予算の積算が適正に行われていたのか疑問を感じます。
 

○第208回国会 参議院 予算委員会(令和4年2月25日)
▽内閣総理大臣(岸田文雄君)

 財政については様々な議論があります。そしてその中で、財政の単年度主義ということについてどう評価するか、こうした議論があります。
 そして、この長期的な視点で政策を考えるという観点からした場合に、余り予算の単年度主義陥ってしまっては不都合な部分もある、こうした議論の中で、この予算の単年度主義の弊害を除くための一つの手段として基金という手法を使わせていただきたいということをお願いしているわけであります。
▽委員

 いや、予算単年度主義評価とか、陥るとか、言えないと思うんです。憲法86条で決まっているわけですから、それは守っていかなければいけないと思う。

 

○第208回国会 参議院 決算委員会(令和4年4月6日)
▽委員
 アベノマスクと言っちゃうといろいろあれだと思うんですが、政府作成の布製マスク配布事業の実施状況等についてということについて伺っていきたいと思います。
 本事業に関して何が問題だったと会計検査院は評価なさっているのでありましょうか。
▽説明員

 布製マスク配布事業につきまして検査しましたところ、布製マスクの配布、調達契約において、厚労省は仕様書を作成せず、その品質基準等を書類上明確にしておらず、また、文部科学省は仕様書は作成していたものの、マスクの品質基準についてホルムアルデヒドの検出基準しか示しておりませんでした。また両省は、不良品問題が発生したことを契機としまして検品等業務に係る契約を締結するなど、当初予定していなかった対応を事後的に行う必要が生じていました。さらに、大量の布製マスクの在庫が発生し、これらの布製マスクの保管等に多額の費用を要する状態が継続していたところでございます。

 

○第208回国会 衆議院 本会議(令和4年5月25日)

▽議員

 令和2年度に始まったコロナ予備費は、今年度で総額20兆円。ざっと国民1人当たり20万円が、政府の自由に使えるポケットマネーに入ったわけです。

 本予算成立から僅か一月後の予備費支出は、政府の予見能力がゼロであることを露呈しています。年度が始まったばかりの4月中に1.5兆円も予備費を支出した例は過去にありますか。特に、一般予備費が4月に3945億円も支出された例はありますか。

 累次の閣議決定で、予備費の使用は、国会開会中はこれを行わないのが原則とされています。なぜ、国会開会中なのに、補正予算でなく、予備費を使うのですか。

▽内閣総理大臣(岸田文雄君)

 お尋ねの、4月に1.5兆円の予備費が使用された例や3945億円の一般予備費使用された例はないものと承知しております。

 御指摘の閣議決定との関係については、国会開会中における予備費の使用について、予備費の使用によらなければ時間的に対処し難いと認められる緊急な経費等であれば可能とされています。

 

○第210回国会 衆議院 予算委員会(令和4年10月17日)

▽委員

 一回やっちゃうとやはりこれは楽だから、もうそれが当たり前になっちゃうんですよ。今回も総理は3.5兆円の予備費を使って経済対策をやられたんですけれども、国会を開いて補正予算の形で本来やるべきことだったと思うんですよ。国会開会の直前ですよ、予備費を手当てしたのは。国会で議論されないまま、勝手に政府が使い放題やっている。これはやはり健全じゃないと思いますね。

 

○第210回国会 衆議院 財務金融委員会(令和4年11月2日)

▽委員

 予備費は、憲法87条に定められた、予見し難い支出がある場合に、あらかじめ予算として計上することができるようになっています。でも、これがどんどんどんどんと今膨らみ続けてきている。膨らんでいるだけではなくて、補正があるたびに予備費を積み増したり、新規につくったりする。私は、これは濫用、多用だと思うんですね。

 これは、与党、野党関係なく、立法府にいる議員として、そこには危機を持たなければいけないと思います。政府のつかみ金じゃないですか、予備費というのは。政府に税金の使い方を白紙委任する額が増えていく、しかも、補正があるたびに積み増す。私は、これは財政民主主義に反すると思います。

▽国務大臣

 先生から、予備費が濫用されるべきではないということの御指摘を受けましたが、その問題意識はまさに御指摘のとおりであると思います。

 ですから、その使用に当たりましては、必要性や緊急性等についてよく所管省庁との間で議論、検討を行った上で、憲法や財政法の規定に従って適切に判断していくことが必要である、そういうふうに考えております。

 あわせて、予備費の使用につきましては、国会や国民に対して説明責任を果たしていかなければならないと思います。

(省略)

▽委員

 当初予算を予算編成している意味がなくなっているじゃないですか。補正で後でどんと積んで、そしてその中身を積み増して予備費でやって、そして、その予備費はどうなっているかというと、繰越し、不用ですよ。そして、使っているのが分からぬと。

 大臣、締めませんか、財務省を。こんなことをやっていたら、財政運営の規律がなくなってしまうんです。

▽国務大臣

 今、先生から、財務省、最近の予算編成の在り方とか予備費の問題、あるいは繰越し、不用が出ている問題等で、大変に厳しい御指摘もございました。そういうような御指摘はしっかりと受け止めていかなければいけないと思っております。

 これからも、そうした緩みがあるとか、そういったところを御指摘を受けないように、まずはしっかりと財政再建、財政規律の旗を降ろさずに頑張っていきたい。

 御激励をいただいた、お叱りをいただいた、そういう思いで、今お話を伺ったところでございます。

▽委員

 私は、財政規律の前に財政運営規律を言ったんですよ。運営の規律なんです。

 政府が3.5兆円の予備費の使用を決定する1か月前に、私たちが国会召集要求書を提出して物価高等の対策の必要性を指摘しているのだから、憲法が定める予備費の要件である予見し難い予算の不足に充てるためとは言えず、補正予算を編成する時間も十分あった。しかし、予備費でやっているんですね。また、臨時国会召集要求書が提出され、放置しておきながら、多額の予備費を使用決定した直後に臨時国会を召集する。これはまさに国会軽視と言わざるを得ないです。

 

○第211回国会 衆議院 本会議(令和5年1月25日)

▽内閣総理大臣(岸田文雄君)

 予備費の支出は、憲法、財政法の規定に従って事後に国会の承諾を得る必要があることから、財政民主主義に反するものではないと考えております。

 

○会計検査院(令和5年9月)予備費の使用等の状況に関する会計検査の結果について

▽予備費使用額の積算基礎の状況

 予備費使用要求額等の積算の状況についてみたところ、2府省の4事業においては、積算の対象とした期間として予備費使用決定日から年度末までの日数を超える期間等を用いていた

 そしていずれにおいても、予備費使用相当額の全額が翌年度に繰り越されていた

 2府省は当該4事業について、いずれも予備費使用要求時には年度内に事業を完了することを予定していて、積算に用いた期間については、飽くまで年度内に要する経費の規模を算出するために用いたものであるなどとしている。

 その上で、2府省が予備費の使用要求を行う際に、予備費使用決定日から年度末までの短期間でどのように事業を完了することを想定していたのかなどについても確認したが、その内容は判然としなかった

 予備費は国会による事前議決の原則の例外であるとされていること、予備費使用要求額等の積算は予算単年度主義に基づき、年度内の支出見込額に基づいて行われる必要があることなどから、予備費使用相当額の繰越しの状況については、予備費使用決定時の想定も含めて十分な説明が求められると考えられる。

 

⇒「年度末までの8日間で事業を完了する予定としていた」と説明されている事例について。(その他2事例を文末の備考に掲載しています。)

<事例>

 厚生労働省は「新型コロナウイルス感染症に対応した自殺防止対策事業」を実施することとした。

 そのため、厚生労働省は、令和3年3月22日にコロナ対策予備費10億円の使用を要求し、同月23日の閣議決定により予備費使用要求額と同額の使用決定が行われていた。

 上記予備費使用要求額の算定に係る積算根拠資料を確認したところ、厚生労働省は、NPO法人等1団体当たりの単価に団体数を乗じて予備費使用要求額を算定していたが、単価の算出に当たり、人件費については240日間、また、通信料及びシステム保守等に係る経費については12か月間をそれぞれ対象期間としていた。

 これについて、同事業の事業担当部局は、2年度末までの8日間で事業を完了する予定としていたとしている。そして、積算根拠資料における240日間、12か月等の記載は、同事業に要する経費の規模感を示すものであるとしている。

 なお、厚生労働省は、実際の事業実施に当たっては、予備費使用決定後、公募により事業実施団体を選定することとして、事業実施団体が満たすべき要件等の調整や公募要綱の策定等に時間を要したとして、2年度末までに交付決定を行うことができず、予備費使用相当額の全額を3年度に繰り越していた。

 そして同省は、3年3月31日から4月14日まで公募を行い、事業実施団体を選定した後、予備費使用決定日のおよそ4か月後の3年7月29日に第1回目の交付決定を行い、4年4月10日までを提出期限として事業実施団体から事業実施完了の実績報告書の提出を受け、5年3月29日までに交付金の額の確定及び精算を行っていた。

 

 

 最後に。

 会計検査院「短期間でどのように事業を完了することを想定していたのかなどについても確認したが、その内容は判然としなかった。」

 例えば上記事例について。

 8日間のうちに、まず「事業実施団体が満たすべき要件等の調整や公募要綱の策定等」を行い、策定した公募要綱に基づき「公募により事業実施団体を選定」した後、交付決定を行い、決定された事業実施団体は「事業に要する経費の規模感」が「人件費240日間、通信料及びシステム保守等12か月間」である「自殺防止対策事業」を、数日で実施完了したうえで、厚労省に実績報告書を提出し、厚労省は提出された実績報告書に基づき「交付金の額の確定及び精算」を行う、という想定だったことになります。

 なお、8日間のうち、令和3年3月27日、28日は土曜、日曜でした。休日も勤務する想定だったのでしょうか…そんなレベルの話ではないですね。

 

 

 以上です。

 

 

<備考>

⇒「年度末までの8日間で事業を完了する予定としていた」と説明されているその他事例について。

<事例1>

 内閣府は、地域における女性の活躍を迅速かつ重点的に推進することを目的として「地域女性活躍推進事業(つながりサポート型)」を実施することとした。同事業は、地方公共団体がNPO法人等に相談支援等を委託して実施するものである。

 そして、内閣府は、同事業の事業実施主体となる地方公共団体への交付金の財源として、令和3年3月22日にコロナ対策予備費13億余円の使用を要求し、同月23日の閣議決定により予備費使用要求額と同額の使用決定が行われていた。

 上記予備費使用要求額の算定に係る積算根拠資料を確認したところ、内閣府は、NPO法人等の委託費については、相談員の1か月当たりの人件費単価に月数及び人数を乗ずるなどして算定していたが、月数については、12か月としていた。

 また地方公共団体における事務費については、1か月当たりの事務管理費の単価に月数を乗ずるなどして算定していたが、月数については、12か月等としていた。

 これについて同事業の事業担当部局は、2年度末までの8日間で同事業を完了する予定としていたとしている。

 そして、積算根拠資料における12か月等の記載は飽くまで同事業の規模感を示すものであり、翌年度の支出見込額を含めて積算したものではなく、翌年度への繰越しを前提としたものではないとしている。

 また、当該積算根拠資料の提出を受けた財務省は、同資料に12か月等の期間に関する記載があったとしても、同事業は年度内の執行がなされることが前提であり、その旨を内閣府に確認したとしている。

 なお、内閣府は、実際の事業実施に当たっては、地方公共団体が関係団体との調整により実施計画の作成等に不測の時間を要したとして、2年度内に交付決定を行うことができず、予備費使用相当額の全額を3年度に繰り越していた。そして、3年6月30日に初回の支出負担行為を行い、4年4月8日を提出期限として地方公共団体から事業実施完了の実績報告書の提出を受け、同月15日補助金の額の確定及び精算を行っていた。

 

<事例2>

 厚生労働省は、児童一人当たり5万円の「低所得の子育て世帯に対する子育て世帯生活支援特別給付金」を支援する事業を実施することとした。

 そのため、厚生労働省は、同事業の実施主体となる地方公共団体への補助財源として、令和3年3月22日にコロナ対策予備費2174億余円の使用を要求し、同月23日の閣議決定により予備費使用要求額と同額の使用決定が行われていた。

 同給付金は、迅速な支給を実現する観点から、支給対象者のうち、まずは児童扶養手当受給者について、扶養手当の支給情報に基づいて可能な限り早期に支給(プッシュ型支給)を行うこととし、それ以外の支給対象者には、申請に基づき支給(申請型支給)を行うこととしており、厚生労働省は、2年度末までの8日間で同事業を完了する予定としていた

 上記予備費使用要求額の算定に係る積算根拠資料を確認したところ、厚生労働省は、地方公共団体の事務費に係る積算のうち、人件費等について、プッシュ型支給については3か月間、また、申請型支給については6か月間又は10か月間を対象期間とするなどしていた。

 これについて、同事業の事業担当部局は、地域の実情に応じて年度内に直ちに支給を行うと判断する地方公共団体も想定され得るほか、それ以外の地方公共団体においても、迅速な支給に向けて年度内から準備を行うことができるような金額の算定を行ったものであり、翌年度に事業を継続することを予定していたものではないとしている。

 また、当該積算根拠資料の提出を受けた財務省は、同資料に3か月間、6か月間又は10か月間を対象期間とすることが記載されていたとしても、年度内に地方公共団体から交付申請を受け付けて執行することが考えられるものであり、翌年度の支出見込額をあらかじめ見込んで積算したものではないことを厚生労働省に確認したとしている。

 なお、厚生労働省は、実際の事業実施に当たっては、予備費の使用決定後、給付金の支給対象者の把握や支給要件の確認に時間を要したり、支給事務を行う人材の確保が困難となったりしたとして、年度内に交付決定を行うことができず、予備費使用相当額の全額を3年度に繰り越していた。そして、3年4月16日に初回の支出負担行為を行い、4年6月1日までを提出期限として地方公共団体から事業実施完了の実績報告書の提出を受け、5年3月16日までに補助金の額の確定及び精算を行っていた。