(2023.9.15)

 

 

 女性について、令和5年の3つの白書(厚生労働白書、経済財政白書、男女共同参画白書)における内容(抜粋要約)は、つぎのとおりです。(当記事は、「女性」に焦点を絞った内容としています。)

 

 我が国の家族の姿は変化しており、近年では単独世帯が全世帯の約4割を占めるようになった。

 未成年の子を育てるひとり親世帯は、1988年は102.2万世帯(母子世帯数84.9万世帯、父子世帯数17.3万世帯)であったが、子供がいる世帯が徐々に減少する中、2021年は134.4万世帯(母子世帯数119.5万世帯、父子世帯数14.9万世帯)へと増加している。

 2021年、ひとり親世帯のうち母子世帯が約9割を占める。

 ひとり親世帯の相対的貧困率約48%

 離婚した母子家庭が養育費を受けている割合28.1%にとどまっている。           

 母子世帯の母自身の平均年間収入272万円(父子世帯は518万円)であり、児童のいる世帯の1世帯当たり平均所得金額813.5万円と比べて低い水準となっている。

 母子世帯の母は86.3%が就業、このうち「パート・アルバイト等」が38.8%、「正規の職員・従業員」が48.8%。

 一方、父子世帯の父は88.1%が就業、このうち「パート・アルバイト等」が4.9%、「正規の職員・従業員」が69.9%、「自営業」が14.8%。

 ひとり親の女性は、有配偶女性と比較して、仕事時間が長い

 6歳未満の子供を持つひとり親の女性が、家事・育児に充てられている時間は、6歳未満の子供を持つ専業主婦の約5割、共働き女性の約7割

 

 我が国の女性の賃金は男性の賃金の約8割にとどまり、諸外国と比較しても、大きな格差が存在している。

 男性の割合が大きい正社員と、女性の割合が大きい非正社員の間に給与差があることに加え、同じ雇用形態でも男女間に給与差があり、その差は年齢とともに上昇する傾向がある。

 2022年の年齢階級別に男女の年収差をみると、20~29歳の年齢階級で、女性の年収は男性対比で約22%低く30~39歳では約36%低く50~59歳では約43%低くなっている。

 こうした年収差は、女性の方が男性よりも労働時間が短いだけでなく、女性の時給が男性よりも低いことにも起因している。

 時給の男女差が生じる背景としては、第一に、女性の方が正規雇用の割合が低い。特に年齢階級が上がるにつれてこの差が広がる傾向がある。男性では、30~59歳の年齢階級における正規雇用割合は、8割強で安定しているが、女性では20~29歳の6割強をピークに、年齢階級の上昇に伴い低下する。

 第二に、管理職割合に大きな男女差がある。勤続年数を揃えてみても、月給ベースで男女間賃金格差が残る下で、管理職割合にも大きな男女差が残っている。

 

 内閣府の調査によれば、職場の役割分担に関するつぎの項目については、女性よりも男性の方が「そう思う」「どちらかといえばそう思う」との傾向が強い。

「職場では、女性は男性のサポートにまわるべきだ

「同程度の実力なら、まず男性から昇進させたり管理職に登用するものだ

女性社員の昇格や管理職への登用のための教育・訓練は必要ない

「男性は出産休暇/育児休業を取るべきでない

「仕事より育児を優先する男性は、仕事へのやる気が低い

 

 男女別の1日の時間の使い方のデータを見ると、現在でも有償労働(仕事)時間が男性無償労働(家事関連)時間が女性に大きく偏っている。

 家事・育児等の負担が女性に偏ること、長時間労働の慣行が変わらないことで、我が国の女性の社会での活躍の遅れや、男女間賃金格差など、社会に様々な歪みが生じている。

 無償労働時間が女性に偏っているため、仕事と家事・育児等の両立を課題に感じる者が多いことが、女性の職業生活での活躍が進まない要因の一つとなっている可能性が高い。

 2021年時点で、6歳未満の子供を持つ妻・夫の家事関連時間の妻の分担割合を見ると、妻が無業(専業主婦)の場合は家事関連時間の84.0%、有業(共働き)であっても77.4%を妻が担っている。

 また、生活時間の国際比較を行うと、我が国においては、諸外国に比べて男性有償労働時間が極端に長く無償労働時間が極めて短いことが特徴であり、このことが我が国の女性の社会での活躍、男性の家庭や地域での活躍を阻害する一因になっていると考えられる。

 諸外国と比較すると、我が国の有償労働時間女性の分担割合は37.5%11か国中で最も小さい一方で、無償労働時間女性の分担割合は84.6%11か国中で最も大きく、男女間での有償労働時間と無償労働時間の分担のバランスが極端であることがうかがえる。

 

 近年、非正規雇用労働者は全体として増加傾向にあり、雇用者の約4割を占める状況にある。

 非正規雇用労働者全体の男女比を見ると、男性よりも女性の割合が大きい

 女性は男性と比較して正規雇用比率が低く、2022年、女性雇用者の半分以上が非正規雇用労働者となっている。一方で、男性雇用者の約8割が正規雇用労働者となっている。

 

 現状では、女性の正規雇用比率は、出産後に低下する傾向にある。

 我が国では、男女間の家事・育児時間の偏りが大きいことにも表れているように、出産後の無償労働時間は、女性で増えやすい

 子供が生まれたことにより、仕事との向き合い方を変え、仕事の時間を制限するのは、男性と比べて女性が多い

 結婚後、特に子供を持った後は、女性がライフスタイルを変え、夕方以降の家事・育児等を一人で担い、男性は労働時間が増える傾向にある。

 働く女性が増える一方で、家事関連時間は妻仕事時間が夫偏ることで、社会に様々な歪みが生じている可能性がある。

 20~30代の女性が非正規雇用労働者として働くことを選択する際には、仕事と家事・育児等を両立することを重視している。

 20~30代の女性は、正規雇用労働者として働く条件として、仕事と育児・介護との両立に関して理解のある職場であること、自分の家事・育児負担が軽くなること、とする割合が大きい。

 無償労働時間が女性に偏っている我が国において、仕事と家庭の両立に課題を感じている女性が多いことが推察される。

 こうした中、全年齢平均と、子供がいる女性の就業率の差は我が国で大きくなっており、出産を機とした離職は、女性の勤続年数が男性よりも短くなる一因になっている。

 国際比較の観点からは、我が国では家事・育児負担が女性に偏る傾向が強い中で、男性の育休取得率が低く、家計のベビーシッターの利用割合も低い。

 出産を機に、女性の労働供給量が男性に比べ抑制されることで生じうる所得の減少や昇進の遅れは、女性にとってハードルである。

 さらに、出産を機としたキャリア中断が高い割合で発生することは、いわゆる統計的差別を生み出す原因となり、女性から良い就業機会を奪っている可能性も考えられる。

 女性の年齢階級別正規雇用比率25~29歳の59.7%をピークに低下している。

 出産を契機に働き方を変える、もしくは一旦退職し、子供が大きくなったら非正規雇用労働者として再就職する場合が多いと考えられる。

 女性と男性では非正規雇用労働者として働くことを選択する理由が異なり、女性は、正規雇用労働者として働くことと、家事・育児等を両立させることに課題を感じ、非正規雇用労働者として働くことを選択している場合が多い。

理想の子供数を持たない理由」について、「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」を挙げる割合が最も大きいが、正規雇用労働者として働いている女性の場合、「自分の仕事に差し支えるから」という理由を選択する割合が大きく、仕事か家庭かの選択に迫られ、子供を持つことをあきらめている可能性がある。

 現在、我が国の女性においては、子育てを行うことと、キャリアの追求のどちらかを選択しなければならない場合が多く見受けられる。

 結婚し、さらに子供が生まれると、女性は家事・育児と仕事を両立することを目的に働き方を変える場合が多くその結果、我が国では女性の非正規雇用労働者の割合が大きいのが現状である。

 

「生涯を独身で過ごすというのは、望ましい生き方ではない」という考えを支持する割合は、2015年には男性で64.7%、女性で58.2%であったが、2021年には男性で51.1%、女性で39.3%と、いずれも大幅に低下

「結婚したら子どもは持つべきだ」という考えを支持する割合も、2015年には男性で75.4%、女性で67.4%であったが、2021年には男性で55.0%、女性で36.6%大幅に低下

 50歳時点の未婚率は、1970年時点で男性1.7%、女性3.3%だったところから、2020年には男性28.2%、女性17.8%まで上昇している。

 今後も緩やかに上昇し、2040年には男性で29.5%、女性で18.7%になると推計されている。

 男性では、年収が下がるほど未婚率が高くなる。

 一方、女性では、年収200万円未満と比べると年収200万円以上の方が未婚率が高い

 年収と未婚率の関係には、男女差があることがうかがえる。

 

 役職者に占める女性の割合を見ると(常用労働者100人以上を雇用する企業)、上位の役職ほど女性の割合が小さく、2022年は、係長級24.1%、課長級13.9%、部長級8.2%となっている。

 管理的職業従事者に占める女性の割合は、諸外国ではおおむね30%以上となっているところ、2022年、我が国12.9%と、諸外国と比べて低い水準となっている。

 中学校及び高等学校の校長に占める女性の割合は1割未満

 大学・大学院の教授等に占める女性割合は2割未満

 我が国では理工系学部の卒業者では、女性割合の低さが際立っている。固定的な性別役割分担意識や無意識の思い込みが、影響を及ぼしている可能性がある。

 

 人身取引(性的サービスや労働の強要等)被害女性の保護については、婦人相談所においては、479名(2001年4月1日~2022年3月31日)の保護が行われてきたところである。

 婦人相談所における一時保護の理由をみると、20歳以上では「夫等からの暴力」が最も高い。

 20歳未満では「子・親・親族からの暴力」が最も高い。

 婦人保護施設の入所理由をみると、どの年代の入所者も暴力が原因で入所に至っていることがうかがえる。

 

 性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターへの相談件数は、年々増加

 女性の約4人に1人は、配偶者から暴力を受けたことがあり、女性の約10人に1人何度も被害を受けている。

 女性の約14人に1人無理やりに性交等された経験がある。

 加害者は、交際相手、配偶者、職場の関係者など、大多数は被害者が知っている人となっており、全く知らない人からの被害は1割程度。

 性暴力被害について、女性の6割程度が、誰にも相談していない

 被害にあったときの状況について、女性は「相手から、不意をつかれ、突然に襲いかかられた」が最も多かった。

 

 医療が進んだ現在でも出産は命がけであるが、個人差はあるものの、妊娠した女性は、妊娠中から様々な心身のトラブルに見舞われる。

 そして、出産時の身体へのダメージは交通事故に例えられることもあるほど、非常に大きく、産後もそのダメージの後遺症を抱えながら育児を行うことになる。

 

 新型コロナの流行により、困難な問題を抱える女性の課題は顕在化してきた。

 例えば、在宅時間の増加などに伴うDVの問題、外出自粛が求められた中で家庭に居場所がない若年女性の存在、大きく影響を受けた飲食・宿泊業などの非正規雇用労働者等に女性の割合が高いことによる、生活困窮の問題などがある。

 女性、特に非正規雇用の女性に大きな影響をもたらしており、解雇労働時間の減少など雇用に大きな変化が起きた者の割合は、女性は26.3%と約4人に1人となっている。

 

 我が国の自殺者数は、1998年から14年連続して年間3万人を超えて推移していたが、2010年以降10年連続の減少となり、2019年の年間自殺者数20,169人は統計開始以来最小となった

 しかし2020年は、特に女性小中高生の自殺者数が増え、総数21,081人は11年ぶりに前年を上回った

 2021年には、総数21,007人は前年から減少したものの、女性の自殺者数は増加し、小中高生の自殺者数は過去2番目の水準となった。

 そして2022年には、総数21,881人は前年から増加し、女性は3年連続の増加となっている。また、小中高生の自殺者数は514人と過去最多となっている。

 

 

 以上です。

 

 

<備考>

○世界経済フォーラム(WEF)2023年版

「日本のジェンダーギャップ指数は146カ国中125位」「G7において日本は最下位」

1 アイスランド

2 ノルウェー

3 フィンランド

6 ドイツ

15 英国

30 カナダ

40 フランス

43 米国

79 イタリア

105 韓国

107 中国

124 モルディブ

125 日本

126 ヨルダン

144 アルジェリア

145 チャド

146 アフガニスタン