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過日、地方公務員のAさん(北関東の市役所勤務。40代男性管理職。既婚)とお話をする機会がありました。


Aさんは人口20万人弱、一般会計予算約800億円、職員数約1,200人の北関東では中堅の市にお勤めです。

お会いして開口一番、Aさんは、

「ねぇ和龍さん。親が就かせたい職業で国家公務員、地方公務員って不動のナンバー1・2じゃないですか? あれ、本気でそう思ってるんですかね?」と仰います。

Aさんはわたしが公務員の実情に詳しいことをご存知なので、ため息をつきながら「おかしいよね?」と言外に語っています。

続けてAさん曰く、

1  少子高齢化で民生費(高齢者や介護、生活保護などの社会福祉費)ばかりが増大し、未来に向けた創造的な予算や人員配置は極めて限られている。

福祉部門は予算も人員も増える一方で、政策部門や事業部門は予算も人員も減る一方。

10年前に比べて介護保険課の人員は1.3倍に、生活保護課の人員は1.4倍になったそうです。

目の前の福祉も大切ですが、市や地域の未来を描く政策投資も大切なのに……。


2  国や県からの事務の権限移譲により市が主管する事務は大幅に増えている。

20年前、いわゆる「地方分権一括法」が施行され、多くの事務が市町村に移譲され(押し付けられ)ました。


3  しかし、国からの(事実上の)指導により職員の定数管理が厳しく、職員は減る一方である。

Aさんが勤める市役所はこの10年間で10パーセント以上の職員削減が行われたとのこと。

退職者に対して新規採用者数を抑制したり、勧奨退職などにより職員を減らしたそうです。


4  ゆえに、長時間の時間外勤務が常態化している。しかし、時間外勤務手当は申し訳程度。

過労死ラインの月80時間なんて軽くオーバーしている職員も多いが、時間外勤務手当は暗黙の了解で2~30時間分しか付けられないとか。

また、Aさんの市では職員全体に対する課長補佐の比率が高いそうです。

理由は、課長補佐は管理職であることから時間外勤務手当の対象外。管理職手当(3万数千円)だけで、働かせ放題だからだとか……。


5  そのような中でも組織と人事は硬直的で職員(特に若手職員)の能力が活かせない。

Aさんが勤める市役所は入庁12年目で係長への昇格試験が受験でき、係長を5年経験すると管理職(課長補佐)への昇格試験が受けられるそうです。

つまり、大卒だと最短で35歳くらいで係長、40歳過ぎで課長補佐、47歳くらいで課長になるそうで、どんなに優秀な職員であってもこの壁は崩せないとのこと。


6  硬直した組織、人事、予算、職員マインドは市役所を化石化させる。

Aさんが勤める市役所はZOOMによるオンラインミーティング環境が無いそうです。

正確に言えば、あるにはあるのですが回線の容量が小さすぎてZOOMがまともに動かないそうです。

その他、市民課や出納課のレジは現金のみ(クレジットカードも電子マネーも使えない)とか、個人アドレスに割り当てられたメールボックスの容量が小さすぎて、ちょっとした資料でも分割して送って貰うとか……(-_-;)


こんな組織が20年後、30年後存立できるのでしょうか?


地方自治体として市役所という存在が無くなることはないのでしょうが、中長期的な視野に立って根本的な役割と存在意義を問い、適正な人、カネ、組織、システム機器等を構築するべきではないでしょうか? と真剣に悩まれていました。


Aさんが危惧するとおり公務員は斜陽産業です。

わたしの主観では、現在午後3時半ってところですね。

まだまだお昼の域ですが、間もなく夕方になり、陽が落ちるのが早い時期(基礎体力の低い市町村)ならばすぐに薄暗くなるでしょう。


バリバリと自分の力を試したい!

大学や大学院で培った知識や経験を地方行政の場で発揮するんだ! と青雲の志を持って入庁すると1年も待たずに気持ちが折れるでしょう。


公務員に任用されると全体の奉仕者としての宣誓を行いますが、今や本当に「労働奉仕するだけ」のワーカーになりつつあります。

宣誓は政令(国家公務員)、条例(地方公務員)に定められた服務の宣誓と呼ばれるものです。


そのような状況にあってか、かつては若手職員が辞めるなんてことはありませんでしたが、いまや珍しくありません。

しかも優秀とみられていた若手や、昇格試験に受かって数年の中堅職員が「未来が見えない」と言って職場を見限り、起業したり民間企業に転じるケースが増えています。

ここ20年くらい、地方公務員上級試験に合格して市役所に入庁する方々は本当に優秀な人ばかりです。

大都市近郊の中・大規模市役所ですと、六大学以上の学歴を有する人はザラですし、パソコン等のITスキルは高く、課題発見能力やその解決能力も高く、知識や考える力、行動力、コミュニケーション力などあらゆる面で同じ世代の平均以上の人たちであることは間違いありません。


その優秀さ故、入庁後のギャップに悩み、悩んだ末に辞めていくのだと思います。

そんな若手、中堅の姿を見て「辞めてどうするのかねー」などと見下し、公務員が一番だと思っている視野狭窄な老害職員もいます。


わたしはそんな老輩は意識も知識も認識も自分の半径2メートルしか見えていない痴者だと思っています。


なのでわたしはAさんに「辞めちゃいなよ❗️」と申し上げ、今後具体的にどう動いていこうか検討に入りました。


「新しい酒を古い革袋に入れ」てはいかんのです!!