「ロメオとジュリエット
みたいね!」
娘に言われ、笑い合う。

夫の病院へ洗濯物を
取りに行くと
看護師さんが
「旦那さんに
奥さんを見てもらおうと
思いますので、
外から手を振ってください」
と言われ驚く

病棟の廊下の突き当たりに
大きな窓があり
外を見れる場所がある
そこに、夫を車椅子の移し
連れてくるとの事

四階を見上げると
車椅子の夫が連れて来られ
スタッフの方々がお世話
され、私に手を振られる

眼鏡を掛けさせて
もらってないので、
見えないと思うが
不自由な手をあげる
心なしか手首も動いる
遠すぎて表情も判読不可能
も、確かにおとうさんだぁ

私は両手あげ
一生懸命ふる
10分程度が
とても長く感じた 

それを見た人は
不思議に思ったかも

四階の窓のおじいちゃんに
駐車場で手を振り合う
おばあちゃん

考えたら、恥ずかしいが
娘から「ロメオとジュリエット
の逆バージョンだね」
と言われ、笑いに変わる

人生終盤の私だが
一生忘れない
シチュエーションだった
お父さんは後遺症で短期記憶
ができないので
すぐ忘れるだろうな

それでも、
何か温かい感情は
残るだろうな

病棟看護師さんや
リハビリスタッフに
深々と頭を下げ
「ありがとうございました」
と声が届くよう叫ぶ

多用な時間の中に
時間をさいて頂く心遣いに
元気を頂き、こころの中で
「いいこともあるな」
とつぶやく