常連客『見ない顔ですね、初めてですか?』
私たち『はい』
常連客は自分を含めた他の常連客たちを紹介してくれた。
無愛想なバーテンは女性だと言うこともわかった。
私たちは彼女を男性だと思っていたのには訳がある。
彼女はノーメイクで黒い髪のショートカット、そのうえ麻の帽子を深く被り、細見の体にパンツを履き、ほとんど声を発さなかったからだ。
私たちは驚いて彼女をもう一度まじまじ見てしまったが彼女はこちらをちらっと見てまた無表情のまま顔を伏せた。
その様子に私たちを気遣う常連客。
若かった私たちはすぐに彼らと打ち解けた。
しばらく会話を楽しんでいるとこの店恒例のジェンガゲームが始まった。
常連しかいないこのバーでは唯一のバーテンである彼女も手を止めゲームに参加するようだ。
日本人も外国人も皆輪になりジェンガゲームが始まった。
倒したらテキーラを一気するという単純なルールだったが、すでに皆かなりお酒がまわっていたので何度も倒れるジェンガと一気。
笑い声が止まず、浴びるようにテキーラ祭り。
気が付くと皆好き好きに寝転がり、潰れていった。
真夜中を過ぎ、タクシーを呼ぼうとする私に
バーテンの彼女が話しかけてきた。
バーテン『ここで寝ていけばいいじゃん、皆いつもそうだよ』
ここではここ特有な時間が流れている。
ぐっすり眠る親友を起こす気力も無かった私は親友が起きるまで一服でもしていようと彼女の言葉に甘えることにした。
古く大きなこの建物には薄汚れて外が見えないような出窓がいくつかあり、私はその中のひとつの出窓に腰かけた。
すると彼女がブランケットとフルーツジュースを私に渡してくれ、隣に静かに腰かけた。