だからこそ拓海は病院を訴えることをせず、
むしろ正直に話してくれたことを
感謝するコメントを繰り返した。
毎日頭を下げ続けてた小春が一度だけ、
みさきの前でだけ、こう言った。
「中国のスパイを助けた借りを
やっと返してもらったわ」
以前、日本に潜伏してた中国人スパイを
助けた時のことを言ってるのだ。
「政治よ、日頃の政治活動が役に立つのよ」
小春はみさきに独り言のようにつぶやいた。
みさきの政略結婚も
こうした事件の時のための布石なのだろうか。
みさきはそれならそれでいいと
思うようになっていた。
愛はなくても、築きあげていく
努力をおしまなければ
育っていくに違いない。
みさきはもう母のいう婚約者を
受けいれることにした。