渋谷は人ごみだらけ。
「有名人なんだから、帽子かぶったら」
ひなたが言った。
「前みたいに囲まれちゃうよ」
嫌な思い出だ。
あの時みんな、ひなたを取り囲んだ。
ひなたの方が可愛いからだ。
「大丈夫でしょ」
鈴音は自分が有名人という意識はない。
「誰も気がつかないよ。
それより109に行こう」
たまにひなたに気がつき、振り返る人もいたが、
今回は誰も声をかけてこなかった。
「ひなたみたいなお嬢様でも109の服を着るんだ」
「着るよ、普通に。だって、可愛いじゃない」
そうだ、可愛いのだ。
ひなたは鈴音が絶対に着ないような服を着る。
女の子っぽい服ばかりだ。
