「今日もかっこいいね」
バンドのメンバーは最近の桃花の変化をいい方向に向かってると感じてた。
最近は観客の八割以上が女子だ。
しかも若いギャルが多い。
「ギャルばかりだ、今日も」
桃花は雄たけびを上げた。
ギャルを見ると、ルカのギャル好き発言が耳をよぎる。
怒りがメラメラと燃え始める。
長いチョーキング。
ギターがないている。
桃花は体をくねらせて、ギターの先を観客に向けた。
「ギャルはみんな撃ち殺してやる」
そう叫んで、イントロが始まった。
一斉に沸き起こる歓声。
桃花は観客の若い女の子に対して敵意をむき出しにした。
そしてギターに火をつけ、床に叩きつけた。
「お前ら、みんな死んじまえ」
そう、桃花が叫ぶと声援がわいた。
ついにはガソリンを口に含んで火を吹くまでになっていた。
「下手に近寄ると、火傷するよ」
それがいつの間にか、キメ台詞になっていた。
既にカリスマ化し、若い女子の憧れる女性第1位に選ばれるようになっていた。
その原動力が全て若い女子に対する怒りだとしても、桃花は輝いていた。
アンコールもいつの間にか、恒例になっていた。
「アンコール、アンコール」の声に混じって、「ラムちゃん」の声援が飛ぶ。
しばらくするとトレンチコート姿で、桃花が戻ってくる。
イントロが始まると、桃花はトレンチコートを脱ぎ捨てる。
桃花は一気に「うる星やつら」のラムちゃんの姿になる。
桃花は「うる星やつら」の曲を歌い始める。
曲はバリバリのメタルにアレンジされていて、会場は最高潮に盛り上る。
最後にギターの先を会場に向けて、「ダーリン、お仕置きだっちゃ」と言うのが最後の決めセリフになっていた。