恋するリバウンド 16 | 可愛い君に愛を囁きたい

可愛い君に愛を囁きたい

みぃたんと忍者たなかーず

日曜日、バスケの試合が行われた。

隼人の名声は全国ネットなのだ。

わざわざ、こんなチームのために試合をしに来るなんて。

隼人目当てで試合を申し込んでくるほど、


隼人の実力はずば抜けてるのだ。

「なんで今さらバスケの応援なんか……」

「いいじゃん、行こうよ」

乃亜は乗り気じゃないココロを誘った。

本当に相手は全国八位のチームなんだろうか。

互角以上の戦いぶりだ。

チーム自体も強くなっている。

隆平も、前よりうまくなってる。

まあ、だからってよりは戻さないけどね。

冷静になって隆平を見ると、そんなにイケメンじゃない。

少しマシなレベルだ。

ちょうどお笑いタレントのイケメンくらいだ。

とてもジャニーズレベルじゃない。

本当に強い。

これが以前のヘッポコチームなんだろうか?

もちろん隼人のワンマンチームだ。

それでも相手を圧倒していた。

もし顔さえ隠れてたら、かっこいいのに。

あのブサイク顔を見るたびに、現実に引き戻される。

しかし乃亜の隣で応援しているココロは、


また魔法にかかってしまったようだ。

「かっこいい……」

思わず、ココロがこぼした。

ココロは他の誰にも目を奪われることなく、


視線は隼人だけを追いかけていた。

そしてダンクをきめた後のドヤ顔。

気持ち悪いくらいブサイクなのに。

ココロは虚ろな目で隼人を見つめてる。

試合を支配しているのは明らかに隼人だった。

すべてのボールが隼人に集まるかのように、


隼人がゲームを作り上げていく。

隼人は試合中、何度もココロのほうを見ていた。

ココロはそのたびに胸がキュンとした。

そして10点以上の差をつけて勝った。

なんと試合の後、黄色い悲鳴が上がった。

隼人の名を呼ぶ、女子。

なんてことだ。

ブサイクでもモテるんだ。

乃亜はあらためて驚いた。

「本当に全国制覇するかもしれないね」

ココロは乃亜に言った。

隼人がココロのほうに手を振った。

「かっこよかったよ、隼人」

ココロはジャンプをしながら、手を振り替えした。

隼人がニヤリと笑った。

気持ち悪い。

そう思ったのは乃亜だけじゃないだろう。

しかしその瞬間だけ、


みんなが隼人の微笑をかっこいいと


叫んでいるような違和感を感じた。

「誰よ、あの女。ブサイクなくせして」

女子のひがみの声が飛ぶ。

みんなの憎しみにも似た視線がココロに向けられる。

隼人がモテモテだ。


目を覚ませ、やつはブサイクだ。

それも並のブサイクじゃない。

バスケットで全国制覇できなくても、


ブサイクで全国制覇できるほどのブサイクだ。

でもココロはすっかり心を奪われていた。

羨望のまなざし。

幼馴染に見せる顔じゃない。

すでにココロは上の空。

「今日の試合、勝てたのはココロのおかげだと思うよ」

隼人のセリフで、ココロは恋する目になっている。

「惚れ直したろ、ブス」

隼人はココロにいきなりそう言った。

ココロの顔が真っ赤になった。

恥ずかしくて赤くなってるのかと思った。

「鏡見なさいよ、あんた!シュレックみたいなくせして」

しかし怒って、真っ赤になっていた。

「お前だって、アバターみたいじゃないか」

相変わらずだ。

先が思いやられる。

乃亜は微笑ましかった。

そしてこの恋がうまくいけばいいと思った。

「なんだ、恋人じゃないんだ」


「良かった」

女子たちの声が聞こえてきた。

乃亜は急におかしくなった。

隼人がモテてることがおかしかった。

「ライバル、いっぱいね」

乃亜はココロに耳打ちした。

急にココロがみんなを気にしだした。

「奪われるかもよ」

乃亜はココロの背中を押した。

ココロが隼人にぶつかる。

「ちょっと」

ココロは乃亜を叩いた。

私の方見ないで隼人の嬉しそうな顔見なよ。


ニヤついてるじゃない。

乃亜はココロに「がんばれ」と耳打ちした。