「あれで良かったのかしら。
一度は沙希ちゃんを捨てた父親よ」
医師や看護師たちは
口々にそのことを話題にした。
多くが拓海に預ける事に批判的だった。
「沙希ちゃんがそれを望んだんだから」
と、肯定派も「しょうがないのよ」と、
けして、「その方が良かった」とは
口にしなかった。
「そうね、きっとそうね、
良かったのよ」
「だって本当の親子なんだし、
里親と暮らすよりはね」
と、みんな無理やり
納得させようと必死だった。
その根源にあるのは、
拓海の虐待を心配する気持ちに他ならない。