恋するリバウンド 9 | 可愛い君に愛を囁きたい

可愛い君に愛を囁きたい

みぃたんと忍者たなかーず

第5章 やっぱイケメンが一番




隼人は本当の幽霊部員になった。

その日の帰り、隼人は交通事故にあった。

そして意識不明の重態。

面会謝絶。

部員みんなが病院へ駆けつけた。

さっきまでチームのために駆け回っていた隼人。

それが今は会うことも許されない状態だという。

部員たちはみんな病室の前でうなだれていた。

全国大会の夢がついえるかもしれない。

そう考えるのは不謹慎かもしれない。

でもみんな隼人さえいればと思っていたはずだ。


そんな重っ苦しい雰囲気の中。

たった一人、別のことを考えていた。

ついに乃亜が動き出したのだ。

「好きです」

乃亜が隆平に告った。

意識不明の重態の隼人の病室の前で。

「付き合ってください」

なんでこの場所で告るわけ。

みんなのいる前で……。

さすがのココロもあきれた。

この雰囲気の中で愛を叫んだりするんだ。

空気の読めないにもほどがある。

親友でなかったら、付き合い方を考えるかもしれない。

しかし可愛ければ、大概のことは許されてしまう。

部員みんなが乃亜の告白に、「オーッ!」と声を上げた。

ココロは苦笑いを浮かべるしかなかった。

最低だ。

男子、最低。

可愛ければそれで許されるのか!

これだから男なんか信じられない。

こうして乃亜に恋の季節が訪れた。

ラブラブぶりは別にいいだろ。

口にするのも胸くそ悪い。

別に嫉妬してるわけじゃない。

乃亜の無神経ぶりに怒ってるわけでもない。

そんなのは慣れっこだ。

じゃなきゃ、幼馴染で今も仲良しじゃない。

まあ、あまりのバカップルぶりに話す気にもなれないだけだ。

乃亜は最近では、ドン・キホーテで手に入れた

コスプレ用のチアガール姿で声援をおくってる。

ただ予想通りと言うか、乃亜の応援にも関わらず、

チームはもちろん低迷していた。

それは隼人がいないからだ。

全国大会どころか、県大会さえ危ない。

いや、一回戦だって勝てるかどうか。

もともと最弱チームなのだ。

隼人のワンマンチーム。

隼人はことのほか重態で、今なお意識が回復しない。

生死をさまよっている状態だ。

しかしそんな中、奇跡が起きた。

隆平のシュートの成功率が格段に上がった。

相変わらず囲まれるとアタフタしてる。

ドヘタぶりは健在だ。

普通にドリブルできてない。

なのにどういうわけか、

シュートがものすごい確率で決まりだした。

気がつくと3ポイントの隆平と呼ばれてる。

突然、才能に目覚めたのか。

誰の目にもただ適当に

球を投げてるだけにしか見えない大遠投。

3ポイントシュートとは縁遠い強引さ。

それはかつて周りを囲まれて、

仕方なく遠投をする姿と一緒だ。

ただ違うのは、その遠投がすべてゴールすることだ。

とにかく奇跡としか思えない軌道で

ボールが、ゴールに吸い込まれていく。

そのほとんどがコートの半分以上離れた場所からの大遠投。

時にはボールが届かず、

ゴール手前でバウンドしてしまう有様。

なのにボールはバウンドして、ゴールへと吸い込まれていく。

誰も何もしないのに、

ボールは不自然な跳ね方をして、ゴールへと吸い込まれる。

みんながその瞬間、目を白黒させる。

ありえない変化球。

まさに魔球だ。