伊東潤著 デウスの城 | 前立腺がん闘病封じ込め記

前立腺がん闘病封じ込め記

前立腺がんの診断を2020年1月に受けた。PSA値640超、Gスコア8、多発的骨転移ありだった。手術・放射線は適応にならない。それでもあわてない、あせらない、あきらめない日々を送る。



伊東潤著 デウスの城を読んだ。


日本にキリスト教が入ってきたのは、イエズス会のフランシスコザビエルからだ。日本人ヤジロウの案内でフランシスコは鹿児島に上陸し、九州一帯、山口県、近畿などを布教し、教会を多く建て、数多くのキリシタン信仰信者を獲得した。時の室町幕府、戦国大名などからも一定の布教に対する許容があった。


ザビエルはスペイン人だが、ポルトガル、イタリア勢力から強い支持があり、カトリック側としては日本という未開の地には大きな支配可能性と多くの富があることを理解した。ドイツ地域・イギリス・オランダなどに広がりつつあるプロテスタント勢力に対抗するには海外布教は必須なのだ。


時は大航海時代であり、帝国列強によるアフリカ、インド、中国・極東植民地支配への渇望は日に日に増している。


プロテスタント勢力も負けずに日本を目指した。


当時の日本でのキリスト教布教は、織田信長政権ともつながりつつ、デウスを唯一の神とするエキゾチックな信仰に人々は魅了されつつあった。


豊臣秀吉の世になり、高山右近や小西行長など熱心なキリシタン大名が登場した。


領主がキリシタンなら領民はキリシタンである必要があった。小西行長は商家の出だが、その才覚を認められ、秀吉によって重臣となり九州肥後国(熊本県宇土市)の大名となった。


この物語は、小西行長配下の若きキリシタン3人を主人公として、秀吉、家康、秀忠、家光と続く徐々に強まる宗教弾圧を巡って、それぞれが立場を変えながらも信仰を堅く守り抜くという物語となっている。


秀吉から時代が下るごとに、キリシタン禁教は強められ、家光になって、島原・天草の乱が起こる。


秀忠、家光親子は、ヨーロッパの文化・宗教を排除しなければ日本は列強の植民地と化することを見抜いていた。そこで、キリシタンと見れば根絶やしにする政策を取り、苛烈で残酷な刑罰や拷問によって、鎖国化への体制へと進んでいくことになる。


イエズス会から連綿と続くキリスト教の教義は、死後ハライソという名の天国に行ける、というもの。肥後国島原・天草の百姓、民衆は命をかけて信仰を守る人々だ。宣教師と共に洞穴に住み、地下に潜り、規制勢力にあくまで抵抗した。


禁教・規制勢力とキリスト教を信じる民衆勢力のぶつかり合い、


その対立の舞台となったのが、島原半島突端の原城であり、乱を率いたのは小西行長の旧家臣と、その次の世代である少年天草四郎であった。天草四郎は美的な少年できらびやかな衣装をまとい、数々の奇跡を演出し、民衆を駆り立てていき、原城に集結して籠城作戦をとった。その数3万7千人。


一方の幕府勢力は12万人。


幕府は兵糧攻めを含む徹底的な原城攻撃を命じた。


若き侍3人の運命、勝敗の行方、敗者に下った残酷さ、信仰と今そこにあるある命、非信仰者である家族一族の道連れ、


この本には詳しく書かれているが、ここでは記さないことにしよう。


この乱をきっかけに江戸幕府は徹底的な鎖国の政策を取り、明治の開化まで世界に独自の日本文化を築くことになる。


日本におけるキリスト教の歴史、信仰とは何か、命の永遠性の問題、深く思いを馳せる読書機会であった。