三浦綾子作 ちいろば先生物語 上下巻
ちいろば先生こと榎本保郎牧師の生涯を丁寧に記述した評伝小説。
牧師という神に仕える職業に人生を捧げたちいろば先生。
ちいろば先生に接すると、人はその人柄と生き方に魅了される。先生の人を惹きつける力は、その純粋な心のゆえだ。
ちいろば先生は、軍国少年から陸軍志願兵となり、空しく満州の地で敗戦を迎えた。極寒の地から敗走しつつようやく故郷の淡路島に帰国した。
帰国後、敗戦の心の傷から抜け殻のような生活を経たのち、キリスト教に生きることを決意し、同志社大の神学部を経て牧師となる。
牧師という職業ほど経済的に割の合わない仕事はないな。なにせ教会員からの謝金で生活費が賄われているのだから。しかしその代わり、これほど喜びに満たされた職業もない。
神とともに、教会員とともに、神の国の御わざと恵みを人々に伝える、このことに生涯を捧げる道をちいろば先生は選んだ。
その落差の激しい道を命尽きるまで、肝硬変で52歳の生涯を閉じるまでひたすら神とともに教会員とともに歩んだ。
涙と感動が止まない本だった。
クリスチャンにして榎本保郎牧師をよく知る三浦綾子にして書きうる本であり、心が洗われる読書体験だった。