北原照久 珠玉の日本語・辞世の句より | 前立腺がん闘病封じ込め記

前立腺がん闘病封じ込め記

前立腺がんの診断を2020年1月に受けた。PSA値640超、Gスコア8、多発的骨転移ありだった。手術・放射線は適応にならない。それでもあわてない、あせらない、あきらめない日々を送る。

良寛和尚(江戸中期)の辞世の句を取り上げてみたい。

かつてこのブログでも取り上げたことがある句だ。

散る桜 残る桜も 散る桜

ちるさくら のこるさくらも ちるさくら

(あぁ、自分は今にもこの桜が散っていくようにこの世を去ろうとしている 
これは悲しいことなのだろうか 
いや待てよ 
この世に残るあの人もこの人も同じ桜のような定めではないか 
孤独に思うことはない
人間も桜も生きとしいけるものはすべてこのような、ちょっと早いか遅いかの差だけなのだ)

私はこの句を映画「終わった人」で知った。

舘ひろしが公園の散る桜を見て妻につぶやくシーンだ。

自分は定年退職してしまうが、後輩たちは生き生きと仕事を続けている。

自分だけが職場から去っていくような寂しさを覚えるが、なんてことはない、奴らだっておんなじなんだ。

という納得をした描写がやけに記憶に残っている。

このようにこの句は良寛和尚の辞世の句でありながら、サラリーマンの転勤、リストラ、退職などにも広く当てはめられて使われる。普遍性がある句といえるだろう。

この句は、簡単なようで深くこの世の本質をとらえていて実に覚悟が決まりやすい。

しかも覚えやすく、心に定着させるのに苦労はない。声に出してみれば実にすがすがしい気分になれる。

辞世の句の中でも一番の句だ。