歴史小説家たちが紡ぐ時代の違う五つの物語が、あるひとつの「怪異」で繋がる。
読後に訪れるこの震えは、恐怖か、驚愕か――?
異端にして傑作の歴史小説集、ここに誕生。
矢野 隆「有我」 ――鎌倉時代、壱岐。元寇に抗う男に訪れたある異常。
蒙古軍を退却させたのは神風ではなくゾンビだった?
わらわらとゾンビが出てきて冒頭からびっくり。
この「日本史×ゾンビ」企画への本気度が伝わりました。
天野純希「死霊の山」 ――室町時代、近江比叡山。霊峰に現れた狐憑きの正体は。
信長の延暦寺焼き討ちの真相。
悲しくも美しいゾンビの愛。
私的にこの一冊の中でNo.1。
西條奈加「土筆の指」 ――江戸時代初期 中部地方。墓の土饅頭から土筆が生え……。
のんきな会話にクスッと笑える。でも本当に怖いのは死者より生者。まだ続きがありそうなラストが不気味。
蝉谷めぐ実「肉当て京伝」 ――江戸時代後期、江戸市中。山東京伝の妻は、自らを「人魚」だという。
蝉谷さんははじめましてだけど、気になっていた作家さん。
腐敗臭が漂うストーリーなのにどこか艶っぽい。
澤田瞳子「ねむり猫」 ――江戸時代末期、大奥。城内に現れる不可思議な病。
猫が亡くなる話なのでちょっとツラい。
しかもねむりねこだもん。ムリ。
読んだけど。泣いた。
時代小説の名手たちが大真面目にゾンビを書いてます。
どのお話も西洋のゾンビとは一味違う、怖さと悲しさを併せ持った和風ゾンビたちでした。
本を閉じた後、家中の戸締りを確認した私です。
実はけっこう怖かったの…