さて、今年も、「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2017「ラ・ダンス 舞曲の祭典」」に行ってきた。1995年のフランス・ナント誕生の音楽祭で、クラシック音楽の祭典。一流のアーティストによる40~50分の短いコンサートが朝から晩まで開かれ、それも低価格で観ることができる。GWに丸の内・有楽町エリアで開かれ、クラシック音楽に関する展示や講演会などもある。今年のテーマは「舞曲の祭典」のため、舞踏に関する音楽が多数取り上げられている。
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今年の目当てはピアニストで作家の青柳いづみこ氏の講演会。青柳氏は作家で、ブログでも女史の本は取り上げたことがあり()、興味があったので実際の講演を聴いてみたかったからである。5日はドビュッシーとバレエ、6日はショパンとバレエがテーマだった。意外だったのが、ドビュッシーがバレエ曲を書いたのは、バレエ曲は高く売れたからという点である。また、ドビュッシーの収入なども細かく判明しているのに驚いた。映像資料を取り入れながらの講演は段取りも良く聞きやすかった。ドビュッシーより、バレエになったショパンの曲のほうが、私はショパンが好きなので個人的には楽しめた。ショパンの曲に振付を付けるとこうなるのかと勉強になった。バレエは正直興味はなかったが、映像資料に思わず見惚れてしまった。

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せっかくの音楽祭なのでコンサートも聴いてきた。私が聴いたのは小山実稚恵さんの演奏。小山実稚恵さんは、チャイコフスキーコンクール第3位・ショパンコンクール第4位と二大コンクールに入賞歴のある日本人唯一のピアニストで、メディアで目にする機会も多い。曲目は、ショパンの「アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ」と「ピアノ協奏曲第1番」。会場は東京国際フォーラム・Aホールで5012席の大ホールだった。2階席だったが、相当な傾斜。

 

音楽ホールは音響も良く、ピアノもスタインウェイだったので高音部がなんとも見事に煌びやかに響き、ピアニッシモもクリアに聴こえる。ただなぜか音量の割に、低音部が全然鳴ってないのが不思議だった。小山さんは指回りが良くまた安定しているので、音は優しく、粒がそろっていて、またショパンの流麗な旋律が気持ちよく流れる。アンコールは子犬のワルツだったが、早めのテンポでさっと弾き切った。尚、協奏曲の1楽章が終わった時点で、拍手が起きてしまい(基本的に楽章の間では拍手しない)、曲の連続性が若干切れた感じがしたが、これは聴き手である私の問題。

 

 

この音楽祭と一緒に、東京ステーションギャラリーで開催の「アドルフ・ヴェルフリ 二萬五千頁の王国」にも寄ってきた。ちなみに、東京ステーションギャラリーは東京駅併設のこじんまりとした美術館で、モダンでお勧めである。

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 ヴェルフリはスイス生まれだが、貧しい出自で、犯罪を犯して逮捕されるも、統合失調症と診断され精神科病院に収容された。精神科病院で創作活動に目覚め、2万5000ページにも上る作品群を残した。日本では無名だが、アウトサイダーアートでは評価が高いという。アウトサイダーアートは芸術教育を受けていない者による作品でアートにみなされているものをいう - もともとアールブリュット(囚人・精神病患者の作品)の狭い意味だったが、英語化する際に広義に用いられるようになった。非現実的な物語、余白を埋める音符、不思議な模様の連続はたしかに彼にしか創作できなかっただろう。しかし、アールブリュットを、芸術分野で語るのは慎重になるべきじゃないかと正直思う。