脱原発デモが全国で開催されているようだ。それにしても脱原発論者は、脱原発した場合の影響というものを考えているのだろうか。

慶應大の面白い調査がある。慶應義塾大の「『東日本大震災に関する特別調査』の概況(第1回)」(http://www.keio.ac.jp/ja/press_release/2011/kr7a430000094z75-att/120215_1.pdf)という調査だ。これによると、「原発事故・放射能汚染への恐怖・不安感は、震災直後よりも6月のほうが大きくなっており、属性別には、文系出身者や低所得層、非正規雇用者、無業者、未就学児がいる人、東北 3 県の居住者ほど、恐怖・不安を強く感じていた。また、原発・放射能汚染への恐怖・不安を感じる人ほど、睡眠不足やストレス増加を経験する傾向が強いこともわかった。」そうだ。

東北3県居住者、未就学児がいる人は放射能に不安を感じてるのは当然だが、文系・低所得者・非正規雇用・無業者も恐怖・不安感を強く感じている点は面白い。文系は数字に弱いので、リスクを定量的にみれず、漠然と「怖い」というイメージで捉えてしまうのだろう。経済学・法律学のような社会科学を学ぶ学生はある程度は論理的に考え、脱原発したリスクなども判断できるだろうが、問題は人文科学の学生だ。人文科学では原発のリスクや脱原発した際の影響などを判断することができないので、感情論に陥りやすいのである(もちろん人文科学でも良識的な方はいます)。低所得者・非正規雇用・無業者は低学歴の傾向が強いが、彼らもリスクや脱原発のリスクなどを理解できないのだろう。よくテレビに出てくる反原発論者も、音楽家だとか小説家だとかが多いのもこのためだ。彼らは感情的に嫌だ嫌だとダダをこねているに過ぎない。

水力発電の場合、需要に応じて電力を作り出せないため電力の安定供給に問題があり、またダム建設で生態系が壊されるし、土砂が堆積するので長期的には用いれない。火力発電は燃料費の問題もあるし、二酸化炭素・窒素酸化物などを排出するので空気を汚染する。水力・火力発電だって、それなりの環境や社会的なコストはかかるのである。実際、原発停止のせいで関西電力は赤字が拡大している。燃料費高騰の影響だ。ホルムズ海峡が封鎖されたらさらに燃料費は高騰する。脱原発を唱えるのであれば、そうした地政学的リスクについても言及すべきだろう。

もちろん、電力会社の横柄さや政府の対応の遅さなど問題点はあるが、それと脱原発とは話が別だ。もう少し冷静に考えてからデモでもなんでもしてもらいたいものだ。脱原発して電気料金が値上げすれば困るのは低所得者層なのに、なぜ彼らが脱原発を主張するのか理解できない。主婦が子供のために脱原発して安心できる社会にしたいというが、この不況の中で脱原発したら燃料費高騰の煽りで日本経済はさらに悪化するだろう。不況が悪化すれば社会保障費などを削らなければならなくなる。それか国債をさらに発行し国の借金を増やすのか。そうした国の借金を返済するのは、子供世代ということをよくよく脱原発をとなえる主婦の方は認識した方がいい。しわ寄せが来るのはだいたい社会的に弱い立場の人だ。彼らは、自分のクビを自分で絞めていることに早く気がついた方がいいだろう。