沖縄問題は日本の国家統合問題 -佐藤優氏の解説 【後編】 | 太平洋戦争史と心霊世界

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首里城 


■沖縄問題は日本の国家統合の問題

 

【佐藤優が語る沖縄問題】(0945

http://www.youtube.com/watch?v=3x9pJQrGffY

  

 私の考えは沖縄の保守派に近いが、沖縄にはもっとラディカルな人たちがいっぱいいる。だから沖縄の問題はもはや、連邦制に日本の国家制度を改正しないと無理。日本と言う国家の枠の中で、沖縄の主権を認める。沖縄の運命に死活的に重要なことは、沖縄に参加させる。

 

例えば日米の2プラス2と言う協議がある。それに関してはオブザーバーとして、沖縄の代表が聞くことができる。沖縄県庁の中に外交部を創ってその外交部は大使を東京に置くべき。それで日本と大使交換をする。

 

それから沖縄の防衛局長と、沖縄大使に関しては、知事の合意がないと着任できないとする。一国二制度的にいち早く変えないと、これは大変なことになる。特に尖閣で、石油ガスが出るようになる。それが沖中開発でその利益を分けようという事になれば、経済的な基盤も出来る。

 

それからEEZ、排他的経済水域圏は、東京都に次いで沖縄が2番目に大きい。この水域に入ってくる日本漁船から全部お金を取るという仕組みを作れば、沖縄は経済的に十分やっていける。だから沖縄は基地に依存しないとやっていけない、というのは神話である。

 

基地依存度も、もう20%を切っている。すると色々古いステレオタイプの考えで、大田知事のインタビューを聞いて、(インタビューは録音されていない)、リスナーの人たちは、これは激しいと、みんなこんなに激しく怒っているのかと思ったと思う。これが標準的な沖縄の感覚。

 

しかも独立論で、昔の独立論とは違って、今度は学問的な裏付けがあって、国連に行ったりしていると、えらく大変なことになる。プラス見ないといけないのは、そういう状況が起きたら、これは中国が最大限に利用する。尖閣は我々は日本固有の領土と思っているが、1880年に分島増約案(←リンク)というものがある。


沖縄地図



これは沖縄の人たちはみんな知っているが、日本全体ではほとんど知られていない。1871年に日清修好条規があったが、これを改訂して、清国の中で日本が最恵国待遇を持つ。その代わりに宮古島、石垣島、与那国島(総称で先島諸島)を清国領にする、中国にあげちゃうという条約案を日本が作ってサインまでしている。1880年である。

 

ところがあまりに不利だと言って中国がサインしないで実現しなかった。日本は国家意思として、先島(さきしま)を放棄する、こういうことをやっている。

 

すると石垣島の付属諸島として尖閣はあるわけだから、尖閣は固有の領土だと言ったって、全然沖縄の人たちには説得力がない。沖縄からしたら迷惑千万である、(尖閣を買った)東京都なんて沖縄と関係ないではないか。国と東京で勝手なことをやって、戦争が起きるではないか、迷惑千万ですということ。

 

(質問者)中国はかつては(尖閣を)棚上げだったが、ここに来ていよいよせり出してきているのではないかと、沖縄の地政学的位置づけはここに来て変わったと考えられませんか?

 

それは、沖縄と日本が完全に一体であるという事であれば、その議論は成り立つ。要するに、家族内の議論だったら成り立つ。沖縄が家の家族の一員だったら、大変だと、隣の中国という奴の態度が最近悪くなった、家の庭に入ってくるようになった、家族が協力するのは当たり前と。

 

ところが家族じゃなくて、分家して別の家族を沖縄と構えているのなら、沖縄としては、中国とも仲良くやっていきたい、尖閣共同開発でいいんですよと、そんなこだわりないですよと言うことならば、これはどうなるか。



米軍基地 



(アナウンサーがリスナーからのメールを読み上げる)

 

「京都のBBさん。かつて普天間に住んでいたが、真夜中に着陸する軍用機の轟音で何度もたたき起こされた。沖縄で米兵が自由に基地の外に出ることが可能ということに、いつも違和感を覚えていた。沖縄に23年でも住んでいたら、米軍基地の存在がいかに矛盾に満ちたものかわかってくるようになる。とはいえ、本土に戻るとそれもつい忘れてしまう」

 

これと同じで、外務省の沖縄事務所で、幹部として23年駐在したって、今の状況を少しでも長く続けた方がいいとしか思わない。するとどのように沖縄と対峙するか。

 

第二次大戦中には中国語が非常にうまい、中国に人脈を持って中国を良く知っている「支那通」と呼ばれる専門家がいた。しかしそれは決して中国の友人ではなかった。謀略も行うし暗殺も平気で行った。自分の中国に関する知識を日本の帝国主義的な利益のために使うという発想の人たちだった。

 

今の外務省や防衛相の沖縄専門家は、その意味では沖縄通である。沖縄を自分たちの同胞と考えないで、対等の人間とみなさずに、支配の対象、それから自分たちの利益を引き出す対象、モノとして見ている。こういう沖縄対策、沖縄の気持ちが分かるとか、沖縄の心を大切にするという議論が、もう通用しなくなっているということである。

 

そして沖縄は自分たちの生き残りのために、自分たちで試行錯誤を始め、それで今回直接交渉をアメリカとしているとか、今後は国連にアプローチして来るでしょう。いろんなことが起きてくる。

 

(質問者)外務省の中には沖縄は今のままではマズイ、と指摘する人はいないのか?

 

沖縄は今のままではマズイ、ということは沖縄を担当している連中は全員気付いている。しかし、それをいかに誤魔化すか、という方向でしか組み立てない。

 

それを変えるためには強力な政治主導が必要。沖縄の側に立つということにしないと日本の国家統合を維持することができないと、考える政治家が出てこない限り難しい。これはやはり歴史の認識とか、アジア太平洋全体での日本の国家戦略とか、全体が絡んでくる問題で、本当に日本の要の問題だが、あまりにも日本の全体像、専門知識を見ることができていない。沖縄は日本の国家統合の問題である。

 

沖縄は別の人たちなんだという認識を持って、その中でどうやって共通のことをどうやって見出すかというように転換しないといけない。家族の甘えはお互いやめる。家族じゃなくて親戚であると。