近年、日本の有機化学のレベルは非常に高いと思います。
日本人はその真面目で細かい性格のためか、新規の反応開発が多いと思います。
しかし、天然物合成となるとどうでしょう?
日本人も多くの天然物合成を達成しており、海外と比較しても遜色ないです。
でも正直first total synthesisは少ない気がします。
あっても比較的小さな天然物です。
その中には小さくても複雑なものもあります。
大きく複雑で何十工程もかかるような天然物の初の全合成となると日本では難しいのが現状です。
岸先生のパリトキシン、平間先生のシガトキシンは本当にすごいと思います。
あそこまで大きな分子になると、いくらエレガントな合成でなくても感心します。
NMRはどんな感じなんだろうって思います。
海外ではNicolaouをはじめ、なんであんなに多くの天然物合成を次々と達成できるんだと不思議に思います。
ではなぜ日本では難しいのでしょうか?
日本ではまず研究室の規模が海外と比べて小さいと思います。
何十工程もかかるものとなると、どうしても原料立ち上げが大スケールになりますが、日本の規模だとなかなかきびしい。
研究室によってはエバポレーター待ち、大きなガラス器具がないなどの制約があります。
しかし、海外では大きな研究室で大スケール用の器具が揃っていて、大スケール用のエバポレーターなどもあったりします。
Nicolaou研では5Lのフラスコが何個もならんで反応が行われているという話を聞いたことがあります。
でもなんといっても一番の違いは『人』です。
日本ではまだ未熟な学生が朝から晩まで教授に文句を言われながらせかせか実験しているのが現状です。
しかし、海外では・・・・
世界各地から集まった優秀なポスドクが次の職を得るためにも競い合いながら実験をしているんです。
彼らも将来がかかっているので必死です。
そんな彼らに日本の学生が勝つことは難しいです。
大きな研究室では量上げ部隊がいるとも聞いています。
そんな量上げ部隊もポスドクで形成されているのですから。
ある研究室では1つの天然物を複数のグループで競わせているということもあるそうです。
同じ研究室内でですよ!
ありえない。
ということで、日本ではfirstでなくても、独自の方法で効率的に合成するという方が向いているんです。
別に大きな天然物を作ったから偉いというわけではありません。
でも憧れます。