IBSというのは2-ヨードキシベンゼンスルホン酸のことです。
IBXは有名な酸化剤で2-ヨードキシ安息香酸ですよね。
これはDMP(Dess-Martin periodinane)を合成する際の中間体です。
ではIBSって何に使うんだといいますと、これも酸化剤として使われます。
ただし、これは不安定なので反応系中でIBSを発生させるという手法をとります。
最近名古屋大学の石原一彰教授がJACSにpre-IBSを用いた酸化反応に関する論文を発表しました。
J. Am. Chem. Soc. 2009, 131, 251-262.
pre-IBS(つまり2-ヨードベンゼンスルホン酸)をOxoneを用いて反応系中で酸化してIBSを発生させ、これを用いて酸化すると2級アルコールはケトン、一級アルコールはアルデヒドもしくはカルボン酸へ酸化できるというものです。
Oxoneはよくすりつぶしたものを使うことがコツだそうです。
この反応は、Heterogeneousな反応で、Oxoneは溶けていません。
また、反応終了後、IBSも使用する有機溶媒(アセトニトリル、酢酸エチル、またはニトロメタン)に溶けないため、
反応液をろ過、ろ液を濃縮するだけで目的物が得られるのです。
しかも、IBXの弱点としてほとんど有機溶媒に溶けない(反応溶媒はDMSOが普通)のに対し、これはそのような心配はありません。
さらに、IBX,DMPのような5価の超原子価ヨウ素化合物は一般的に不安定で爆発の危険性もありますので、今回のように反応系中で発生させるというのも良いですね。
最近、純正化学さんから2-ヨードベンゼンスルホン酸カリウムが市販されたそうです。
私も是非試したいと思い、現在注文中です。
みなさんも試してみては。