小部屋でがんばるオーディオライフ その1 | ZFS free space

小部屋でがんばるオーディオライフ その1

 みなさんはどのような環境で音楽を聴いているでしょうか。専用リスニングルームからポータブルヘッドホンまで多種多様かと思いますが、筆者は生活空間にそのままスピーカーを置いています。それも6畳のワンルーム集合住宅とまるでオーディオに向かない部屋のテンプレみたいな環境です。

 このほどアンプ刷新に合わせてスピーカーもセッティングしなおしたついでとして、小部屋に苦戦する筆者のアプローチを紹介してみたいと思います。なお、多分に偏見が含まれているのでご注意ください。


1. 前提として

 スピーカーやアンプは適正音量で鳴らした時にその真価を発揮するものです。そうは言っても、集合住宅の小さな部屋に住んでいると好きに音量を上げるわけにはいきません。まず音量の制限ありきでシステムを構築することになります。俗に小音量再生と呼ばれるものです。

 ところで、筆者の部屋は6畳弱なのですが、誤解の無いように述べておくと部屋をまるごとリスニングルームに仕立てる場合には6畳は理想のセッティングを追い込むのに十分な広さです。もちろん、これが生活空間の場合は話が大きく変わるということは言うまでもありませんが。

 もしあなたが筆者に似た環境で音楽を楽しみたい、というのであればヘッドホンとHPAを買ってきましょう。何の制約も無しに思う存分音を堪能できます。しかし、「ヘッドホンの音は落ち着かない」「スピーカーを鳴らしてこそのオーディオ」と思う奇特なあなたには、もれなく"音"の底なし沼に足を踏み入れる権利が与えられるでしょう。


2. ルームアコースティックを少しだけ考えてみる

 いかなるシステムにしようとも、音に対して最も支配的なのはルームアコースティックです。こだわりの激しいオーディオファイルでも、このことに異論を唱える人だけは殆どいないくらい当たり前のことなのですが、であるが故に生活空間にスピーカーを放り込む難しさを表しています。

 さて、結論から言うと、気にしないことです。多種多様の家具が配置された部屋の残響特性を調整しようなんて考えるだけ無駄です。とはいえ、これで締めるとあまりに無様なのでスピーカーの配置に関して二点だけ。一つは部屋の角に置かないこと、もうひとつはなるべくベッドと向い合せに配置すること。この二点のみであれば実現はさほど難しくないのではないでしょうか。

 部屋の角に置かないことはセッティングの基本なので、多少住み心地を犠牲にしてでも角から離したいところです。ベッドに関しては、吸音効果が高くなおかつ大きな家具なのでスピーカーに対してアンバランスに配置するとリスニング音もアンバランスになりがちです。筆者はベッドの位置から逆算してスピーカーを配置しているくらいで、レイアウトを決める際に優先的に考えましょう。布団の方には関係ありません。


3. スピーカーを選ぼう

 部屋のレイアウトが決まったらいよいよオーディオ機器の選択に移ります。機器選びの順番は、原則として音により支配的なものからと決まっていますが、最初は主役のスピーカーからです。もちろんスピーカーサイズから逆算してレイアウトを決めるのもアリでしょう。

 選び方自由です。つまるところ、一番大事なことは自分が納得するスピーカーを選ぶことです。ご存じの通り、音の良しあしには多分にプラシーボ効果が含まれていますので、一番良い音が出るスピーカーはあなたが一番好きになったスピーカーです。ただし、小部屋/小音量再生を前提とするので音の出口がフロントに集まっているものが無難です。バスレフポートが背面にあるようなモデルは壁から十分に離して使うことを想定しているので、小部屋での使用するのは難しい傾向にあります。とはいえ、こだわりがあるならそちらを優先してください。

 ちなみに、筆者がJBL 4305H WXを選んだ理由は非常に単純で「デカイ」「安い」「JBL」の3点だけです。まともに試聴すらしていません。実のところ筆者はスピーカーにはあまり興味がなかったりします。音色、解像度、音像、能率、などなどスピーカーを特徴づける要素は沢山ありますが、スペック以前の問題として音量の制約とルームアコースティックの乱れが存在します。そんな環境で筆者がスピーカーに求めるものは音域のみで、なるべく低域が出るものが理想的です。そして、豊かな低音はキャビネットのサイズに直結するので必然的に大きくて安いものが選択肢に挙がり、サイズに対するコストパフォーマンスではJBLに一日の長があります。また、JBLのスタジオモニターなら基本的に素直だろうという期待もありました。当初はもう一回り大きいものも検討していたのですが、配置に苦労しそうなことや予算との兼ね合いで取りやめました。


4. スピーカースタンドを用意しよう

 スピーカーはセッティングまで含めてスピーカーです。ブックシェルフ型の場合スタンドは必ず用意します。トールボーイの場合はベタ置きを想定しているものも多いですが、なるべくなら高さ合わせをした方が良好な結果を得られます。

 スタンドの一番重要な役割はもちろん高さ調節です。やることは簡単で、ウーファーとツイーターの間を耳の高さに持ってきます。3wayなら中音域担当ユニットを耳の高さにもってきます。ひとつ注意として、ここで言うウーファーとツイーターの間というのはユニットの中心からの距離ではなくて、隣接しているユニットの端から端までの距離を基準にしています。周波数が高くなるほど指向性が強まるので、ツイーターの方がより耳に近くて正解です。最終的な微妙性は椅子の高さでどうぞ。

 スピーカー程とは言わないまでも、十分選択の幅があるスタンド。こちらもやっぱりあなたが一番気に入ったものが正解です。とはいえ、高性能なものになるとスタンドだけで4305Hがもう一本買えてしまったりするので予算との兼ね合いも大切です。筆者はMST20に手を加えて使っていますが、十分実用的な性能です。

 なお、高さが足りなかったら積み上げればいいのですが、組み合わせによってはスタンドが高すぎる場合もあるかと思います。その場合はスピーカーを上下逆さにしてください。一部ユニットを吊っているタイプのものはダメですが、大多数のスピーカーは上下逆さでも問題なく使えます。音が崩れることを理由に逆さ配置を嫌がる方もいますが、上下の向きよりもユニットの高さがより支配的なのは明らかです。

 ここで注意として、上下方向は自由に取り換えて構いませんが、横に置いてはダメだということを覚えておいてください。調べればわかりますが、人間の耳はそのようにできています。
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筆者の環境ではまさにスタンドが高すぎたので上下逆さとなっている


5. スピーカーの制振に気を配ろう

 スピーカーの性能を十分に発揮させるには制振が必要不可欠です。スピーカースタンドには制振系と整振系の二種類があるのでどこで振動を抑えるのかは場合によりますが、どちらにしても制振が大事なことに変わりはありません。

 制振系のスタンドの場合、主にメタルスタンドがこれにあたりますが、スタンド自体が制振してくれるので床との接触は振動を切る形をとります。金属スパイクに金属インシュレーターの組み合わせが一般的でしょうか。フローリング面であればインシュレーターはベタ置きで構いませんが、畳やカーペットなど接触面がやわらかい場合はコンクリートブロックを間に挟む必要が出てきます。

 整振系のスタンドの場合、主にウッドスタンドがこれにあたりますが、制振は下にまかせる形となるのでコンクリートブロックを敷いて樹脂系や複合素材系のインシュレーターを挟むのが一般的です。剛性の低いインシュレーターはそれ自身がエネルギーを吸収するとともに、下に振動を逃がす役割を果たします。

 さて、先ほども触れましたが筆者はスタンドにMST20を使用しています。スチール製でありながらペア10kという驚異的なコストパフォーマンスを誇るすぐれものですが、いかんせん中がスカスカ。叩くとしっかり鳴る上に、それほど重量がないのでスピーカーを設置する時に動いてしまうことが多々あります。それでも価格を考えれば十分な性能ではありますが、せっかくなのでひと手間加えてみましょう。

 中空を利用してジルコンサンドを充填してやります。ジルコンサンドとは簡単に言うと摩擦熱で効率よくエネルギーを逃がしてくれるものです。スタンドに施す改造としては定番中の定番で効果も十分期待できます。ひとつネックがあるとすれば、MST20の工作精度はあまり高くないのでそのままだと接合部の隙間からジルコンサンドが流れ出してしまうこと。筆者はホットボンドで隙間をくまなく埋めていきましたが、パテでも瞬間接着剤でも好きなものを使ってください。ついでに精度のいまいちな金属スパイクもがっちり固めてやるといでしょう。また、支柱となるパイプにジルコンサンドを入れると、高さを下げるのが大変になるので注意が必要です。それなりに手間はかかりますが、質量増大と鳴き防止を一度に叶えてくれるのでオススメです。


つづく