あの頃、また…行こうねって約束していたのに、もう夏は過ぎてしまっていた。
人々の喧騒も、燃え盛る大きな松明と若者たちの怒声も…私の記憶には残響すらない。
懐かしい夏祭りは…永遠に思い出から消え去ってしまった。
そういえば、ここに入館したことがないので今回は立ち寄ってみました。
『キリコ会館』というのですよね。
移転リニューアルも近いそうですが?
マツリ…祀ること、神に捧げる神事。
縄文時代から古代の倭人は自然界を住処とし、生きる糧を得て…神に感謝する祭礼の歴史。
石川県の能登地方には、古くから独特な祭りの風習があります。
季節ごとに祭礼は様々ですが、この地域で夏から秋にかけて大きな祭りが行なわれます。
みこし(神輿)が練り歩くと、お供をするキリコと呼ぶ見上げるほど巨大な御神灯の登場です。
帰郷した若者も交えて、町内ごとに氏子が威勢よく担ぎ出すという豪壮な祭りの始まり。
穢れを祓う神聖な炎の祭典のように… 人間は火を崇めておりました。
土面を付けた呪術者が祈り… リビドーを開放して民は踊る。
シャーマニズムの原点のように考古学の見地からも興味深い祭事といえるでしょう。
弥生時代に農耕が本格化する遷り変わりを経て、かつては松明を炎上させ豊作を祈った儀礼。
天空からも見えるように… そんな風に私は思っています。
こうした大小様々なキリコ(切籠)を担いだ祭りは、能登の各地で見られます。
遥かな昔、沖合いにある舳倉島に鎮座する女神、そして輪島の地にいる男神の逢瀬は…
燃え盛る松明を印として、夏の日にお会いするという伝説があるそうです。
その再現のように行なわれる祭礼に多くの観光客が訪れるのですね。
お供する人々は、我が身の厄を払い落とし、大いなる神が生誕する生命力を授かるといいます。
また、恐ろしく奇怪な面をつけた亡者が太鼓を打ち続ける能登の奇祭(輪島市名舟町)など
(これは戦国時代、上杉謙信の能登攻めに遡る逸話から…)
真夏の夜に海辺で彩られる… まさしく炎のページェントに酔いしれるのです。
貴重な動画をありがとうございます。
炎の祭礼は、時代を重ねて様式美や信仰の影響で姿を変えていったのでしょう。
奥能登では、きりことうろう(切子灯籠)という灯火の略称とも言われ
中能登地方の周辺ですと、ほうとう(奉燈)と呼んだり、おあかし(御明かし)とも。
さらに12メートルを超える巨大な松明の頂上に刺されるお祓いした三本の御幣を獲得しようと
紅蓮に燃える中を漁師の若者たちは互いに争い奪い合います。
(怪我人続出ですが、この御幣を獲れば一年間の漁業が大漁というありがたい安泰が叶う)
こうした大きな祭礼の道具が、人知れず昔から能登の祭りとして伝承されてきたのでしょう。
(中央に見える棒が大きな松明、高すぎて上部が写りません”)
キリコというのは、つまり巨大な行灯そのものです。
基準は立方体であり、各面に和紙が張られています。 そこに描かれた見事な和風の絵画が綺麗。
勢いある筆意で大文字から由緒ある絵画の芸術性も高いと評価されています。
かなりの巨体であり、縦長ですからバランスをとりながら担ぐ人足も大勢。
都会に出奔している若者も、年に一度の祭りには帰郷して担ぐという意気があるそうです。
木製とはいえ重量が1~2トンが普通、数十人が担いでも上がらない巨大なキリコも存在して
逆に子供キリコという、児童が担ぐ可愛いキリコも見られますよ。
写真のように装飾は、雪洞(ぼんぼり)や透かし彫り、輪島塗りの漆芸まで施された豪奢な物。
勇壮な武将の姿…
いかずちを纏うような…雲龍の姿も
どのような絵師が仕上げてきたのでしょうね。
不動明王や家紋を浮き彫りにしたスタイルは定番でしょうか。
こんな重そうな大キリコを担いだ若者も酒で酔いながら荒々しく最高潮!
まさに…こうした感じで練り歩きながらクライマックスを迎える奥能登の真夏の夜。
ちなみに、輪島という土地。
漁業に携わる海女さんは、昔から『海士』と書くのですね。
江戸時代、加賀藩に献上した貴重な海産物(アワビなど)
その功績が認められて、特別に武士のような『士』の文字を頂いたそうです。
だから『海士』(あま)なのです。
輪島大祭り …は8月22日頃から、それぞれ、順番に重蔵神社大祭(河井町)、住吉神社大祭(鳳至町)、輪島前神社大祭(輪島崎町)と続いていきます。
そして港のエリアにある海士町、『奥津比め神社大祭』が有名なのです。
(御神輿渡御祭、御仮屋到着、御神輿入水神事、キリコ巡行、御仮屋夜宮祭、御神輿の入…)
古来からの風習や特異な民俗の伝承など、長く人跡未踏のように外部からの交流が少ない
陸の孤島と呼ばれた能登半島の歴史。
それにしても私はお神酒とお祭りには縁がない男…もちろん神主じゃないから?。
時期遅れの観光記事、これにて完結です。

輪島のマツリ HP

ご当地\(*`∧´)/面白マンホール
さすが輪島塗のまち そういえばご当地の原付ナンバーもお椀の形でした。
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