半数以上が流入1年未満で新規相談 大阪市調査
20年連続で生活保護費が増え続けている大阪市。とりわけ市の試算で3人に1人が受給している日本最大級の労働者の街「あいりん地区」(西成区)では、地区に来てわずか1年未満で生活保護の新規相談に訪れるケースが半数以上に上ることが24日、市の調査で分かった。不況で日雇い労働者の求人数が減る一方、職を求めて全国から労働者の流入は続いており、職のない労働者がそのまま生活保護に押し寄せている状態。市は「社会全体のしわ寄せがこの地域に集中している。一自治体の対応では根本解決は困難」と悲鳴を上げている。
厚生労働省の今年3月分の集計によると、大阪市の生活保護受給者は15万人を突破。あいりん地区では、平成20年秋の「リーマン・ショック」などによる不況の影響で、日雇い労働者の求人数が激減。求人数は18年度の72万8千人から22年度には33万2千人まで落ち込んだ。
一方、全国から労働者の流入は依然として続いており、市の昨年12月の聞き取り調査では、地区にきて「1年未満」と回答した割合は12・6%、「1年以上・5年未満」が11・4%を占めた。
こうした雇用の需給ギャップが大量の失業者を生じさせている。
生活保護などの相談を受けている市の更生相談所(西成区)には昨年度、1529人が新規相談に訪れた。市が、地区にきて経過した期間を聞き取り調査した結果、「3カ月未満」が697人、「3カ月以上・1年未満」が171人で、合わせると全体の56・8%を占めた。
市の担当者は「職を探してあいりん地区に来たものの、仕事が見つからない労働者が、そのまま生活保護制度に流れ込んでいる」と分析する。
市では、生活保護受給者が急増している背景として、失業率や離婚率、高齢者世帯率がいずれも全国平均より高い要因を挙げる一方、市特有の要因として、あいりん地区の構造的な問題を指摘する。
あいりん地区では簡易宿泊所の利用者やホームレスも多いことから、市は国に対し、住居のない場合は生活保護費を全額国負担とするなど、制度の抜本見直しを訴えている。
しかし国は今年5月、ようやく大阪市など地方自治体から制度見直しに向けた意見聴取を始めたばかり。一方で増え続ける生活保護の受給者に、市の担当者は「一自治体の対応や個別の取り組みではどうにもならない」と頭を抱えている。
■あいりん地区 大阪市西成区萩之茶屋を中心とした地域で、旧地名は「釜ケ崎」。日雇い労働者が仕事を求めて集まる「寄せ場」で、簡易宿泊所などが密集し、ホームレスも集まる。ホームレスに住居を貸して生活保護を申請させ、保護費をピンハネする「囲い屋」や、食事を提供して生活保護受給者らを狙うヤミ賭博場が摘発されるなど「貧困ビジネス」も社会問題化した。