菅首相に覚悟あるか。。。 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 







【緯度経度】パリ・山口昌子




仏北西部ドービルで開催された主要国(G8)首脳会議で菅直人首相は「主役」だった。開会のワーキングランチで東日本大震災に関して話す機会があり、最初の会合では「原発」の安全問題が議題だった。

 首相は福島第1原子力発電所事故を踏まえ、「原発の安全性を最高水準に高めるための5つの具体的提案」を行ったが、議長のサルコジ仏大統領は記者会見で、この5提案に関しては一言も言及しなかった。

 無理もない。「国際原子力機関(IAEA)の安全指針を強化活用する」などの新味も具体性のかけらもない提案だったからだ。

 フランスは「原発大国」と呼ばれるが、単に19カ所に58基の原子炉があるという数字を誇っているわけではない。

 東日本大震災が発生した2日後の3月13日、フィヨン首相は日曜日にもかかわらず国防、エコロジー、内務、産業、外務などの閣僚と原子力安全局(ASN)、原子力庁(CEA)、電力公社(EDF)、原子力大手アレバの代表を招集し、「独自の核エネルギー開発制度のために日本の事件から教訓を得よう」との声明を発表。年末までの調査実施と、問題のある原子炉の廃止も決めた。

 3月末には、国民議会(下院)で年次報告を行うことになっていたASNのラコスト局長が、「福島事故からの教訓」として緊急報告。「地震、津波と重なった累積自然災害の危険について考慮しなかった反省」をはじめ、「老朽化原子炉や腐食」「事故管理」などについて具体的かつ詳細に言及した。

 専門家440人を抱えるASNは2006年に独立機関として設立されたが、その前身は石油ショックの1973年に創設された。74年に大統領に選出されたジスカールデスタン氏は「エネルギーの独立」を明確に宣言した。福島原発事故後に同氏は、「原発政策は、一時的な情熱や即興からの決断ではない」と指摘し、代替エネルギーの確保もない安易な「反原発」に警告を発した。

菅首相が、東海大地震の危険を背景に「浜岡原発の稼働停止」を中部電力に要請したとき、仏メディアはいっせいに「日本、原発政策を転換」と報じた。実際は「新たな防潮堤建設など津波対策が完成するまで」の「稼働中止」で、「原発停止」と誤解したための勇み足報道だが、首相の唐突な発表の仕方が、「重大発表」との印象を与えたことは否めない。

 世界が最も注視していたのは福島での事故後、「原発中止」に転換した国が多い中、日本が「原発」を維持するのか転換するのかだった。G8でも日本政府の報道官が会見で、「5つの提案」や「新幹線は通常通り運行している」などと説明をしている中、外国人記者から出た質問はこの点に絞られた。

 一方、サルコジ大統領は5月初旬、仏北部グラブリーヌにある欧州最大の原発施設を訪問し、「原発維持」を明確に示した。

 G8開催の前、カンヌ国際映画祭で最高賞の「パルムドール」を争うコンペティション部門に出品された「一命」(三池崇史監督、市川海老蔵主演)は賞こそ逃したが、「日本人の魂」を描いて好評だった。「武士に二言はない」という武士の「存在理由」のために、紙一枚も斬れない竹みつで切腹するという、残酷だが人間の「尊厳」を死守するという話だ。

 武士は、いざというときに切腹する覚悟があるからこそ支配階級だったわけだが、今、「国難」に当たっての首相にこうした覚悟があるのかどうか。G8での首相と官庁の「原発」に対する対応ぶりに接すると、原発事故への対応は「人災」だというほかはない。