【40×40】山田吉彦
中国の東シナ海施策を探るべく北京と福建省を訪問した。出発時、東日本大震災の影響で、成田空港のロビーで一夜を明かした。被災した方々にお見舞いを申し上げ、仕事にかまけて、すぐに支援に動かない自分自身を恥じる。
北京のホテルに着きテレビをつけると、中国のテレビ局CCTVでも日本の地震のニュースを延々と続けていた。特に経済分野に興味があるようで、連日、中国および欧米のエコノミストが登場し、地震による株価の動向やエネルギー情勢、GDPに対する影響などを予測し解説していた。
14日、福建省の州都である福州市において企業家たちと会った。彼らも日本の経済動向を注視していた。そして、「日本の経済は短期的には苦境に立つが、地震がデフレ脱却の引き金となる可能性がある」「日本政府は、渋っていた公共投資を地震の復興策として行わなければならなくなった。新たな経済循環が起こり、ビジネスチャンスが生まれる。日本への復興支援は、中国経済のためにもなる」としたたかな分析をしていた。
政府は13日夜、「経済情勢に関する検討会合」を開き、短期市場への資金供給や株式カラ売りの監視強化など当座の経済施策を発表した。しかし、国内向けの対応だけでは不足だ。速やかな震災復興のためには、被害対策、復旧対策とあわせて経済防衛政策を講ずる必要がある。為替相場の動向、株主の推移など経済的なシグナルに注視した経済防衛策が重要になる。日本の社会システムが停止しても、グローバル経済は動き続けている。経済攻勢という津波は、人道的な問題とは別の次元で日本を襲うだろう。
噂されている中国大船団の「六月尖閣襲」の可能性は低いが、震災を契機とした中国経済の大流入は不可避と考える。中国をはじめとした外資が日本経済の奥深くに浸透することは脅威だ。経済主権の維持も含め、総合的な危機管理が民主党政権にできるだろうか。月刊誌「正論」の今月の特集ではないが、いままさに「救国の内閣」が必要とされている。(東海大教授)