【東日本大震災】
釜石市内の小中学生の避難率100%近く、
ほぼ全員が無事。
東日本大震災の大津波で多数の死者・行方不明者が出ている岩手県釜石市で、市内の小中学校全14校の児童・生徒約3000人の避難率が100%に近く、ほぼ全員が無事であることが16日、群馬大学の片田敏孝教授(津波防災)の調査で分かった。平成18年の千島列島沖地震の際に避難率が10%未満だったため釜石市教委が避難訓練などを徹底して取り組んでおり、防災教育の重要性を裏付ける結果となった。
片田教授によると、市内の児童・生徒は地震発生時、下校の直前で教室にいた。児童・生徒らは警報と同時に、避難を開始し、各学校はあらかじめ決めていた徒歩5~10分の近くの高台にそれぞれ避難した。ところが高台から市内に押し寄せる津波の勢いをみて、さらに後背地の高台に移動した。この間、中学生が不安がる小学生を誘導し、迅速に避難したという。大槌(おおつち)湾からわずか約800メートルの市立鵜住居(うのすまい)小周辺は壊滅状態だったがほぼ児童全員が無事だったという。ただ市内の児童・生徒のうち、地震発生当日に病欠した数人については、現在も安否が不明だという。
市教委では、片田教授らと共同で、小中学生を対象に実践的な防災教育を実施。各地域の津波浸水状況、避難経路などを想定したハザードマップを用い、児童・生徒に登校、下校などの生活時間帯に合わせた避難計画を立てさせるなどしてきた。また、授業では「津波を知る」項目を設け、津波被害の歴史や、津波の構造など防災教育と危機管理意識を高めてきたという。
片田教授は「今回の100%に近い避難率のデーターは市教委が、早く高台へ避難するという危機意識の刷り込みを子供たちに徹底してきた成果だと思う。防災意識が生死の境を分けることを裏付ける貴重なデータでもあり、暗いニュースのなかで朗報だ」と話している。
釜石市の人口は約3万9千人で、犠牲者・行方不明者は1千人を超える可能性があるという。
避難所となっている釜石小の体育館で遊ぶ子どもたち=15日、岩手県釜石市