「護衛艦つけ続行せよ」宮嶋茂樹氏。  | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 








【金曜討論】調査捕鯨中止めぐり激論 

「テロ行為に屈した政府」「護衛艦つけ続行せよ」

宮嶋茂樹氏



  南極海での調査捕鯨について政府は、反捕鯨団体の妨害で乗組員の安全が脅かされている、として今期途中での中止を決めた。日本の伝統的な食文化である鯨肉食は無法な行為の前に、このまま消えてしまうのか。「国際社会で譲歩を繰り返せば、なめられるだけ。護衛艦をつけても続行すべきだ」と主張するカメラマンの宮嶋茂樹氏と、「調査捕鯨は行き詰まっていた。これを機に沿岸での商業捕鯨再開を」と話す東海大教授の山田吉彦氏に聞いた。    

  

                                       (喜多由浩)

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 ■沿岸での商業捕鯨再開を 山田吉彦氏

 

--調査捕鯨中止決定の背景は

 「シー・シェパード(SS)のゴジラ号が巧妙なやり方で豪州の船籍証を取得したことで、何となく国際社会の後押しを得たような印象があり、日本は外交的に譲歩せざるをえない状況にあった。また、日本の調査捕鯨のデータは欧米で理解されず、商業捕鯨の“隠れみの”とみられている。国内的にも、日本人の食文化の変化によって調査捕鯨で捕った鯨肉は安くしても売れず、在庫がだぶついていた。中止せざるを得ない状況に追い込まれた一方で、政府にとっては“渡りに船”といった面もあったのではないか」

 


                 ◇SS側も“痛し痒し”

 


--「テロ行為に屈した」という印象があったが

 「相手(SS)がどんどん過激になり、予算も増やしているのに、日本側は同じやり方で無策だったのは否めない。この1年間は海保の巡視船などを護衛につけてでも行うべきだった。本腰を入れて犯罪行為があれば捕まえるという明確な意志と体制がなかった以上、中止は必然的だった」

--日本の捕鯨船との戦いを取り上げたアメリカのテレビ番組はSSの資金源にもなっている。それを断つためとの見方には?

 「日本の中止決定を受けて、SSは勝利宣言をしたが、本当は『痛し痒(かゆ)し』といったところだろう。“戦いのシーン”がなければ番組が成り立たないからだ。この番組は、黄色人種の日本人が知的能力の高い鯨やイルカをいじめているというコンセプトになっている。(同じく捕鯨を行う)ノルウェー人では敵役になりえないし、捕るのがマグロでもダメ。ただ、日本政府がそこまで考えて、中止を決めたとは考えにくい」

 

--調査捕鯨は中止すべきか

 「日本人として必要な捕鯨を行う、という明確なメッセージを発すべきだ。それは調査捕鯨ではない。日本の伝統である沿岸での商業捕鯨の再開だ。日本は中世の時代から鯨漁を行い、鯨肉を食べる文化がある。そして、食文化の嗜(し)好(こう)が変化した現在では、調査捕鯨の5分の1の鯨を捕るだけで需要は賄える。もし、そこまでSSが妨害に来るのであれば、堂々と法に照らして処罰すればいい。今度はアウェー(南極海)ではなくホーム(日本沿岸)なのだから海保もはるかに対処しやすい」

 


                 ◇政府の決意次第

 


--商業捕鯨の再開は可能か

 「実際にノルウェーは、IWC(国際捕鯨委員会)に異議申し立てをして約600頭の鯨を捕っている。大事なのは、国際社会やIWCに迎合するのではなく、政府として明確な方針を決め、決意を示すことだ。今回の出来事は“劇薬”だったが、今後の捕鯨を真剣に考える契機になるだろう」


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■護衛艦つけても続行せよ 宮嶋茂樹氏 

 

◆なめられた日本

 

--政府が今期の南極海での調査捕鯨の中止を決めた

 「一番問題なのは、日本政府がまたしても『テロ行為』に屈してしまったことだ。シー・シェパード(SS)は反捕鯨団体を名乗っているが、そのやり口はテロリストそのものであり、現に捕鯨船への妨害行為によって傷害罪で有罪判決まで受けている。海上テロへの対処訓練を積んでいる海保のSST(特殊警備隊)や海自のSBU(特別警備隊)を使えば、ごく簡単に妨害行為を防げたはずだ。あえてそういう対応を取らなかったのは、(SSに近いとされる)豪州やニュージーランドの顔色をうかがっているからだろう。かつてダッカ日航機ハイジャック事件(1977年9月)で、テロリストの要求に屈し、世界中から嘲笑されたことを忘れたのか」

 

--「及び腰」の対応を続けていると国際社会からなめられる

 「尖閣諸島周辺の中国漁船衝突事件で腰の引けた対応をして以来、今の民主党政権は国際社会からなめられっぱなしだ。ロシアの大統領らが北方領土に次々に乗り込んできているのも、日本が何もできないどころか、脅せば譲歩を繰り返す国だと見透かされているからだ。国際社会は、いったん相手をなめたらとことんやってくる。『友愛外交』だ『話せば分かる』と言っても、だれも相手にしてくれなかったではないか。断固たる態度を示さねば、領土も海洋資源も取られ放題だ。そのことに今ごろ気づいても遅いが…」

--来期以降の見通しは見えないが

 「今期の中止だけでも、情けないのに、来期以降、調査捕鯨を中止するとなったら、取り返しがつかない。海自の護衛艦をつけてでもやるべきだ。SSがやっていることは、(ソマリア沖などの)海賊行為と変わらない。日本人の生命、安全と財産が侵害されているのだから、邦人保護のために、護衛艦を出しても何らおかしくはない。(もし、反対する国があれば)関係を絶つぐらいの断固たる覚悟でやるべきだ」

 


◆次はイルカ漁が標的

 

--そもそも鯨を食べるのは日本の伝統文化だ

 「日本人に『鯨を食べるな』というのは、インド人に『手で食べるな』というのと同じようなことだ。しかも、(捕鯨やイルカ漁に反対する国は)『かわいい』『頭が良い』などと感情論で主張しているにすぎない。実際、鯨は増えすぎて、食物連鎖に影響を与えていると聞く。日本の場合、有事などで外国から肉が入ってこなくなれば、海からほとんどのタンパク源を取るしかない。鯨で譲歩したら次はイルカ漁やマグロ漁が必ずや標的にされるだろう」

                   


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【プロフィル】山田吉彦氏

 やまだ・よしひこ 東海大学海洋学部教授(海洋政策)。昭和37年、千葉県生まれ。48歳。学習院大経済学部卒、埼玉大大学院経済科学研究科博士課程修了(経済学博士)。銀行、日本財団勤務を経て、平成21年から現職。著書に「日本は世界4位の海洋大国」「日本の国境」など。


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               東海大学の山田吉彦教授


                   



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【プロフィル】宮嶋茂樹

 みやじま・しげき 報道カメラマン。昭和36年、兵庫県生まれ。49歳。日大芸術学部卒。写真週刊誌カメラマンを経てフリーに。東京拘置所の麻原彰晃被告(当時)やロシアでの北朝鮮の金正日総書記などスクープを連発。著書に「不肖・宮嶋 戦場でメシ喰う!」「金正日を狙え!」など。



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             フリーの報道カメラマン、宮嶋茂樹氏