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オブローモフ〈中〉 (岩波文庫)/ゴンチャロフ
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オブローモフ〈下〉 (岩波文庫 赤 606-4)/ゴンチャロフ
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傑作! 間違いなく傑作。上中下巻の三冊本で約千ページの大長編だけど、全く飽きることがない。本書は、以前紹介した『平凡物語』と同じ作者イヴァン・ゴンチャロフの代表作で、『平凡物語』も十分面白かったけど、本書は頭一つ出ている感じです。
興奮気味に傑作だなんて書いていると、どんな波瀾万丈なストーリーなのかと思われるかもしれませんが、ストーリーはいたって地味。
主人公のイリヤー・イリッチ・オブローモフは、自分の領土から送られてくる収益に頼って働きもせず引きこもり人生を送っている。そこに唯一無二の親友で活動的なシュトルツが外国から戻ってくる。シュトルツは、自堕落なオブローモフを見て、何とかオブローモフを全うな生活に戻させようと苦心する。その際にシュトルツから紹介されたオリガにオブローモフは恋をするが、その恋も結局は成就せず、オブローモフはまた引きこもり生活に戻っていく。
その後、家主の兄らの陰謀によって収益を奪われ、金銭的な破滅寸前に追い込まれるが、シュトルツの働きにより、難を逃れる。しかし、オブローモフは自分にとって楽な家主である未亡人と共に、もはや回復の見込みのない自堕落な生活にはまっていくのであった。
上のストーリーには出てこなかった人物を含めて、登場人物一人一人に対して詳細に人生を描いたり、状況や場面を丁寧に描くスタイルは現代からみると、緩慢に見えるかもしれない。けれど、ゴンチャロフの軽妙な語り口のお陰で全く飽きないし、それどころかページをめくる手が止まらないのだ。
ただこのオブローモフ、恐ろしい話でもあります。オブローモフの無気力な生き方に目が離せないということは、自分もそんな人間、少なくとも無気力な人間になり得るということですから。物語の終盤には、オリガとシュトルツというオブローモフとは真逆な人間にもそんなオブローモフシチナ(オブローモフ主義)が襲いかかっています。オリガとシュトルツが逃れられるのかは不明ですが、暗示的な気がします。