平凡物語(上・下)(岩波文庫):ゴンチャロフ | 夜の旅と朝の夢

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平凡物語(上) (岩波文庫)/ゴンチャロフ

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上下巻まとめて紹介します。思えば複数巻にわたる本の紹介は初めてですね。大長編こそ小説の醍醐味だと思ってドストエフスキーやトルストイなどの長編小説をガツガツ読んでいた時期もありましたが、そういえば、最近はあまり長いものを読んでいない。歳のせいで長編が辛くなって無意識に除外していたのだろうか?

そんな話はさておき、先ずは作者のイワン・アレクサンドロヴィチ・ゴンチャロフ(1812-1891)から。作者のゴンチャロフは、ツルゲーネフ(1818-1883)、ドフトエフスキー(1821-1881)、トルストイ(1828-1910)などと同年代かやや先輩格にあたるロシアの小説家です。当時のロシア作家の例に洩れず、本書以外にも『オズローモフ』(岩波文庫で3冊組)や『断崖』(岩波文庫で6冊組)という大長編を書いております。

なんでこの当時のロシア人は大長編が好きなんだろうかと思ったら、本書解説によると、このような長編小説は本書『平凡物語』がロシアで最初だそうな。ロシアで大長編が多いのはもしかしてこいつのせいか(こいつ呼ばわりは失礼だ!)。ちなみに、オズローモフは特に評価が高く代表作とされているようですが、未読。

田舎貴族の純情青年アレクサンドルが一旗揚げようと首都ペテルブルグに上京し、ほとんど会ったこともない叔父の元に身を寄せ、仕事に就く。アレクサンドロスが恋愛や友情、仕事といったことに挫折するエピソード、それに、聡明ではあるが俗物の叔父と、感情過多の純情青年アレクサンドルとの会話がこの話の大部分を占め、地味。しかし、面白いのだ。

叔父とアレクサンドロスとの会話は、叔父の俗物的な思想と、夢見がちな青年の感情とのぶつかり合い。この対比が実にいい味を出している。アレクサンドルを応援したくなるのは、僕が未だに夢見がちだからだろうか? しかし、ほとんど叔父の言うとおりの展開に。そして、純情青年アレクサンドルも挫折を繰り返すうちに、最後は俗物になるのであった。そう、純情な青年が俗物になるこの物語は、平凡な物語。俗物になり下がらないためには、それ相当の気構えと努力が必要なのである。

平凡物語(下) (岩波文庫)/ゴンチャロフ

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