子ども手当をめぐり、兵庫県尼崎市に住む韓国人男性が、養子縁組したと称する554人分を申請しようとするなど制度の混乱ぶりが露呈している。こうした事態は当初から予測されていた。子ども手当の審議時間は衆院でわずか14時間。民主党のマニフェスト(政権公約)に記述された政策だが、そもそも少子化対策として人口増に有効なのか、それとも経済対策なのか。政策の基となる思想的な背景や必然性、有効性など根本から議論を尽くしたとは言い難い。

 夏の参院選に向けて実績作りを急ぎたい民主党の思惑から、政策立案は性急だった。審議会などに諮るこれまでのやり方も「政治主導」の名の下に否定され、従前からあった児童手当の制度を下敷きにする安易な手法が取られた。

 この結果、制度施行時に予測される混乱など具体的な想定が不十分で、成立直前に齟齬が次々に噴出。例えば、海外に子供が大勢いて、日本で働く外国人が支給対象となる一方で、日本に子供を残して海外に赴任する日本人家族は支給対象から外された。こうした理不尽にも「児童手当がそうなっていたから」(厚労省)と前政権への責任転嫁で済ませ、意に介さない回答が目立った。児童手当と子ども手当とでは予算の枠がそもそも違いすぎるなかで、財源の議論も不十分だった。

 通常、行政の窓口対応を均一にする準備のために不可欠な「周知期間」もゼロに近かった。ほとんどの世帯に波及するこれほどの施策を3月に可決して6月には「支給」する性急さに加えて、混乱に拍車をかけているのが厚生労働省が外国人の養育状況の確認を厳格にするために出した「局長通知」だ。

 これまで、海外の子供とメールでやりとりしていれば児童手当の支給対象になっていた自治体もあった。子ども手当の支給にあたっては「子供との面会を年に2回課す」などの新条件で全国の窓口対応を統一する-という通知だが、その場しのぎに批判回避のために出された印象は否めない。

 子供の養育を確認する書類の書式が国によってバラバラで、書類そのものがない国もある。提出された外国語の証明書類の真偽をどうやって確かめるのか、といった課題も残る。「政策の体をなしていないデタラメなばらまき策」(自治体関係者)といった声も聞かれる。(安藤慶太)

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