2004
賞をとって話題になった本や漫画には、人を惹きつける魅力がある。
2004年に開始した『本屋大賞』に注目!
大賞作品はもちろん、ノミネート作品もみんなが知っている作品も多い!
…では第1回目にプレイバック!
大賞
博士の愛した数式 (新潮文庫) (2005/11/26) 小川 洋子 商品詳細を見る |
記憶を失った天才数学者と幼い息子を抱えて働く「私」の幸福な一年を描く。
寺尾聡、深津絵里主演で2006年に映画化された。
『大賞』受賞作品を読んでみました。
記憶が80分しか持たない博士とそこに勤める家政婦とその息子。たった3人の関係や博士の家という閉じられた空間であるはずの設定も、お互いの思いやりを描くことによって、数字のような無限に広がる可能性を持つものに描かれている。
数字以外には興味の無いはずの博士は子どもには無償の愛を注ぐのは、子どもには数字と同じく無限の可能性が秘められているからに違いないからだと思った。
淡々とした展開、しかも数学を交えながらの小説なのに、味気なさはまったく感じない。
むしろ、数学が絡むことで、世の中の「数」に意味が与えられ、情感さえ感じられる著者の着目点と構成力に脱帽、そして不思議な魅力に惹きつけられて最後まで引き付けられるように読みました。
小泉監督の映画は素晴らしかったと思うけど、小説には独自の深い世界があります。(※映画には映画の良さがあったので、決して映画を貶めているわけではありません)小説は、特に博士のキャラクターの特徴が強いので、ぎこちない愛情の表現がより際立ち感動的になっています。また映画を先に観た方にも楽しめると思います。
小川洋子の作品は一見無機質に見えるけれども、読後にはいつもぬくもりが残ります。
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位
クライマーズ・ハイ (文春文庫) (2006/06) 横山 秀夫 商品詳細を見る |
1985年、御巣鷹山の日航機堕事故で運命を翻弄された新聞記者の濃密な一週を描く。
2005年にドラマ化。2008年には映画化もしている。
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位
アヒルと鴨のコインロッカー (創元推理文庫) (2006/12/21) 伊坂 幸太郎 商品詳細を見る |
大学生がアパートの隣人に「本屋を襲わないか」と誘われたことから始まるミステリアスな小説。
映画化され、学生を濱田岳、隣人を瑛太が演じた。
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位
永遠の出口 (集英社文庫(日本)) (2006/02/17) 森 絵都 商品詳細を見る |
ナイーブでしたたかで、どこにでもいる普通のの少女・紀子の10歳から18歳までの成長を描く。
児童文学の旗手・森絵都のベストセラー。
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位
重力ピエロ (2003/04) 伊坂 幸太郎 商品詳細を見る |
過去につらい出来事を抱える兄弟が、仙台で起きた連続放火事件の謎解きに乗り出す。
兄を加瀬亮を、弟を岡田将生が演じ、2009年に映画化。
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6位
4TEEN (2003/05/22) 石田 衣良 商品詳細を見る |
月島中学に通う中学二年生四人組が一年間で経験する様々な出来事。
「空色の自転車」「大華火の夜に」「月の草」「ぼくたちがセックスについて話すこと」「飛ぶ少年」など、瑞々しい八つの物語で描く今どきの十四歳、青春ストーリー。
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7位
デッドエンドの思い出 (文春文庫) (2006/07) よしもと ばなな 商品詳細を見る |
出会いのタイミングや状況の流れが人間の関係を規定していくさまを、5つの短編によってリアルに描いた短編集。
登場人物の多くはネガティブな状況に置かれるが、そうした状況をやみくもに否定せず、ニュートラルにとらえ、「世界」との和解の可能性として提出するよしもとのスタンスは、本作において首尾一貫している。
よしもと自ら「これまで書いた自分の作品の中で、いちばん好き」(あとがき)と語る。
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8位
終戦のローレライ 上 (2002/12/10) 福井 晴敏 商品詳細を見る |
数々の文学賞を受賞し話題となった、前作『亡国のイージス』から3年。
第2次大戦末期、主人公の海軍新兵・折笠征人は、未だ知らされぬ任務のため親友の清永と広島の呉軍港に降り立つ。そこでは、1隻の潜水艦が彼らを待っていた。その潜水艦こそは、戦争の形態を根本から変えてしまうという秘密兵器「ローレライ」を搭載していたドイツ軍のUボートだった。
2003年度吉川英治文学新人賞受賞。
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9位
陰摩羅鬼の瑕(1)【電子百鬼夜行】 (2012/10/18) 京極夏彦 商品詳細を見る |
他所では決して味わえぬ、京極小説の凄み。
白樺湖畔に建つ伯爵家の館で起きた連続花嫁殺人事件。
「鳥の城」と称される館を奇矯な名探偵と鬱気質の私小説作家が訪れるとき、事件は新たなる様相をみせる。
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10位
ららら科學の子 (2003/09/25) 矢作 俊彦 商品詳細を見る |
男は殺人未遂に問われ、中国に密航した。
文化大革命、下放を経て30年ぶりに帰国した男を匿う組織と蛇頭の抗争。幼くして別れた妹の行方は?
第17回(2004年) 三島由紀夫賞受賞。
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Playback 2004
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299人の書店員がエントリーし、191人が一次投票、93人が二次投票を行い、
「博士の愛した数式」小川洋子著(新潮社刊)が選ばれました。
全国各地の書店では、書店員が「本屋大賞」のフェアを開催するなど積極的に受賞作を推奨、販売しました。
全国の書店員さんの強い推薦販売の努力が実ったのか、第1回は3位までの作品はすべて映画化されました。
発表当日、大賞受賞作家の小川洋子氏をはじめ作家の方々や投票に参加した全国の書店員も会場に駆けつけ日本初の書店員が選んだ文学賞を祝うとともに、選者である書店員が小川氏を囲んでの記念撮影などが行われたのが印象的でした。
【小川洋子さんの受賞コメント】
こんな素晴らしい賞をありがとうございます。まず、この「全国書店員が選んだ いちばん!売りたい本本屋大賞」という賞(の企画から実施)に長い時間、力を尽くしてくれたみなさんに深く感謝致します。今までにないものをゼロから作り上げていくことは大変だったと思いますが、書店員という書物に対して最も尊敬を寄せてくれている方たちから、この記念すべき第1回目の本屋大賞を頂いて、本当に嬉しく思っています。
これまで多くの書物を書いてきましたが、自分の書物が世の読者の心に届いているのか、常に不安と孤独を感じていました。でも、今日会場にある手作りの POPを見て、「あなたの作品をしっかり世に届けていますよ」といういうみなさんの思いが感じられ、みなさんに背中を押され、励まされた気持ちです。明日からまた読者の心に届くよう書物を書いていきたいと思います。