11.

グループサウンズ・ブームは熱狂が醒めて終わったのではない。

葬られた。

権力、新聞、無知無関心な大衆によって。

あのころの新聞にはこんな記事が載った:
『エレキギターは思春期の若者の腰のあたりの神経に響いて有害な影響を与える』

エセ学者のこんなバカ話を大新聞がこぞって載せた。よくもあんな記事が書ける。恥知らずにもほどがある。

タイガースの公演で興奮した少女たちが将棋倒しになって負傷者が出る。オックスの赤松愛の失神パフォーマンスに感染した少女たちが気を失って救急車で次々と運ばれる。そんな事件が背景にあった。


失神バンド、オックスの神話的アイドル赤松愛




地方自治体はグループサウンズに公演の場所を提供するのを拒否するようになる。高校や中学ではグループサウンズのボイコットが広がる。公演会場の入り口に教師たちが見張りに立つ。熱狂的なブームはこうして終焉を迎える。

グループサウンズの名付け親、寺内タケシ兄貴は当時の状況に歯ぎしりする思いだったはずだ。

エレキギターに罪はない。寺内兄貴はエレキギターの素晴らしさを伝えるために全国行脚の旅にでる。

このシリーズの記事を書いている間にも何人かの読者の方が、“自分の高校にも寺内兄貴が来ましたよ”とコメントをくれてます。



寺内兄貴はエライ。逆境に立ち向かった。ワタシなら兄貴をエレキギターのモーゼと呼んでみたい。事実、紅海は割れた。エレキギターは進む。[続く]