世界が滅びそうになった日
その少女は現れた
異形ゆえ
誰からも恐れられ
誰にも愛されることもなく
望まずに神の子の力を宿した魂
彼女は彼女を育ててくれた
大地のために命を捧げた
彼女のたった一つの友達の
スミレの花を守りたかった
穏やかな春の野辺
ささやかな季節の営みの草花が揺れた
遁走曲の調べ
※
冥王は、ますます怒り
少女の身体をバラバラに引き裂き
血肉、骨のすべてを焼き尽くされた
刹那
冥王は少女が神と人の間に生まれた
魂と知り、最期の審判を先送りされた
やがて閉ざされた世界に
光りが戻った
世界は三度終焉を逃れた
そして喜びに溢れた世界の人々が
あの日の少女のことを
思い出すことはなかった
グールド氏のフーガの技法を聴くと涙腺が緩みます(笑)