【主にパワーバランスを重視する立場から】ミサイル防衛は相互確証破壊 (MAD)による安定を崩壊させる。先制核攻撃を容易にし、核戦争の危機と軍拡を引き起こしかねない計画は進めるべきではない。相手もまた同様の装備の導入を計画していると考えるべきだ。

【コストパフォーマンスを重視する立場から】ミサイル防衛計画は、その推進にも維持にも莫大な費用が必要である。しかし、それに見合った迎撃効果はこれまで一度足りとも得られておらず、ミサイル防衛における最大の問題でもある100%の撃墜率の達成は、極端に難しい。反面、ミサイル防衛をすり抜けるような核ミサイルを開発することもまた容易である(単に飽和攻撃を行えばよい)。そして、核ミサイルは軌道、たった1発、防御をすり抜けただけで、甚大な損害をもたらす。したがって、このような計画はコストパフォーマンスに見合わず、他の防衛手段を模索するべきである。現実問題として、核保ですら、ロシアがかろうじてかつてのABM基地を維持していることを除けば、ミサイル防衛システムは、運用していないのが現実である。
  • 【実用の面から】防衛省 は“実験は成功”と主張するが、予め着弾点が分かっているものを撃墜するのは容易。“いつ”“どこに”落ちるか想定出来ない(或いは数分以内に算出しなければならない)ミサイルを撃墜するのはほぼ不可能。銃弾を銃弾で叩き落そうとするようなもの。

  • 上記のような批判に対して、特に日本において以下のような反論がある。

    • 【パワーバランスを重視する立場に対して】中国は実際に軍拡を続けており、将来的にも継続されると推測され、このままでは日本との勢力均衡 が維持できないので、ミサイル防衛は是非とも必要である。一般論としては相互確証破壊 の安定とは、全面核戦争の危険を伴う「恐怖の平和」であり、「核に核で対抗する」という悪循環から脱却する代替の手段としてもミサイル防衛は有用である。
    • 【特に日本における反戦・反米の立場に対して】集団的自衛権について、安倍首相 は、「米国を狙った弾道ミサイルを迎撃することが法的に可能であっても技術的に不可能」との主旨を発言している。米国を狙った弾道ミサイルの迎撃能力がないなら、集団的自衛権が法的に行使可能だとしても、実際に実行するのは不可能なので、よって(ミサイル防衛について)集団的自衛権を引き合いに出しての議論自体が無意味ということになる。「日米一体化」と指弾するが、厳密な定義自体が存在せず、厳密な定義をされていない用語を用いて議論をすること自体が無意味である。

    補足:仮にアメリカ・ユーラシア両大陸間で核攻撃を行う場合、弾道は北極圏を通過するコースが最短な為、日本上空を通過するケースは考え難いという見方もある。

    • 【コストパフォーマンスを重視する立場に対して】コストパフォーマンスとは比較対象があってこそ成り立つものであるが、コストパフォーマンスのみを追求すれば先制攻撃予防攻撃 )あるいは報復核戦力の保持がもっとも効果的なものとなる。だが、現状の日本の法体制では、それは、実現する可能性は極めて低い(参照:専守防衛 )。また、先制攻撃が可能だとしても、実戦では、開けた場所にある固定の発射台で弾道ミサイルが運用されるとは考えにくく、巧妙に擬装された発射台(地下ミサイルサイロ、弾道弾車両など)から発射される可能性が高いため、弾道ミサイル発射準備を事前に発見できず、発射台を攻撃する前に弾道ミサイルが発射されるおそれもあるとされる。よって、実力行使としては、ミサイル防衛以外の手段は、考えにくいことになる。100%の迎撃が不可能だとしても、ミサイル防衛は度重なる実験によって迎撃率は向上してきており、信頼性は向上していくものと考えられるため、ミサイル防衛に見切りをつけるのは時期尚早である。そして、ミサイル防衛の予算は、既存の防衛費からの出費であり、追加の防衛費計上がなされていなく、むしろ防衛費の総額は減額されている。
    • 【軍産複合体を肥やすだけという立場に対して】他に有力なミサイル防衛の代行手段が考えにくい以上は、ミサイル防衛に関する機材を米国から購入する以外の選択肢は考えにくく、日本独自にミサイル防衛技術を一から構築する事は、コスト的にも技術的にも難しいとされる。

    意見を集約しまとめると、

    • MDという手段に対する否定、もしくは拒否する意見
    • MDという手段の実用性に対する否定、もしくは強い疑問を持つ意見
    • MD自体の能力については了解するものの、その導入経費が防衛費を圧迫する状況に対しての懸念
    • MDシステムの着実な発展を手がかりに、賛成する意見

    となる。

    ミサイル防衛に関する議論の内容はその性質上、技術的課題に未知数な部分が残り、防衛 政策(及び、安全保障 政策)上の問題のみならず、経済的問題、政治的な課題が複雑に絡み、客観的かつ的確な議論を行うことが難しいとされる。

    是非に関する議論 ミサイル防衛 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9F%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%83%AB%E9%98%B2%E8%A1%9B#.E6.97.A5.E6.9C.AC.E7.89.88BMD