波紋呼ぶ再雇用義務づけ 労使の主張は平行線
テーマ:潮流65歳まで希望者全員の再雇用を企業に義務づける政府方針が波紋を広げている。厚生労働省は2012年1月に招集される通常国会で高齢者雇用安定法(高齢法)を改正し、13年度から実施する考え。労働側は安定収入が確保できると歓迎しているが、人件費の負担増を迫られる経営側は猛反発している。
厚生年金の支給開始年齢は段階的に引き上げられていて、13年4月には61歳からになる。多くの企業は60歳が定年だから、このままでは収入も年金もない人が出る。現行の高齢法は9条1項で企業に65歳までの雇用確保を義務づけているが、2項で労使の話し合いで再雇用の基準を決め対象者を限定できるとされている。この2項の規定を撤廃して希望した人全員を雇えというのが改正のポイントだ。
与党・民主党の支持母体である連合は「希望する人すべてが65歳まで働ける環境整備をすることが必要」(古賀伸明会長)と政府方針を手放しで歓迎。
だが人件費がかかる企業は大反対だ。関経連の試算によれば、労働者ひとりを再雇用すると賃金と社会保険料で年に約420万円。13年度から義務づけが始まると、翌年定年を迎える59歳の再雇用希望者にかかる費用は約7600億円必要。対象年齢は毎年広がるので59~64歳が対象になる2017年には累計3兆6000億円に膨らむ。
ただでさえ、円高、電力不足、高い法人税など6重苦とも言われる条件下で日本企業の国際競争力は低下。膨大な人件費が必要になれば設備投資や技術開発に回す金を削らざるを得なくなる。人件費や人員のバランスをとるため新卒や中途の採用を控え、それでも足りなければ現役世代の賃金を削るしかない。
加齢にともなう労働者の状況には個人差があって、工場などでは反応が遅れるだけで甚大な事故を招く可能性もある。最悪の場合は企業が安全管理義務違反を問われることにもなりかねない。連合は「視力や体力が低下した高齢者を雇う場合は国や自治体が企業に補助金を出したらどうか」と提案しているが、財政悪化が深刻な国にそんな余力があるのかどうか。経団連は「一律に義務化するのではなく、会社側と話をしながら働く場をつくるのが大事」(会長・米倉弘昌氏)と反発している。
年をとっても働きたい人が働ける社会を目指しながら、それを法制化するのではなく、本人の自由意志で働ける社会が理想。今後の本質的な議論が期待される。






