混乱・混沌の状況の中で見えてくるものは何か──。
2020年(令和2年)は『』年。干支は『』で、この年は種子の中に命が宿るといわれる。
世界で政治、経済そして社会の既存秩序や仕組みが壊れつつあり、流動化現象が続く。しかし、新しいタネが宿り、新しい芽が生えてくる時だという認識で新年に臨みたいものだ。
米中の覇権争いは随所にその影響が現われ、欧州もドイツ経済の退潮、(英国のEU離脱)で揺れ動く。
米国の大統領選挙もトランプ氏の動向で世界の状況もかなり左右されるので、目が離せない。
中国も、『一帯一路』を米中対立の中でどう進めるのか。デジタル通貨発行でドル中心の国際金融秩序がどう変貌していくのか。
また、デジタル革命の中で、リアル(Real)とヴァーチャル(Virtual)の世界はどう融合していくのか。こうした流動化状況の中で道筋を付けていかねばならない。そうした大事な時に、どう自らは関わっていくのか、という命題である。
中西宏明さんの訴え
『ソサエティ5.0』を掲げ、歴史的にも、文化的にも、そして産業としても大きな時代変化の中を主体的に生き抜こうと提唱している経団連会長の中西宏明さん(日立製作所会長)。
デジタル革命はさらに進捗。そして、ESG(環境、社会、統治)や国連が掲げる持続的発展のための17項目の運動(SDGs)が世界中の人々の意識に浸透した今、「日本が受け身でいることは許されない」と中西さんは強調する。
米中対立にしても、日本は日米安保体制の当事国であり、米国とは突っ込んで話ができる間柄。中国とは〝引っ越しのできない隣国同士〟であり、歴史的にも文化的にも長い間交流してきた関係。
こうした歴史的、地理的関係の中にあって、日本は米中両国の対話を促進させる立場にもあり、橋渡しもできる。
世界のエネルギーに影響を与える中東を見ても、重要な国の1つ、イランとも日本は長い間友好関係を築いてきた。
米国とイランとの対立をどう解きほぐしていくか。事はそう簡単ではないが、日本がこれから果たす役割は大きい。
「世界のリーダーや人たちと話していて、日本はどう考え、どう動くんだと聞かれることが大変多くなりました」と中西さん。
ここは日本の知恵や技術を含めて、持てる資産を大いに発揮し、「主体的に動いていく時」という中西さんの考えであり、気の引き締め方である。