味の素のCM、「日本のお母さん」
、ご覧になりました?
アメリカ人と国際結婚された方に教えてもらって見てみたら唖然。
この中にはどうしても母親がやらなくてはならない家事・育児って
一つも含まれていませんよね。
「味の素を使えば、料理が苦手なパパたちも簡単に子どもが喜ぶ料理が作れる」
みたいなCMにすれば良かったのに。
私も渡英前だったら何も違和感を感じなかったでしょうけど。
そしてこんなに頻繁にジェンダーに関する投稿をしてしまっているので、
本ブログをご覧いただいている方からは「あのババア、またか」と思われていそうですけど。
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こんな家庭生活はおかしいと気づいた人から声を大にしないと、働くお母さんたちの
二重の負担(double burden of paid and unpaid work)はなかなか改善されず、
女性の社会進出(female labour force participation)の足かせとなるとともに、
お父さんたちは従来どおり死ぬほど長時間働かせられ続けられることになります。
テレビ・CMといったマスコミの影響力は恐ろしいものです。
これが良妻賢母像として視聴者に刷り込まれますよね。
例えば婚活中の男性の多くは「将来の妻には結婚後も働き続けて欲しい」と
願っているようですが
実際のところは将来の妻はこのCMの女性のように、文句も言わず家事・育児も
こなしてくれるだろうと当然視しているのでしょう。
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安倍政権はまたウィメノミクスとか言ってて、育休3年と言っていた人が何を仰る、
と噴き出してしまいそうですが
(欧州では、長過ぎる育休は女性を労働市場から離させ(detach)、
キャリア形成を難しくするので望ましくないという説が一般的になってきており、
1年程度が相場だと言われています。
女性を労働市場からなるべく離れさせないようにすること
(attachment to the labour market)が重要です。)
毎日の社説
が言いたいことを代弁してくれていました。
「安倍政権の女性政策で欠けているのは、男性の家事・育児を当たり前の現象にしようという視点だ。女性が育児も仕事もできるようにしてあげる、ではなく、男女とも仕事と子育てをする社会、という発想でなければ、女性の活躍は持続できない。」
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以下、欧州のフェミニストたちの考え方をご紹介しますね。
家族形態は以前はmale-breadwinner model(男性がパンを得る家庭、すなわち、
男性が外で稼ぎ女性は専業主婦)が普及していましたが、
今、欧州ではone and a half earner modelが一般的だと言われています。
(男性が1人分稼ぎ、女性は育児をしながら半人分稼ぐ)。
しかし理想の家族形態はuniversal caregiver model(男女とも育児・介護を行う)、又は
dual-earner/dual-carer model(2人の稼ぎ手、2人の育児・介護の担い手)であり、
北欧諸国も未だこの段階には完全には到達していないと言われています。
日本がuniversal caregiver modelへ転換するための鍵は男性の育休取得でしょう。
取得率が未だに2%だなんて、制度が存在しないと同義です。
男性の育休取得が進むと、男性をpublic sphere (paid work in the labour market)から
private sphere (unpaid work at home)へ引き込む効果が期待されます。
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出典は何だったか忘れたのですが、
・ ある国(北欧だったか)の女性政治リーダー(大統領/首相)が幼稚園だか小学校だかを
視察した。
彼女がそこの男の子に将来の夢を聞いたところ、「大統領/首相になりたいけど、
ぼくは男の子だから、なれないんだ」と言ったのだそうです。
社会・周囲からの影響力のすごさが分かりますね。逆に言えば、人々(特に子ども)の
思考形式はいかようにも左右できてしまうということです。
・ 教育の重要さを説くものとして、ある欧州の国の教科書からは、男女別の役割分担
(gendered division of labour)に基づく挿絵は削除されたり、意図的に男女逆に
描かれたりした/しているそうです。
(例えば、台所にお父さんが立っている絵を載せたりとか…)
欧州のみならず、こちらで出会った途上国出身の留学生仲間と話していると、
結構彼らの国から女性の政治的リーダー(大統領、首相など)が輩出されている/されていた
ことを知り、ああ、日本って本当に遅れているのだなと打ちのめされたことが度々ありました。
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日本人女性のみなさん、「やまとなでしこ」を自認し耐え忍ぶのは美徳でも何でもありません。
我々女性自身が声を上げないと、仕事も家事・育児も全部こなすスーパーウーマンを期待されて
自らの首を閉めることになり、旦那さんたちも早く帰宅できるようになりません。
とりわけ、このCMの女性はお手本でも何でもありません。
この人のようになれるように明日から頑張ろう、だなんて思わないでください。
それより、どうやったらこの家庭は家事・育児をうまく分担できるかしらと
反面教師にしていただきたいです。
もう少し、私たち自身がジェンダー問題に敏感になりましょう。