前回書いた「ザ・ビッグイシュー」の社会起業家特集で慶応大学総合政策専任講師井上英之さんが、「ゲーム感覚、オシャレ、カッコよさ。。。ミッションの素晴らしさだけではないアメリカの社会的企業」でサンフランシスコにあるKivaについて語ってます。サイトはここ


井上さんが今最も注目してる社会起業だそうですが、なるほど斬新なビジネスモデルでアメリカの社会起業はここまで進化したのかと驚きました。


Kivaはインターネットを使ったマイクロクレジットで、こんな仕組みになってます。
1,ビジネスを選ぶ
アメリカの貸し手はKivaのサイトで途上国の事業プラン(世界中のフィールドパートナー、途上国でマイクロファイナンスをやっている機関のことですが、ここが厳選してサイトにアップロードした事業プラン)を選び、クレジットカードで貸し金を振り込む
2,貸付
Kivaは世界中のフィールドパートナーへファンディングし、ここからそれぞれの借り手に貸し出す、期間半年から1年の短期貸付
3,事業記録と返済金を受ける
パートナーは返済金を集め、ビジネス記録をつけてKivaへ返す
4、回収と再貸付
ファンドは貸し手に返して、貸し手が回収するか再ローンされる


地球規模でカネと情報が動きますが、インターネットでなくてはできないことです。


サイトには日々、どのくらいの資金が貸し付けられているのか出てますが、今日現在1100万ドル、11万人の貸し手と書かれてます。一人平均100ドル(25ドル以上が原則になってるようですが)ですが、このくらいなら金持ちでなくても誰でも寄付感覚で出せます。


カネの出してを検索して見ますと、若い人もけっこういるのは少額でもいいから気楽に出せるからでしょう。


借り手は商店、農業、食品製造、繊維、雑貨、手工芸品。。。などの開業資金にしますが、必要なカネは数百ドルから千ドルぐらい、数人の貸し手が集まるまで貸し手を探します。


Kivaの事業が成功するには
1,貸し手と借り手をインターネット上で結びつけるインターネットソフト開発
2,貸し手を増やすマーケティング
3、世界中にちらばってる確かな借り手探し
が必要です。


1,と2,はシリコンバレーにある一流IT企業が協力し、3、は途上国のマイクロクレジット機関をパートナーにしてやってます。


一流IT企業とマイクロクレジット機関がKivaを介して結びつき、コミュニティを形成したのがKivaがやった創造です。ITビジネスとマイクロクレジットがミスマッチしてるのが斬新で人びとを引き付けます。


また協力企業との関係がすばらしくよく出来てますが、こんなぐあいです。
・Paypal
ebayのインターネット決済部門、オフィシャルパートナー、IT技術(借り手への送金システムと資金決済のセキュリティシステムを無料提供)と人材を提供(転職とボランティア活動)

・YouTube
タダのバナー広告、貸しての増加に貢献

・Google
寄付、グーグルアドワード広告の無料提供、貸し手を増やすのに役立つ

・Yahoo
ヤフー・サーチ・マーケティング・キーワードの無料提供、貸し手をふやすのに貢献、人材提供

・Microsoft
マイクロソフトの研究機関が途上国のフィールドパートナーのコンピュタシステムを開発

・Myspace
06年マイスペースのインパクト賞にノミネートされ、貸し手を増やす活動を一緒にやっている

・Starbucks
サンフランシスコ地区のスターバックスの店のコミュニティパートナーとなり(顧客を固定化するためにそんな制度があるらしい)、店で顧客とイベントをやり貸し手を増やすのに貢献


協力企業は今勢いのあるブランド企業ばかりで、そんなところが協力してるのかと驚きますが、IT技術を提供してもらい、また貸し手を増やすマーケティング、ネットマーケティングですが、で企業が協力している、この関係は企業から見ると無理なく軽くできる関係で、この軽さがクールです。


IT企業で働く人の感性とこうした事業との相性がいいので、こんな協力関係が築けるのだ、社会起業はITビジネスと親族だという感じが強くしました。IT産業がまずあり、その先に勢いのよい社会起業があるという前後の関係になってます。



こんなビジネスモデルを思いついたのが創業者でCEOのMatt Flannery(写真で黄色のTシャツを着てる人)です。


彼はスタンフォード大学でシンボリック・システムで学位、アナリカル・フィロソフィーで修士(こんな学科があるとは知りませんでした)をとり、Tivoでコンピュータプログラマーとして働いていたとき、アフリカのマイクロクレジット機関を訪問したことがありましたが、このときKivaのアイディアを思いつきました。


その後働きながらサイドプロジェクトとして04年末にモデル開発を始め、05年12月に退職してKivaをスタートしました。


06年のスコール財団(eBay創業者のスコールが作った財団)のソーシャル・エッジ・ウェブサイトでグローバル・ソーシャル・ベネフィット・インキュベーターをつくった起業家として掲載されましたが、スコールと出会ったのも幸運でした。


KivaのサイトにはeBayの臭いが強くしますが、そこから寄付、技術や人材の提供をたくさん受けてるからでしょう。


Kivaの事業を拡大してるのがプレジデントのPremal Shah(ユヌスと並んでいる人、インドとかバングラディシュ系の人のようです)ですが、Paypal(eBayの決済部門)のプロダクトマネジャーをやり、Kivaに転職しました。


彼はスタンフォード大学経済学部卒後コンサル会社で働き、マイクロファイナンスの研究でスタンフォード大学から賞を受賞したことがあるぐらいの専門家ですが、彼はフィールド・パートナーの仕組みを拡大して、資金の受け手の規模を拡大しました。


Matt Flanneryがコンピュタシステムをつくり資金の出し手を増やす方策をつくり、Premal Shahが世界各地のマイクロクレジット機関と提携して借り手をつくった分業になってますが、強力な組み合わせです。


ホームページには経営陣とマネジャーのページがありますが、それを見ると
・若い→ITビジネス
・起業家歴がある→社会起業
・経済学、国際経済学を学んだあと途上国でNGO経験がある→現地を熟知してる
・マイクロファイナンスの専門家集団→現地パートナーのネットワーク作り
・ITの専門家は少ない→協力企業に一流のIT企業があるのでいらない
・女性が半分近くいる→女性の感性にぴったりの事業
・地球規模へ拡大する大望を持つ
の特色がありました。


若いがプロの集団で、グーグルが出てきたときもこんな感じの人材によって事業が開発されたんだろうなと思いました。グーグルのつぎはKivaのような事業が躍進する時代になってるんではという感じがします。


「少額だが利息のない貸付」、「返済のある寄付」、これは非常識なことですが、昔はこんなことは普通にありました。だから人びとの関心が向くのは自然なことだと納得しました